ここ数年のトレンドのネタ元が「過去」にあることが判明して以来、新しいものと古着をいっしょに扱うセレクト系古着屋や、リメイクいっぱいのトレンド系古着屋、ブランド系古着屋などが急増。どちらかというと「古着らしくない着こなし」が主流になりつつあるなか、あえて「古着らしさ」にこだわり、独自のスタンスをキープしながらビジネスを展開する古着屋も少なくない。「英国」と「古着」にこだわり約10年、代官山に個性溢れる3店舗を展開する(有)スミス ブロスもそのひとつである。
同社の1号店である「スミス クロージング」(現ビューティリティー)がオープンしたのは94年のこと。その後、96年に八幡通り沿いに女の子向けヨーロッパ古着を扱う「スミスアーティーク」をオープンし、さらに、それまで一部の顧客を対象としたアポイント制で営業していたクラシック系メンズ古着店「ディビィッズ クロージング」を正式にショップとして開放したのは02年のことである。
振り返ると、90年代後半には女の子のヨーロッパ古着のブームを、00年以降は男性の英国調のテーラード人気など、一見わかりにくい古着のマーケットを結果的に牽引することになっていたのも興味深い。そんな同社が03年5月、4店舗めとなる「グラニー スミス」をオープン。取扱うのはちょっとヒネリをきかせたモダンファーニチャーである。
「もともとここは倉庫として使っていた場所だったんです」と言うのはプレスの小山香織さん。
場所は、「渋谷2丁目」の交差点を並木橋に向かう途中の雑居ビルの1F。道路からちょっと奥まっているので、知らないと通り過ぎてしまいそうなショップっぽくないエントランスだ。
「今でこそ50年代〜60年代のモダンファーニチャーはブームになっていますが、うちが取扱い始めた94〜5年頃は、まだぜんぜん知られていませんでしたね」(小山さん)。
当時はドレッサーやテーブル、本棚、ランプなど、イギリス好きの女の子が好みそうなちょっとガーリーでポップなテイストのものが中心。店頭には常に入荷した写真のスナップが貼られており、必要に応じて、お客さんを倉庫だったこの場所にお連れしていたのだそうだ。それが、徐々にカップルのお客さんが増え、アイテムも、ソファや机、本棚、シャンデリアなど、どんどん広がっていったのだという。そこで今度はテイストを「ユニセックス」なものに絞り、「スミスアーティーク」との差別化を鑑み、「グラニー スミス」という新業態を立ち上げたのだそうだ。
店内は、無造作に配置された家具に加え、点々と置かれたライトが放つ柔らかい光に包まれており、ちょっと妖しい雰囲気。よく見ると、壁に掲げられたレトロ柄のテキスタイルやビロード地の妙な柄の絨毯など、実にモンドで、英国というよりも、モッズでスペーシーな60年代という全世界的に幸せだった時代を感じさせる楽しいデザインのもので溢れていた。
とはいえ、今現在の売れ筋はコーヒーテーブルやバタフライテーブル、次いで2人掛けのソファなど意外とふつうのものが多い。相変わらずオーバル型のガラステーブルに代表される北欧風の家具も人気だそうだ。
「実はオーナー的にはシンプル&モダンはもういいと言ってるんです。でもお客様からの要望がまだ多いんですよね(苦笑)」と小山さん。
いつも結果的に時代を先取りしてきたオーナーが今注目しているのは、ちょっといやらしく、ヤボったい感じなのだとか。色でいうと赤。素材ではベルベットやビロードなどで、幾何学模様や裾にフリンジがついていたりといった、一見悪趣味でクセのある家具や雑貨なども取り揃えていくという。もちろん、シャンデリアも入荷する予定だそうだ。
ポスト・シンプル&モダンはデコラティブか。少なくともファッションのトレンドとしては、そういう流れが来ていることは確かである。
グラニースミス
レポート
2003.10.18
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