ここ数年、渋谷の若者たちの「足」といえば大型・小型のスクーターや自転車などが注目されてきたが、今年に入り、一方の公共交通機関のサービスも変化しているようだ。
なかでも地味ながら利用者からの評判がいいのがバス。先日ここでも紹介したコミュニティバス「ハチ公バス」(03年3月運行開始)をはじめ、6月には京王バス東(株)が井の頭線沿線を走る吉祥寺行きの深夜急行バス、10月には小田急バス(株)が希望ヶ丘団地(世田谷区)行きなど、3本が新設。現在、渋谷駅発着だけで計5社、48本の路線バスが乗り入れている。
そんななか、さらに10月10日、今年4月にオープンした六本木ヒルズへの直行便が新設。れっきとした都営バスだというのに、村上隆作の同施設のキャラクター「ロクロク星人」が車外だけでなく車内にもラッピングされており、「ロクロク号」という名前まで付いているというからちょっと驚く。
「実は、うちがバスを購入し、東京都に無償貸与した上で、運行代行とメンテナンスを委託するという新しい試みなのです」と言うのは、森ビル(株)六本木ヒルズ運営本部タウンマネジメント室の石川俊夫課長。
「バス路線の計画は今から約3〜4年前からあったのですが、直行シャトル便が具体的になったのはオープンしてからです。当初六本木ヒルズへの交通機関としては、渋谷駅〜新橋駅の「都01系統」と、同折返路線の計2本の都営バスが運行していましたが、この「都01系統」は1日1万5000人もが利用する都営バスでもいちばんの人気の路線。それが六本木ヒルズがオープンしたことにより、1日平均3000人〜4000人が増加しており、それが週末に集中していることがわかったのです」(石川さん)。
もちろん、民間のバス会社やタクシー・リムジン会社などに依頼するシャトルバスの運行も検討したが、新規事業ということもあり、時間もお金も予想以上にかかるうえ、渋谷駅側のバス停の場所を確保するのが難しいことから断念。改めて東京都交通局に相談することになったのだという。
せっかく直行バスを走らせるのであれば、やはりボディには六本木ヒルズのラッピングを施した宣伝も兼ねたいと思うもの。しかし、「都01系統」へのラッピングはなんと20社以上もの「待ち」であることがわかり、こちらも断念したのだそうだ。
「改めて検討してみると、ラッピングバスの5年分の広告費用がバス1台分に相当(約2000万円)することから発想転換。観光客向けということで直行便を新設するに至りました」(石川課長)。
よく見ると、車内にはDVDを設置したり座席が若干ゆったりめに配置されていたり、また乗り降りしやすいように互い違いになっているなど、微妙な工夫が施されている。
東京都の試算によると、1日平均約1500〜1600人が利用することで採算ラインだという。この直行シャトル便に関して言えば、現在は観光客向けのスケジュールで運行しているが、将来的には六本木ヒルズのオフィス入居者の通勤の足としても利用できるよう調整することで、充分ボーダーラインはクリアする見込みだ。
また、03年10月1日発行の港区広報誌「広報みなと」によると、六本木ヒルズは近い将来、港区でも運行開始するコミュニティバスの発着点にもなるそうだ。
渋谷駅—六本木ヒルズ直行バス「ロクロク号」
2003.11.10
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六本木ヒルズ 総合インフォメーション
tel:03-6406-6000 - 東京都交通局 渋谷自動車営業所
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