「入社して1年目が過ぎたあたりでしょうか。うちの社長の『服つくってみないか?』という一言からスタートしました」と言うのは、ウィメンズクローズ・ブランド「YLANG YLANG(イラン イラン)」のデザイナー、青柳龍之亮さん(27)。
同ブランドがコレクションをスタートしたのは99年春夏のこと。運営元のエルゴット(株)は、もともとバッグや帽子、ベルトなどの企画・製造を柱に、有名セレクトショップなどへの小物のOEM供給をしてきた会社だが、あるとき展示会で、小物をよりよく見せようと作成したディスプレー用の洋服が、シェルの社長兼バイヤーの山崎さんをはじめ、女性のバイヤーやプレスを中心に大好評。シェルをメインの卸し先として、ウィメンズクローズ・ブランドをスタートすることになったのだという。
ブランド名の「イラン イラン」とは、インドネシアなどの東南アジア諸国に生息する黄色い花から抽出される香料の名称。「欲情させる」ような妖しい甘い香りが特徴で、「着ることで女性の持つ神秘性が生かされるような服がつくりたい」と名付けたのだそうだ。
ちょっぴりセクシーなカジュアル服。99年のストリートがそんな「ギャル・ミックス系」の女の子ファッションが全盛だったということもあり、たちまち『ViVi』や『JJ』などを読む女の子の憧れブランドのひとつとして成長していった。
「その後、自分が歳をとってきたこともあってか、つくる服も大人っぽく変わりました。素材もシルクやカシミアなどの上質な素材を用いるようになり、上品でキュートな女の子服づくりを目指しています。昨シーズンからはチェンジズを含むユナイテッドアローズの計6店舗で取扱って頂くようになりました」(青柳さん)。
そんななか、同社の神宮前・明治通りの裏手にあるオフィスの一部をショップにする話が浮上した。年に5〜6回、展示会の会場としてしか使用していなかったプレスルームに隣接するその空間。それではもったいない、ときっかけは実に素朴なものだったそうだ。
同社としては初の直営店。迷った末に、店名は社名と同じ「porte de elgot(ポルト ド エルゴット)」とし、イランイラン・ブランドの洋服をメインに、小物の全ブランドも取扱う、同社のショールーム的な要素も兼ね備えることにした。
「動きのある演出がしたかった」という店内は、リリアンをバーティカルカーテンとして用いたことで、動きのある柔らかい光が注がれる空間を確保。コーナーごとにアンティークのシャンデリアを配し、ソファや什器もあえてゆったりと置くことで、独特のサロン空間となっている。
「他にありそうでないブランド、というのがコンセプトです」と言う青柳さん。誰もが知っているブランドではなく、友だちに「それどこの?」と聞かれるようなさり気ない存在になりたいという。
不況にも関わらず海外の高級ブランドが続々と旗艦店をオープンする昨今、人々の欲望を喚起させようと、メディアもショップも戦略的にトレンドを発信しているようにも見えなくもない。情報偏差値の高い東京の若者たちのあいだでは、そんな「誰もが知っているモノやコト」が必ずしもブランドの優位性を示すものではないということに気づきはじめているのだろう。
実際に街で観測をしてみても、一見どこのブランドのものを着ているのかわからない人の方が個性的でお洒落に見える。そんな彼女たちにインタビューをしてみると、「○○で扱っている××というブランドです」という細かな答えが返ってきた。それぞれがそれぞれの「お気に入り」を持つ時代になったといえそうだ。
※移転
Ylang Ylang(イランイラン):
青山本店
〒107-0062
東京都港区南青山6-5-40
phone: 03-3400-9588
渋谷店
〒150-8377
東京都渋谷区宇田川町15-1
渋谷パルコ パート1 2F
phone:03-5456-0688
porte de elgot(ポルト ド エルゴット)→「現Ylang Ylang(イランイラン)」
レポート
2003.11.26
ファッション|FASHION
「他にありそうでない、ちょっぴりセクシーでキュートな女の子服がコンセプト」。
人気ブランド「Ylang Ylang(イランイラン)」の前身はこのショップから。
関連リンク
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Ylang Ylang(イランイラン)
ポルト ド エルゴット
渋谷区神宮前6-24-2 2F
phone: 03-3400-9588
mailto:seize@elgot.co.jp
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