「光がこれだけ溢れてしまっていると、照明があることが当たり前になっていると思うんです。1回消してみることで、改めて明かりというものを認識し、ろうそくに火を灯すことで光の原点に触れよう、というのが狙いです」(「照明探偵団」事務局長田沼彩子さん)。
2004年6月20日(日)20:00-22:00の2時間。NGOや環境省が呼びかける全国一斉の自主消灯ムーブメント「100万人のキャンドルナイト」が今年も各地で開催された。合言葉は「でんきを消して、スローな夜を」。
はじめての開催となった2003年の夏至には、全国で推定500万人が参加。東京タワーや姫路城など全国2300箇所の施設も消灯。NECは約1万人の社員と家族全員で、岩手県は全県あげて参加表明するなど、企業や自治体も多く参加し新聞などメディアでも多数紹介されたことで有名だ。
「エネルギー問題」も同イベントの重要なテーマだが、個人や仲間がそれぞれの立場で自由に参加できる「広場」のようなムーブメントであるのも特徴。「それぞれの思い」を核に、今年は44都道府県の238個所の他、バリ島やブラジル、エクアドルなどでも行われたそうだ。
そのひとつ、渋谷・キャットストリートでも昨年の冬至に続き2回めの開催となった。事務局は照明デザイナーで現在武蔵野美術大学教授として世界的に有名な面出薫氏率いる(株)ライティング プランナーズ アソシエーツ内。同イベントの呼びかけ人のひとりでもある面出氏が団長をつとめる街の光の観察・調査するフィールドワークを主体にした照明文化研究のNPO「照明探偵団」がこのエリアでの主催なのである。
表参道から渋谷に向かう旧渋谷川約700mほどの遊歩道が一斉に消灯。キャンドルの灯だけの厳かで静かな空間に!と目論んでいたのだが、実際には点在するたくさんの光すべては消去することはできなかった。自販機や看板広告の照明、そして無防備に真っ白な光を放つ街灯など。これらが邪魔をしてパフォーマンスが断続的になっていたのがちょっと残念だった。
それでも、武蔵野美術大学、多摩美術大学、SFC(慶應義塾大学藤沢キャンパス)などの各学生チームをはじめ、東芝のデザインチーム、プロダクトデザイナーの深澤直人氏チームなどによる蝋燭を使ったパフォーマンスをひと目見ようと、たくさんの来街者で賑わっていた。しかも、日中溢れていた買い物客よりもオシャレな若者が多かった(!)。
「団長の面出はよく、わたしたちは今、光の過食症にかかっている、と言います。それは明るく均一に照らし出すことが20世紀の幸福の象徴だったからだ、とも。21世紀になった今こそ、効率のみを優先する照明のあり方を見直すべきで、このイベントを通してそんなメッセージが伝われば」と田沼さんは話す。
スローフード、スローライフ、スローラブ(?)など、「スロー」が21世紀のライフスタイルのテーマといわれて久しいなか、最近ではその延長として「LOHAS(Life of healthy and sustainability)というキーワードまでもがマーケティング用語としてまま用いられるようになっている。
モノや情報、エネルギーを大量に消費する現代生活。それを一時的にOFFすることで見えてくる「もう一つの時間」「もっと多様な豊かさの尺度」を見つけようとする心のゆとりこそが、ほんとうの意味での「Next generation」なのでは。そんな「発見」のできた1日となった。
撮影:広安省吾
100万人のキャンドルナイト@キャットストリート
2004.06.25
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