「流行は気にせず、パンツやシャツ、ニットなど、いわゆる定番的なアイテムにこだわって展開しています。定番的なものでもちょっとずつ進化してますから、たとえば、一見同じように見えるコットンパンツでも、去年はウエストがルーズだったのが、今年は後ろの部分に少しダーツを設けることで、ゆとりはあるんだけどだらしなくない、ちょっぴり上品なシルエットに変えるなど工夫を凝らしています」と言うのは、去る6月9日に、渋谷のはずれにオープンしたセレクトショップ「metro(メトロ)」のオーナーでairlogetteのデザイナー渡邊達也さん。
同店の本店はなんと山梨県富士吉田市にある。オープンしたのは今から10年前の94年。オリジナルのブランド「airlogette(エールロジェット)」を立ち上げた98年には、メンズのセレクトショップ「valour(ヴァロー)」もオープンした。その後、伊勢丹解放区で取り上げられたのをきっかけに、ドレステリアやデスペラートなど都市部での取扱いも増え、全国のショップオーナーやバイヤー、スタイリストなど、知る人ぞ知るショップとして業界でも注目される存在へと成長。地元はもちろんのこと、週末には東京からわざわざ来店する人も少なくなかったそうだ。
「実はブランドの立ち上げと同時に東京・渋谷に事務所兼アトリエを構えており、年2回の展示会はこちらで行ってきました。さすがに山梨までは来ていただくのは難しいですからね。それでも最近は問い合わせも増え、フルラインで商品が見たいというお客様が多くなり、思い切って東京店を出す決心をしました」とは、プレス担当の渡邊光さん。
場所は渋谷から明治通りを恵比寿に向かった「東交番前」という交差点のほど近く。バス停の真ん前というオフィスビルの1階だが、大きく明るい開口部にコゲ茶色を基調としたフレームやフロア、什器など、そこだけ上品な佇まいが目立つ。
「ファッションストリートにぽこっと出店するよりも、わざわざ来てくれるというシチュエーションにこだわりました。それに、周りに何もないなかにいきなりショップがある、という方がインパクトがあって街に埋もれなくていいと思ったんです」(光さん)。
商品は「airlogette」の他に、ウィムニールスやジョーケイスリー・ヘイフォードなどのインポートブランドの服、レベットの靴や国内ブランドのサイクロージング、スタンディング・アローン、フォフマンソックスやバッグ、ロンドンで直接買い付けたアンティークのアクセサリーなど。1点1点がものすごく個性的というわけではないが、トータルでみるとどこかスペシャルな印象を受ける。
それもそのはず、生地の90%はオリジナルで、シャツの襟には裏芯を配してヨレを防止したり、スパッツの裾には微妙なレイヤードによるフリル感が演出されているなど、ちょこっとしたこだわりが個々のアイテムの随所に施されており、いかにもツウ好み。ちなみにボタンもオリジナルだとか。
「このところ20代後半〜30代の女性を中心に、“わたしだけのブランド”という意識が強いように思います」(光さん)。
「今」という瞬間を120%愉しみたい!と次々とトレンドを消費する「ギャル的な志向性を持つ女性」の増加が目立つ一方、素材や着心地など、自分にとっての心地よさにこだわるオトナの女性は確実に増えている。そんなずっと着られる「マイ定番」的なブランドは、上質なものを求める消費者のニーズの高まりとともに、今後ますます増えていくだろう。
metro(メトロ)
レポート
2004.08.07
ファッション|FASHION
山梨の知る人ぞ知るブランド、「エールロジェット」を
扱うショップが東京に進出
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