05年4月11日、ジュエリーショップ「AHKAH(アーカー)」本店が、表参道から渋谷区神南に移転オープンした。築50年になる庭付きの日本家屋を改装した3年間の期間限定ショップである。
ブランドコンセプトは“温故知新”。シンプルなフォルムの中に、巧みに繊細なデザインが盛り込まれたジュエリーは、伝統ある宝飾技術を現代のファッションの一部として提案し、スタイリストやタレント、モデルの間にファンが多いことでも有名だ。
「いわゆる“宝石”は財産価値があってゴージャスで…というイメージが強いじゃないですか。私たちが提案したいのは、本物の宝石だけど体の一部としてファッション化できるアイテム。洋服と同じように自分らしさを表現できるジュエリーです。本来なら宝飾業界に位置すべきですが、私たちはファッション業界としてのスタンスが強いかもしれません」というのは代表取締役社長の福王寺朱美さん。
同ブランドは既にバーニーズ銀座店や横浜店、新宿伊勢丹と3店舗の直営店を展開。ユナイテッドアローズやドレステリアといった高感度のセレクトショップでも取り扱いがあるが、路面店は初。また、妹ブランドの「tinkpink」、エレガントラインの「vivian couture」、ブライダルラインの「PEME」、今春デビューした初のメンズライン「Xiong(ショーン)」を含む全7ブランドすべてを取り揃えることで、世界観を表現している。
場所は、人気アパレルショップが乱立するファイヤー通りを入ったところ。敷地面積120坪の庭に立つショップは、テナント出店が多い神南界隈でひと際目立つ存在だ。さらにエーゲ海のミコノス島をイメージしたという真っ青な屋根と白壁のコントラストが存在感を放つ。
同店の改装を手掛けたのは人気スタイリストの熊谷隆志さん。熊谷さんが手掛けるアパレルブランドGDCのショップに共感し依頼したところ、ふたつ返事で引き受けてくれたのだとか。ブランドカラーの白で統一された店内は、イノセントでモダンな空間。壁一面の摺りガラスを通した柔らかい光に満ち、開放的な雰囲気の中でゆったりと商品を選ぶことができる。
宝石商の家に生まれ育った福王寺さんはL.A.で宝石鑑定士の資格を取得後、宝石科学研究所で鑑定部長を務めた。日本画家との結婚を機に美術の世界に浸るうち、宝飾品としてではなく芸術品としてジュエリーの価値を見出したいという思いが芽生えたのだそうだ。そして、国内外の何百人というアーティストの作品を見て、自力で感性の合うデザイナーを発掘。学生を含む6名のデザイナーと供に97年6月に同ブランドを設立し、同年12月に表参道店をオープンしたのである。
「当初はショップを何件回っても全く相手にしてもらえず、事務所で空ばかり眺める日々が続きました。そんな中、娘と買い物に訪れた『CHER』に感性の近さを感じ、商品を見せたところ、初の取引きに成功。そこからスタイリストからモデルさん…と、ひとつがふたつへと徐々に広がっていきました」(福王寺さん)。
そして03年11月、新宿伊勢丹への出店を機に、福王寺さんの娘・彩野さんが手掛ける妹ブランド「tinkpink」が加わり、その人気は加速。当時、大学4年生だった彩野さんがつくったのは、ピンクやハートをモチーフに“お姫さま”をイメージさせるような、かわいくもゴージャスなジュエリーだ。メーカーがマーケティングを優先した商品開発を行う中、純粋に自分が欲しいと思うものをつくる自由な感性が同世代の反響を呼び、瞬く間に人気ブランドへと成長したのである。
今後は、06年2月に生まれ変わる同潤会跡への出店を予定しており、海外出店も視野に入れているそう。
「毎日身に付けられる、飽きないものを作りたい。子供に受け継がれるような、時代を超えて愛されるジュエリーを作っていきたいですね」(福王寺さん)。
取材・本文/増田わか奈・編集室
AHKAH 神南本店
レポート
2005.06.30
ファッション|FASHION
神南に登場した業界人御用達のジュエリーショップ
関連リンク
-
AHKAH 神南本店
東京都渋谷区神南1-4-10
営業時間 12:00〜20:00
TEL 03-3463-0222
同じカテゴリの記事
同じキーワードの記事