このところ、街中や電車で音楽を聞いている人をよく見かける。昨年末から徐々に増えてはいたが、ここにきて急増している印象である。
「定点観測」でも目立って増えているのが、iPodをはじめとするデジタルオーディオプレイヤー(以下DAP)だ。そこで今回は、変化する音楽環境と新しいDAPについて観察・観測してみることにした。
DAPとは、デジタルデータ化された音楽ファイルを再生するプレイヤーのこと。CDなどに入っている楽曲をファイルとしてパソコンに保存し、その後ポータブルプレイヤーにデータを移すことで、CDやMDなどのメディアがなくても、プレイヤーさえあれば音楽を聴くことができるというものだ。
「以前はMDを使っていたけれど、iPod miniが安くなったので05年6月に購入しました。小さくて軽いので毎日バッグに入れています」(21歳/女性/フリーター・iPod mini4GB使用)、「05年1月に購入しました。きっかけは旅行に行くときのヒマつぶしのため。音とびもないし、やっぱり大量の音楽をコンパクトに持ち歩けるのが大きなメリット。落語やラジオ番組もダウンロードして聴いています」(映像プロデューサー/26歳/男性・iPod photo40GB使用)というように、現在の音楽環境はDAPなしには語れない様相だ。最大の特長はやはり「ソフト要らず」ということ。音楽をデータとして管理できるというのは保存にもメリットとなるし、CDやMDを買う必要がないため、コスト的にも他メディアからのりかえるのに十分な説得材料になっているようである。
では、実際にどのくらいの人が街なかで音楽を聴いているのだろうか? 渋谷センター街入口でカウント調査を実施した。観測日は7月14日(木)。10:00〜10:30の30分間。
カウントしたのは、「ヘッドフォンやイヤフォンを装着している人」すべて。使用しているプレイヤーの種類は特定できないので、携帯オーディオを持っていると思われる人、とした。
結果は、音楽を聴きながら歩いていたのは、男性14.2%、女性15.0%。イヤホンの着用率が最も多かったのは20代後半〜30代の男性だったが、10代後半の若者から50代くらいの男女までかなり幅広い層が着用していた。
この数値が多いかどうかは、比較値がないため、「増えた」とはいいきれないが、男女平均14.6%という数値は、「定点観測」のカウントアイテムの支持率とほぼ合致する。つまり、「誰が見ても流行っている=マスのトレンド」であるということが確認されたことになる。
便利さゆえに、ユーザーごとの音楽を聴く頻度、時間が増えていることも「増えた」ように見える原因のひとつだろう。しかし、それ以上に、音楽を聴くためのツール自体が「目立つ存在」になっている点が興味深い。首からぶら下げるタイプのプレイヤーや、iPodの白いイヤホンなど、これまではバックの中に入っていたり、洋服になじんでいたものがどんどん「オモテ」に出てきているのである。
なかでも、iPodは、専用のケースやストラップなどの関連グッズの充実が「オモテ」化を促進しているのはいうまでもない。なんと、04年春夏コレクションでは、エルメスやグッチ、プラダなど海外のビッグメゾンがiPod専用ケースを発表。その後も、DC Shoeや New Balance 、吉田カバン、ユニクロなど国内外のブランドも続々とリリースし、さらに、iPod mini(04年7月発売)やiPod shuffle(05年1月発売)のような、価格が手頃でデザインもキャッチーなモデルも登場。「ファッション感覚」でコーディネートできる楽しみがあるのもiPod が「一般化」している理由だろう。
今年に入ってからは国内メーカーもこぞって新モデルを発売し、マーケットそのものが一気に拡大。選択肢が増え、競争の激化により価格が安くなったことで、若者以外の層へも広がりをみせている。
2005年に実施された「デジタルAV機器市場マーケティング調査要覧」((株)富士経済調べ)によると、日本国内のDAP市場は、04年に100万台/195億円に到達。05年には190万台、08年には330万台に達し、従来のオーディオプレーヤー市場を上回ると予測されている。
そんななか、8月4日に国内最大級のオンラインミュージックストアiTunes Music Storeの国内サービスがスタート。楽曲数は100万曲以上、1曲150円〜という低価格で購入することができるようになった。オンラインサービスは、タワーレコードの参入も予定されており、本格的な関連サービスの充実に伴い、DAPの「一般化」は今後もますます進むだろう。
取材・文/重保 咲+編集室
ポータブルデジタルオーディオプレイヤー
レポート
2005.08.16
カルチャー|CULTURE
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