去る9月10日、世界共通ホワイトバンドデーが開催された。これは、世界中のNGOが連携して行われている貧困撲滅運動「ほっとけない世界の貧しさキャンペーン」の一環として企画されたもので、国内でも約34カ所で関連イベントが開催。NGO団体のオックスファム・ジャパンは、9月5日〜12日の期間、渋谷マークシティで、ホワイトバンドギャラリーと題し、ホワイトバンドの趣旨に賛同した人々から送られた写メールを集めた写真展を開催。また、「ほっとけない世界の貧しさキャンペーン」事務局は、9月9、10日の2日間、東京タワーをホワイトバンドに見立てたライトアップイベント“WhiteBand on TOKYOTOWER 〜東京タワーもほっとけない〜”を開催。芝公園で行われたカウントダウンクリッキングイベントには3,500人を越える人々が参加するなど、大いに盛り上がった。
このキャンペーンのシンボルといえば、今やテレビや雑誌ですっかりおなじみの「ホワイトバンド」。身につけることで、「貧困をなくそう」という声への賛同を1人ひとりが表明しよう、というのが趣旨のチャリティで、売上げの一部は貧困撲滅への活動資金に寄付されるしくみになっている。日本を含む7ヶ国で販売されており、8月末の時点で、国内での出荷数は200万本を超える大ヒット。単純計算をすると、約6億円の売上=2億6千400万円の活動費(活動費は売上げの44%)が集まったことになるから、ヘタなチャリティ番組よりも費用対効果が高いといえそうだ。
性別や年齢、トライブを越えて幅広い層に浸透しているホワイトバンドは、なぜこれほどまでに大きなブームになったのだろうか。ということで、今改めて振り返ってみることにした。
「バンドのルックスが一番の購入理由。最初見たときに欲しい!と思いました」
「300円という値段の手軽さ、素材のおもしろさに惹かれて買いました」
街で実際にホワイトバンドをつけている人にインタビューしてみると、購入のきっかけはバンドの色やデザイン、素材といったファッション性を挙げる人が多かった。もちろん、ふだんは募金やチャリティに興味を持たない層がほとんど。その+αとして設けられた「活動への参加」の仕組みも、ファッション性の一部となっているのかもしれない。
一方、既に販売を終了しているナイキの「NIKE STAND UP SPEAK UP」キャンペーンのバンドや、海外版のホワイトバンドが、販売価格よりも高額の金額でオークションに出品されているという事実も。チャリティのはずのアイテムが商売になってしまうのだから奇妙な現象である。
7月2日の発売以来あっという間に大ヒットアイテムとなったホワイトバンドだが、9月のアタマをピークに、徐々に減少しているような印象を受ける。実際に渋谷パルコパート1前で「カウント調査」を実施したところ、チャリティバンド着用率は男性4.0%、女性5.8%。うちホワイトバンド着用率が男性3.0%、女性5.3%。男女ともに着用率は驚くほど低くなっていた[観測日は9月20日(火)13:30〜14:00の30分間]。日ごろ定点観測で取り上げるファッションアイテムと同様に、あっという間にマス化し、あっという間に忘れられる。そんな一過性のトレンドとして消化されてしまったのかもしれない。
きっかけはファッションアイテムとしての興味とはいえ、ホワイトバンドを購入した大勢の人が、一瞬でも貧困やチャリティについて思いをめぐらす機会をつくったのは事実だろう。その時点で、同チャリティキャンペーンの目的の一部は果たせたことになる。しかし、そもそも多くの人々が身に付け、「意志」を表明することが社会現象となり、政治にも影響を与えるかもしれないというのがこのキャンペーンの目的でもある。そういう意味では、腕に身に付けられてからが、本当のはじまりともいえるはずなのだが、カウント数値が示していたように、日本人にありがちな一過性のブームとして、夏の終わりとともに終焉を迎えるのか、それともさらなる盛り上がりを見せるのか、同キャンペーンの今後の展開に注目したい。
ちなみに、ホワイトバンドは、現在は全国の書店やタワーレコード、FrancFrancのほか、ファミリーマート、キャンペーンHPで年内いっぱいまで購入可能だそうだ。
取材・文:重保咲+『WEBアクロス』編集室
ホワイトバンド
レポート
2005.09.27
ファッション|FASHION
今夏の大ヒットアイテム「ホワイトバンド」の今をレポート
関連リンク
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ほっとけない世界の貧しさキャンペーン
ホワイトバンドプロジェクト事務局
TEL:03-6825-3205
平日11:00〜17:00
(土、日、祝は除く)
mail:whiteband@hottokenai.jp
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