report:「出版甲子園」

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レポート
2005.10.31
カルチャー|CULTURE
第1回 学生による学生のための出版選手権が開催

与えられた3分間でテンポ良く
プレゼン!
決勝戦当日の来場者は総勢200名強。
出版関係者に混じって学生の両親
らしき姿も。
予選ブロックを勝ち抜いた5名から
グランプリを獲得したのは・・・
『これでいいのだ!スタートラインの
国語』を企画した長谷川裕くん(東大
文学部3年生)。
「史上初! 学生による学生のための出版選手権」が、10月23日(日)、新宿NSホールで開催された。

主催したのは、東大、一橋、早稲田、慶応、立教、上智、青学の現役大学生らにより設立された出版甲子園実行委員会。共催は、PICASO-東大早慶ベストセラー出版会、NPO法人の企画のたまごやさん、出版エージェントの天才工場、(株)就職課、(株)ナイスク、全国大学生活協同連合会、オフィスリングシステム(株)で、ダイヤモンド社、NHK出版、講談社等々の出版社の編集者や作家計14名を審査員に迎えた、大学生の出版企画コンペである。

この夏に「本にしたい企画」を募集。集まった100以上の企画は、1次選考、2次選考で最終的に18企画に絞られ、決勝大会にて審査員のジャッジを得てグランプリを決定する、という流れで、その決勝大会を取材した。

出版企画をトーナメント方式で戦うって、どうやって?と思いきや、予選通過者をA、B、Cの3つのブロックに分け、各自3分間のプレゼン(パワポで作成したスライド付き!)のアピール合戦。審査員の採点合計点でトップになったところが最終決戦に進む、という。わかりやすくて、結構楽しめるシステムだった。

ものまね指南本、女子大生の口コミ、海外体験エッセイ、手話紹介・・・など、ライトで学生らしいものが多く、ほほえましい。つまり出版は無理目・・・。しかしここは編集会議ではなく選手権なわけで、版元編集者の審査員方は「タイトルを工夫して、別の視点を出した方がいい」「専門性が必要なので、著者を立てて企画者となるなら可能か」「こういう企画を出せる出版社はあると思うのでリサーチしてみれば」などなど、丁寧に的確にコメントしていて、学生さんには大変ためになったことでしょう。

こんなもんかねえ、と思ってたら後半強力なネタが! 塾講師のときにオリジナルで作ったという、国語教材をベースにしたもので、「勉強の意味=論理を身につける作業」といった発想法を伝授する内容で、普通にいいです。売れそうです。しかし、その企画が、惜しくも予選ブロックで次点になっちゃったら、審査員、否編集者諸氏、これを落とすわけにはいかないと考えたんでしょう、ざわざわと集まって相談をはじめ、「ブロックでトップではないが、全体のなかでは特に点数の高い2点を残したいと思います!」と、急遽繰り上げ当選へ。

案の定その企画、『これでいいのだ!スタートラインの国語』(長谷川裕氏・東大文学部3年)が優勝に。最後にそんなハプニングがあったので、俄然盛り上がり、イベント的に大成功、という印象が残った。

見た限りでは、このグランプリ作品が白眉だと思ったけど、他の企画にも「こういう方向にすることはできる?」「うちの新刊で同じラインがあるので、それと併売したい」とかなり具体的なオファーがあったり、出版者側も結構本気。ブログ発、口コミネタ発のヒット作が続いている今、ここも掘り出し物探しの一拠点となっていくのでしょう。

学生の実行委員も、手探りながら一生懸命で、お揃いのTシャツは「これ昨日作ったんですよ!」と学園祭ノリで楽しそう。さほど大きなお金の流れもなさそうなので、結構続いていくような気がした。

グランプリの長谷川さんには、終了後大勢の編集者が詰めかけ、輪になっていた。さながら文学賞新人賞受賞のよう? 願わくば優秀な編集者の方がついて、正しい方向で売り出していただきたい、と思うばかり。ちょっとどうかと思うご意見もあったので。


取材・文/PARCO出版 宮川真紀



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