表参道や原宿と言えば、12月に東京メトロがオープンする「Echika(エチカ)表参道」をはじめ、06年1月オープンの「表参道ヒルズ」などの商業施設や、ルイ・ヴィトン、ディオールやシャネルなど海外のハイブランドが続々とオープンし、近年さらに開発が進む今もっとも話題のエリアのひとつ。そのオモテ通りから少し入ったところに05年8月6日、フェアトレードショップ「ピープル・ツリー表参道店」がオープンした。
同店を運営するフェアトレードカンパニー(株)は91年1月にサフィア・ミニー氏が創立した環境・国際協力NGO「グローバル・ヴィレッジ」を母体に、輸入・販売の実務部門として設立された。98年にオープンした自由が丘店に続く2店舗めの出店となる。雑貨や食品などを幅広く展開する自由が丘店と異なり、表参道店は衣料品をメインにしているのが特徴だ。
「ファッション感度が高く、出来るだけ多くの人の目に触れるエリアへの出店を目指しました」(広報・マーケティング担当、木村紀子さん)と言うように、同店のコンセプトは「モダン・エコロジー」。自然素材と伝統技術を活かしたフェアトレード・ファッションを通じて、新しいエコロジカルなライフスタイルを提案する。
「フェアトレード」は、開発途上国の農村地域や都市のスラムなどに暮らす貧困に苦しむ人々に継続的に仕事の機会を提供することを目的とした貿易のこと。自然素材や伝統技術を活かした製品を作ることで、生産者自らの力での生活向上を支援する仕組みだ。同社は現在、アジア・アフリカ・南米の20ヶ国70団体の生産者パートナーと取引している。
「若い層を中心に幅広い層のお客様にアピールしたかったので、表参道店はフェアトレード色を出し過ぎないようにしました。お客様に買って頂き、生産者に継続して発注できて成立するシステムなので、買ったものがたまたまフェアトレードの商品だった、ということでもいいと考えているんです」(木村さん)。
アフリカや中南米で作られているものと聞くと、民族色が強く、ふだん着ることが出来ないデザインを想像しがちだが、同ブランドには全くそんな印象がない。なかでもイギリス企画の商品『ピープル・ツリー・ロンドン』は、華やかな色使いや、斬新で都会的なデザインが特徴。しっとりとした肌触りが心地良いオーガニックコットンのカットソーもある。また、ニットや小物類では生産国らしい色使いや巧みな技術が生かされており、目新しさと共に手作りの温もりが感じられ、さらに商品には「この製品を作った人たち」という生産者についての丁寧な説明タグを添えることで、作り手の顔が見える配慮がなされている。
実は日本は「フェアトレード後進国」なのだそうだ。運動の中心となっているEU諸国では約3,000店舗がフェアトレード商品を扱っているのに比べ、日本では500〜600店舗のみ。一般的にはまだまだその存在自体を知っている人さえ少ないのが現実である。
ところが、そんなEU諸国でもメインは食品や雑貨の商品で、衣料品はほとんど普及していない。デザイン性や品質の高い商品をインフラの整っていない途上国の農村地域で生産するには、かなりの労力とそれに向き合う覚悟が必要となるからである。しかし、その分多くの人を支援できるメリットにも繋がるため、同社は世界でも初といえる規模でフェアトレードの衣料品に取り組んでいるのだそうだ。
「この表参道店をフェアトレードのフランチャイズ店のモデルとして、全国に広められたらと思います。今はまだ夢のような話ですが、各都市に1店舗展開できればいいですね」と、木村さんは日本で同ブランドが目指す今後の目標を話す。
日本でも、エコロジーやヨガ、有機野菜を取り入れるナチュラリズムは浸透してきたが、まだ「身体にやさしい」自分主体のものへの興味の段階で、第三者への理解はまだまだ薄い。世界も認めるファッション発信地から送られるフェアトレード・ファッションを通じて、環境やエコロジー、世界経済に目を向けてみてはいかがだろう。
〔取材・文:苫米地香織+『WEBアクロス』編集室〕
ピープル・ツリー表参道店
レポート
2005.11.25
ファッション|FASHION
日本から世界へ発信する
モダン・エコロジーなフェアトレード・ファッション
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ピープル・ツリー表参道店
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