gg(ジジ)

gg(ジジ)

レポート
2006.10.17
ライフスタイル|LIFESTYLE

雑貨屋の枠を越えた
新しい形のギャラリーショップ

店内奥のカフェスペース。窓からは
代官山へと繋がる通りが見下ろせる。
ギャラリースペースでは有名無名問わず、
幅広いジャンルの作家の作品を展示。
少し変わったデザインのものやフォルムが
きれいなものをセレクト。「他の場所では
埋もれてしまうようなものを発掘したい」
(小山さん)。
入口近くのレセプションコーナー。
店内には掲示板を設置。お客さんが自由に
フライヤーや作品を張る告知の場となっている。
渋谷区猿楽町の並木橋近く。渋谷から代官山への抜け道として人通りが多いこのエリアには、01年以降ショップが急増。カフェ&レストラン「FRAMES DAIKANYAMA」とクラブ「AIR」をはじめ、「時しらず」や「Pledge」など隠れ家的なショップが建ち並ぶ「奥代官山」エリアである。そんな場所に、今年夏、雑貨屋「gg(ジジ)」がオープンした。店名の「gg」はgood goodsの略で、雑貨とアクセサリーなどを展示・販売するギャラリーショップである。運営するのは、小山奈々子さん(32)と原田さちこさん(31)。

きっかけとなったのは、02年にピエブックスから出版された『雑貨屋を作ることにしました』という書籍だという。当時、デザイン会社(有)グッドデザインカンパニーに勤務していた小山さんと原田さんが、架空の雑貨店を開く過程をまとめたこのコンセプトブックの企画・編集を担当し、その出版記念として、青山ブックセンター内に雑貨屋を催事として出店。その後03年からは全国の美容院やインテリアショップなどを間借りする移動雑貨店として、年3〜4回のペースで期間限定で営業を行っていた。

「できることをやっていたら、自然に移動式店舗というかたちになりました。始めた当初は、移動式でしかできないこともあってやりがいを感じていましたが、続けるうちに、サーカス団のように発信源が定まらない運営方法に行き詰まりを感じるようになったんです。移動式ではビジネスにならないし、お客さん同士が繋がるためにも場所が必要だと感じ、思い切って店を構えることにしました」(小山さん)。

その後2人は独立。もともと雑貨好きだった原田さんは、茅ヶ崎のインテリアショップ「サザンアクセンツ」に勤務し、店の運営について修行した。そして06年8月、2人による個人事業として同店をオープンするに至ったというわけだ。小山さんがディレクターとして企画やプロデュースを担当し、原田さんが店長としてディスプレイや接客などを担当している。

場所は古くからある弁当屋の2階。8坪の店内は、白を基調に木製のインテリアを多用し、暖かみのある雰囲気になっている。内装はスタッフによる手作りで、商品・作品の個性を活かすため、あえてシンプルにした。カフェスペースを併設し、フレーバーティーやスムージーなどの飲みものも提供している。

商品は、北欧から買い付けた雑貨や文房具、食器を中心に、国内の若手アーティストが創作したアクセサリーやアート作品などで構成。オリジナルのノートやグラスも展開している。また、店内の壁面はギャラリースペースになっており、「今月のgg」と題して様々なジャンルのアーティストによる作品展を開催。さらに閉店後は「ggの課外授業」と題し、不定期でヨガ教室や金融入門講座、マックユーザーのためのOS10講座なども開催している。

「コンセプトは毎月変わる雑誌のような店。来るたびに新鮮な店にしたかったんです」(小山さん)という言葉の通り、同店の特徴は、店を構成するすべての要素が1ヶ月毎に変わるという点だ。月ごとにテーマを決め、それに合わせて商品やBGM、ドリンクメニューや展示も変更。ハコは一緒だが、内容が変化するため、店の印象ががらりと変わるという珍しいシステムだ。

「店を構えた後も、移動式だったという特徴をなんとか活かせないか悩んでいました。そんな時、駅構内の催事スペースを見てこのアイデアを思いついたんです。100円均一の店が2週間後には布団屋に変わるなど、わずかなスペースが期間ごとに店ががらりと変わるスタイルがとても魅力的に感じました。おまけに『あと3日です!』と言われると妙に入りたい気持ちにさせられるじゃないですか(笑)」(小山さん)。

10月と11月の2ヶ月間は「gg POLAROID PROJECT」を開催。期間中、会場では写真家・本城直季さんのポラロイド写真展や雑誌「カメラ日和」との共同企画であるポラロイドコンペ、またレンタルポラロイドやポラロイドカメラ関連グッズの販売なども行っている。さらに今後は車のパーツメーカーや旅行代理店、海外のインテリアショップなどとのタイアップ企画を予定しているのだそうだ。

雑貨店という枠にこだわらず、企画性を持たせることで小さなスペースにいくつもの機能を集約。そしてその一環として、企業とのコラボレーションによる広告・販促の場も提案。個人オーナーによる自由な発想から生まれた業態が、結果的に新しいコンセプトのショップになっている点が興味深い。大資本による大型メディア戦術を駆使した販促が盛んな今、最初のインパクト重視の広告に辟易した消費者が少なくないなか、同店のように、個人オーナーの意志が感じられる等身大の販促型ショップがかえって新鮮で魅力的に感じる時代へと移行しているようだ。

[取材・文/田中みゆき(フリーライター)+『WEBアクロス』編集室]

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