*REPORT FROM PARIS STREET:
“ジェネレーション・ゴーシャ”の台頭。
レポート
2016.11.30
ファッション|FASHION

*REPORT FROM PARIS STREET:
“ジェネレーション・ゴーシャ”の台頭。

パリのストリートにおけるゴーシャ・ラブチンスキーの影響力

ヨーロッパでも広がる「90年代生まれ」=新しい若者世代の新しいクリエーションについて、パリ在住だった(現在はロンドン在住)のデザインアシスタントの工藤司さんによるレポートです。

モードの舞台において<ストリートカルチャー>をミックスさせるスタイルが多用されるようになって数年、いま、街では必ずしもスケートボードを操るひとだけがスケーターブランドやスポーツブランドの服をミックスしているわけではない、その他のひとたちの間でさえ、<ストリートカルチャー>の影響は大きい。

なかでも、その影響無くして現在のキッズたちのスタイルを語れない、といえる人物がいる。コム ギャルソンが生産やPRをサポートしていることでも有名になったロシア出身のファッションデザイナーで、写真家のゴーシャ・ラブチンスキー (Gosha Rubchinskiy)(以下、ゴーシャ)。(→写真の下に文章が続きます)

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あるショップにGosha RubchinskyとVETEMENTSのスウェットパンツが隣同士で陳列されていたスウェットパンツ。
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ゴーシャやパレスを着こなし
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ナイキのAir MAXやコンバースのオールスターなどのスニーカーを履きこなすスケーターキッズたち

ゴーシャが自身のブランドを立ち上げたのは2008年。8年後には、世界的にカルト的な人気を誇るファッションデザイナーへと成長した。その人気は、今や留まるところを知らず、18歳のラッパー、FACE,aka アイヴァン・ドリョミン (Ivan Dryomin) は、“Гоша Рубчинский”(ゴーシャ・ラブチンスキーのロシア語表記)と呼ばれる楽曲を発表した。

*FACE - Гоша Рубчинский (prod. by Tommy Kruise)


Supreme(シュプリーム)PALACE(パレス)といったほかのブランドとは違い、ゴーシャはショーを通して彼の世界観を私たちに語りかけてくる。時には同世代か、もしくは彼よりも下の世代とのコラボレーションで、仲間と「シェア」しながら新しいビジュアルやイメージを作り上げてきたのである。

なにより、彼がファッションデザイナーであるまえに、優れた写真家であり、彼の写真集に登場する少年たちの装いや着こなしが、彼の世界観を私たちに示してくれているということにも注目したい。

それらのイメージの断片は、インスタグラムなどのメディアを通して瞬時に拡散していった。今まで<モード>に距離があったひとたちが、自分に近い存在として認識し、彼の服を手に取りたい、手に入れたいと思うようになったのだ。

ゴーシャにとってのインスピレーションである<スケーターキッズ>にとって、ゴーシャの服は手に取りやすい価格設定だということも、忘れてはならない。

筆者の少年時代、好きなブランドの服は高価すぎて手が届かず、そのブランドの靴下やTシャツから買い始めたという記憶がある。ゴーシャの服は靴下やキャップといったアクセサリーはもちろんのこと、服自体の値段がリーズナブルプライスである。

パリのあるショップの一角で、現在ゴーシャと同じように最も影響力のあるブランドの一つであるVETEMENTS(ヴェトモン)のスウェットパンツとゴーシャのスウェットパンツが並列されていたので値段を確認したのだが、VETEMENTSのスウェットパンツが540ユーロであったのに対して、ゴーシャのパンツは140ユーロであった(写真0参照)。


もちろん素材も仕様も全く異なるため、単に価格を比較することは適当とはいえないが、価格帯という点において、ゴーシャの服は、少年少女たちにとって少し背伸びすれば手に届くところにあるといえそうだ。ゴーシャが現在、世界の90を越えるショップに商品を卸しており、インスタグラムで#gosharubchinskyと検索すれば、若い世代にどれほど着用され、その写真がシェアされているかがわかる。そしてシェアされればされるほど、購買意欲は掻き立てられる。

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スケートボードには乗らないが、ゴーシャの服を着こなすパリの“Next Gosha Kids“たち。
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(右)デニムブルゾンの彼。中から着ているTシャツに加えてスニーカーまでもがゴーシャとリーボックのコラボレーションラインのスニーカーであった。
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スーツパンツにトップスをインし、足下にはコンバースを履きこなす次の時代のゴーシャキッズのスタイリング。好きなデザイナーはと聞いたところ、VETEMENTSのデムナ・ヴァザリアとDior Hommeのクリス・ヴァン・アッシュと答えてくれた。

ゴーシャが前シーズン(20166月)の展示会「ピッティウォモ」で発表した最新コレクションでは、ファーストルックからスーツが登場し、話題をよんだ。それはゴーシャがストリートウェアを着る「キッズ」たちに向けたものだけでなく、「青年」の服をみせたからだろう。同時に、スーツのシルエットがややオーバーサイズで、キッズたちに、スケートボードでも、クラブで遊んでもクールに着こなせるということを示していたのではないか。その後もゴーシャは、ブランド初となるフレグランスの発売や新しい写真集をリリースし、彼の生み出す世界観に触れられる機会を増やし続けている。

それに呼応しているのかのように、パリには今、スーツのスラックスパンツにポロシャツやTシャツをインしてスケートボードを走らせる、ニュー・ゴーシャ・キッズたちが登場しはじめた!

ゴーシャがストリートウェアに留まらず発表したコレクションが、今後、世界のストリートキッズたちの装いにどのような影響を及ぼすのか、また、今後の彼のクリエイションとそれらがどう呼応するのか、両者の化学反応はまだ続きそうである。


SNSからファッションへアクセスすることが日常となった若い世代=<ジェネレーション・ゴーシャ>による少年少女たちの同行に、目が離せない。[文責:工藤司]


工藤司/Tsukasa Kudo
1987年生まれ。早稲田大学卒業後、アントワープ王立芸術アカデミーファッション科中途退学。JAQUEMUS、Y/PROJECTを経て、現在J.W.Andersonにてデザインアシスタントとして研修中。それに伴い、パリ住まいからロンドン在住に。


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