あるショップにGosha RubchinskyとVETEMENTSのスウェットパンツが隣同士で陳列されていたスウェットパンツ。
ナイキのAir MAXやコンバースのオールスターなどのスニーカーを履きこなすスケーターキッズたち
ゴーシャが自身のブランドを立ち上げたのは2008年。8年後には、世界的にカルト的な人気を誇るファッションデザイナーへと成長した。その人気は、今や留まるところを知らず、18歳のラッパー、FACE,aka アイヴァン・ドリョミン (Ivan Dryomin) は、“Гоша Рубчинский”(ゴーシャ・ラブチンスキーのロシア語表記)と呼ばれる楽曲を発表した。
*FACE - Гоша Рубчинский (prod. by Tommy Kruise)
Supreme(シュプリーム)やPALACE(パレス)といったほかのブランドとは違い、ゴーシャはショーを通して彼の世界観を私たちに語りかけてくる。時には同世代か、もしくは彼よりも下の世代とのコラボレーションで、仲間と「シェア」しながら新しいビジュアルやイメージを作り上げてきたのである。
なにより、彼がファッションデザイナーであるまえに、優れた写真家であり、彼の写真集に登場する少年たちの装いや着こなしが、彼の世界観を私たちに示してくれているということにも注目したい。
それらのイメージの断片は、インスタグラムなどのメディアを通して瞬時に拡散していった。今まで<モード>に距離があったひとたちが、自分に近い存在として認識し、彼の服を手に取りたい、手に入れたいと思うようになったのだ。
ゴーシャにとってのインスピレーションである<スケーターキッズ>にとって、ゴーシャの服は手に取りやすい価格設定だということも、忘れてはならない。
筆者の少年時代、好きなブランドの服は高価すぎて手が届かず、そのブランドの靴下やTシャツから買い始めたという記憶がある。ゴーシャの服は靴下やキャップといったアクセサリーはもちろんのこと、服自体の値段がリーズナブルプライスである。
パリのあるショップの一角で、現在ゴーシャと同じように最も影響力のあるブランドの一つであるVETEMENTS(ヴェトモン)のスウェットパンツとゴーシャのスウェットパンツが並列されていたので値段を確認したのだが、VETEMENTSのスウェットパンツが540ユーロであったのに対して、ゴーシャのパンツは140ユーロであった(写真0参照)。
もちろん素材も仕様も全く異なるため、単に価格を比較することは適当とはいえないが、価格帯という点において、ゴーシャの服は、少年少女たちにとって少し背伸びすれば手に届くところにあるといえそうだ。ゴーシャが現在、世界の90を越えるショップに商品を卸しており、インスタグラムで「#gosharubchinsky」と検索すれば、若い世代にどれほど着用され、その写真がシェアされているかがわかる。そしてシェアされればされるほど、購買意欲は掻き立てられる。