雪がチラつくたいへん寒い日の実施で幕を開けた2017年1月の定点観測。今年2回目となる2月4日(土)は、はやくも立春。穏やかな陽射しと時おり吹く冷たい風で寒さと温かさが混じった春の兆しを感じるなかでの実施となった。
前日の夜遅くまで迷いに迷った末に決定した今月のメインテーマは、「女性ビッグシルエット・アウター、うち+太パンツ」とした。つまり、でかいアウターにでかめのパンツ、ワイド&ワイド、ビッグ&ビッグのシルエットが、さらに幅広い層にまで広がり、すっかりシルエットが変わったね、ということを記録しておこうということになった。
いまさらだが、私たちが毎月、街(路上)に出て、ほぼまる1日過ごし、考察している「定点観測」は、結果的には“おしゃれな子”を撮影し、インタビューし、掲載しているが、本質は「ファッションを現象として(継続的に)捉える」ことをきっかけに、時代や社会をよみとこうという研究活動である。けっして、“おしゃれな子”を見つけるためのスナップ活動でもなければ、“次のファッションの流行を街にいるおしゃれな人たちから探ろう”という目的のための手段としてのリサーチというわけではない。
そもそも、“ファッション“という言葉を定義することも難しいが、“おしゃれ”はもっと難しい。しかし、「ACROSS」編集部としては今年で37年目となるこの活動を通して1点信じて疑わないことは、「おしゃれの定義は常に変化する」ということだ。つまり、“おしゃれ”とは、顔がかわいいとかスタイルがいいということだけではなく、もちろん、どこのブランドを着ているかということでもなく、“着る人が示す、それぞれの時代・社会の価値観との距離感“であり、その“ズラし感”であり、それらが他者に影響力を与える“メディア的な機能“を持っていることだと捉えている。
さて、そんななか、今月注力した「ビッグシルエット」をよく観察してみると、いくつかのパターンがあることがわかる。
①全身着ぐるみのようにどーんとデカイ感じ(写真左:2017年1月撮影)はティーンズを中心に人気で、スナップサイトなどでもよく見かけるビッグシルエットの一例だ。“あえてデカイのを着ています”という主張のあるファッションといえる。しかし、今月確認したいのは、②ドロップショルダーだったり、幅広い襟やフードといっしょになった襟ぐりが顔まわり〜肩をワイドに見せているなど、(いつの間にか)肩幅・首まわりが大きくなったものを着ている大人たちの存在だ(写真中と右:2017年1月撮影)。③さらに、ボトムスが、マキシスカートだったりワイドパンツだったりなど、トップスに負けないボリュームのあるものが主流になってきた。中には、深いスリットで軽さを出しているアウターやパンツだったり、前が短めで後ろが長めの丈というデザインでひと工夫されたトップスやパンツなども登場しているなど、総合的にみると、80年代のギャルソンとかヨウジとかのようなデザイナーズファッション=DCブームを彷彿させる。
そういえば、昨年は「父のビンテージのヨウジです」とか、「母のギャルソンです」という声もよく聞かれ、<若者>の世代が、90年代生まれの「新人類ジュニア世代(親が新人類世代)」から、すっかり2000年代生まれ=「ミレニアム世代」になってきた。インタビューでは、十年ほど前から親御さんの年齢も聞くようにしているが、ミレニアム世代の親御さんは、新人類世代もチラホラいるものの、70年代生まれの「団塊ジュニア世代」が増えてきた。
ちなみに、過去の定点観測から「ビッグシルエット」の変遷を振り返ってみると、「女性太パンツ、うち黒太パンツ」(2016年6月)、「ボリューム袖」(2016年9月)、「ビッグ&ビッグシルエット」(2015年11月)、「男女タックパンツ」(2015年9月)、「太パンツ」(2014年11月)、「女性ボリュームネック・スタイル」(2014年1月)、「ロングコート」(2013年12月)などがあげられる。
今月より本格的に始まった2017秋(プレフォール)の展示会を見ても、まだまだビッグシルエットが継続して提案されており、約3〜4年かけてシルエットが変化しているさまが確認される。また、シルエットが大きくなると重ね着がしやすくなるので、各自もともと持っていた服をそれぞれのバランス感で組み合わせるようになり、結果的にファッションに個性がみられるようになっている点も興味深い。具体的な“おしゃれのセンス“については、10日(金)のスナップ公開日と、17日(金)のインタビュー公開日をどうぞ。