*金沢21世紀美術館での展示のことや北欧のファッションについて。
——金沢21世紀美術館「日々の生活—気づきのしるし」の中でも、ヴィブスコフさんの部屋は、飛び抜けて変わっていましたね。他はシンプルにデンマークのグッドデザインの家具などを見せる、あるいは、日常をデザインすることの意味を問う、といった印象の展示でしたが、ヴィブスコフさんのは、ヴィリジアンの部屋で赤いフレームの皿洗い機が孤独な作業をこなしている、、、、。「The Repetitive Clean(くりかえし洗う)」と題したあの展示のアイディアはどこから?
HV:標題が「日々の生活」ですから、日常生活をデザインで表現するということを考え、それから、日々何をしているかを考えてみました。浮かんだのが、「洗う」ということなんです。単調な作業です。最初は衣服を洗うことだけを考えていました。ところが、展覧会のキュレーターが、服を洗う作業もいいけど、展覧会で見せるには、皿洗いの方がいいのでは、と提案されてそっちに。皿洗いも日々やってますからね。
最初に皿洗い機をデザインして、それから備品をデザインしていったんですが、プレートに吊り下げるための穴を開けて、オブジェにしていった。プレートはデンマークで作りましたが、日本風な要素を盛り込むために、お箸を想起させるステッチを加えました。シンクで食器がぶつかり合う音、水の流れる音など会場は、音の空間にもなっています。水の音と、アンビアントな音楽を組み合わせて作りました。琴の生演奏を加えたインスタレーションも行いました。
——少し前までは、日本では、北欧とファッションはあまり結びつかなかったのが、最近、少し状況が変わって来ている気がします。それは、ファッションの文脈が変わって来ているということかもしれません。北ドイツやオランダなども含めた北欧圏のファッションが、新鮮です。
HV:スカンジナビアの歴史を見ると、ほとんど漁師か農夫です。ハイファッションとは無縁な土地で、洗練された高級ファッションというのは根付かなかったのです。でも、スカンジナビアやノルディックが少しずつ現れて来ていて、僕自身も勉強しているところです。
でも、パリとはいろんな意味ですごく違います。例えばパリでファッションデザイナーというと、ワオ!となりますが、デンマークでは、音楽は概して、ワオ!クール!となるのですが、ファッションだと、そうはならない。北欧の人間は、ファッションは人工的で物質的で軽薄なイメージ、一方音楽には精神性がある、と思っている。パリでは、全く逆ですからね。ストレンジだよね。
でも、僕は、時間をかけてそのイメージを変えようとして来たつもりです。ファッションも、人工的なだけではなく、個性的で、アバンギャルドで、人間くさくて、オルタナティブで、といろんな要素がある。
北欧の人間たちはファッションといえば、ポップで人工的なものだと思っているからね。でも、少しずつ変わって来ているのです。