外国人旅行者が増加する東京都内で、近年特に人気を集めているのが台東区蔵前エリア。浅草や清澄白河にもほど近いこの街、再開発と下町情緒といった新旧の要素が混在するところが受けているのだという。
そんな蔵前の駅前に一際目を引くショップが出現した。台湾茶を提供するカフェギャラリー「Taiwan Tea & Gallery 台感」と、隣接する雑貨店「inBlooom 印花楽 蔵前」。それぞれのアプローチで台湾文化を紹介している。

“台湾人よりも台湾人っぽい”と台湾でいわれている田中佑典さん。いまでもほぼ毎月、台湾と日本を行き来しているそう。

以前は1つひとつ個人輸入で入れていたアイテムを、会社を通してきちんと仕入れるように整備している最中だとか。この台湾茶ブランド「狼茶 wolf tea」も念願叶って日本の総代理店契約を締結したのだそう。
「Taiwan Tea & Gallery 台感」では、台湾茶ブランド「狼茶 wolf tea」や台湾ビール、スイーツや屋台料理で知られる魯味(ルーウェイ)などの軽食が楽しめるほか、月替わりで台湾文化に関する企画展を開催。取材に訪れた日は『台湾ゴミシュラン展』と銘打ち、一見ゴミとも見紛うキッチュな掘り出し物雑貨を展示販売していた(4月末まで開催中)。店の片側の壁に並べられたレトロ&ポップな生活雑貨は、見ていると楽しさとともに懐かしさも感じさせる。5月は台湾のイラストレーター只是(ZUSHI)さんの作品展を予定している。

先日台北に行った時にも日本人旅行者で大人気だったテキスタイル&雑貨ショップ「inBlooom/印花楽」の日本1号店。奥のテーブルでは、バッグや服づくりのワークショップなどもやっていて大人気だそう。
壁を隔てた雑貨ショップ「inBlooom 印花楽 蔵前」は、台湾で人気のテキスタイルブランド「印花楽」の日本第1号店。自然をモチーフにした落ち着いた色調のデザインが魅力で、その世界観が表現されたファブリック&グッズが揃う。シルクスクリーンでトートバッグを作るワークショップも随時実施。他ブランドのステーショナリー、食器、衣類雑貨なども幅広く扱っているが、ほとんどの商品が日本ではこの店だけで入手可能だそう。
これまでの台湾の雑多なイメージに反し、ショップ全体にはすっきりとした統一感がありセレクトのセンスがうかがえる。近年、台湾では日本での流行の影響もあってか、さまざまな分野でスタイリッシュなデザインが増えてきているのだという。
これまでの台湾の雑多なイメージに反し、ショップ全体にはすっきりとした統一感がありセレクトのセンスがうかがえる。近年、台湾では日本での流行の影響もあってか、さまざまな分野でスタイリッシュなデザインが増えてきているのだという。

田中さんが発行人兼編集長のリトルプレス『離譜(リープー/LIP)』最新号はリリースされたばかり。実は表紙は田中さんがモデルも!
2つのショップをプロデュースしているのは、台湾コーディネーターとして活躍する田中佑典さん。彼自身の熱意により現地の人びとと交流し台湾と日本の掛け橋となってきた人物だ。
台湾&日本カルチャーマガジン『離譜(リープー)/LIP』の編集人でもあり、LIP名義でさまざまなプロジェクトを手がけてきた。そんな実績を買われ、さきごろ台湾に進出した蔦谷書店を運営するカルチュア・コンビニエンス/クラブ株式会社の関連会社であるVidaway(ヴィダウェイ)と共同によりプロジェクト「台湾品質」を結成。この店を立ち上げた。
台湾&日本カルチャーマガジン『離譜(リープー)/LIP』の編集人でもあり、LIP名義でさまざまなプロジェクトを手がけてきた。そんな実績を買われ、さきごろ台湾に進出した蔦谷書店を運営するカルチュア・コンビニエンス/クラブ株式会社の関連会社であるVidaway(ヴィダウェイ)と共同によりプロジェクト「台湾品質」を結成。この店を立ち上げた。

『離譜』の前身は、田中さんが日芸の学生だったときに自主編集で作成したリトルプレス『LIP』(写真手前が創刊号)。
元々田中さんは日大芸術学部の学生時代、素人だけで作ったメディアマガジン『LIP』を手がけていた。口から出まかせ、リップサービスなどの意味を込めた誌名のポリシーは、現在の『離譜』(=ありえないこと、逸脱)にも受け継がれている。
常に面白いことを求め表現することに正直になるあまり雑誌作りは一旦ストップ。それを再開した理由は、台湾との運命的な出会いがあったからという。2009年になんとなく旅行で訪れてみたら、日本にも似たなじみやすさと異国らしさのバランスが心地よく、“まず行動してみる”台湾人の気質も自分にフィットしたという。
常に面白いことを求め表現することに正直になるあまり雑誌作りは一旦ストップ。それを再開した理由は、台湾との運命的な出会いがあったからという。2009年になんとなく旅行で訪れてみたら、日本にも似たなじみやすさと異国らしさのバランスが心地よく、“まず行動してみる”台湾人の気質も自分にフィットしたという。

「小日子」は、2012年に創刊された台湾のライフスタイルマガジンで、「小日子商号」という名前の雑貨店が、台北のMRT「公館」駅からすぐのところにある。グルメ、映画、音楽、旅行などの切り口に等身大の台湾の暮らしや文化を発信していて定評があり、雑誌で紹介されたものはリアルショップで買える他、オンラインショップでも購入できる。丸井太陽がトレードマークのオリジナルトートバッグは大人気商品のひとつ!
彼の熱意はその行動力もあって周囲に広がりを見せる。台湾進出を目指す日本人クリエイターやビジネスマンなどに向けた、より実用的な台湾式中国語を学ぶ勉強会「カルチャーゴガク」を企画し、荻窪のブックカフェ「6次元」にて開講。現在は同じ荻窪にある田中さんの自宅で継続中だそうだ。

取材中もお客さんが次々に来店。人気はやっぱりかごバッグ! 個人的には、運気アップのゴールドの餃子型のキャンディーボックスがおすすめ。
いま台湾の友人たちは田中さんを“台湾人より台湾人らしい”と評しているのだそう。稀有な才能で仲間を増やしてきた彼あってこそのムーブメント。
単なる流行ではなく、田中さんの頭の中には今後のさまざまなプランが暖められている。5月1日からは「台湾品質」のECサイトも開始。今後の展開にも期待したい。
単なる流行ではなく、田中さんの頭の中には今後のさまざまなプランが暖められている。5月1日からは「台湾品質」のECサイトも開始。今後の展開にも期待したい。
[取材・文/柳原由加子(フリーライター/編集者)]