「最近のファッション業界にフラストレーションを感じている人というか、最近の商品に満足いかない人たちが一定数いて、その人たちが過去にフックしたがっているなというのは感じていました。そういう人たちをキャッチしたかったんです」
そう話すのは、2018年3月、渋谷の神南に、国内外のデザイナーズブランドのアーカイブを集積したショップ「Archive Store(アーカイブストア)」をオープンした「株式会社未来ガ驚喜研究所」の齋藤賢吾社長。“ミライがキョウキ”と読む同社は、ブランド古着店「RINKAN(リンカン)」の運営で知られている、2006年に設立した比較的新しい会社だ。
たしかに、渋谷を中心に、“都市のスキマに増える古着屋”を不定期だが取材していると、Helmut LangやMaison Martin Margielaをはじめ、1980年代〜2000年代に活躍したデザイナーズブランドの服や小物を古着屋で目にする機会が急増している。そしてそれらの服は単なる古着ではなく、過去の貴重な“アーカイブ”であるという付加価値のもと、高額で販売されていることもしばしばある。
「時代がアーカイブを求めていたんだと思います」と齋藤社長が語るように、この数年でMartin MargielaやCOMME des GARÇONSなどが次々とアーカイブ展を開催。ブランド側がアーカイブに意識的になり始めたのに伴い、それを求める消費者も増えてきたのを肌で感じていたという。
そこで齋藤社長は2016年頃から同店の構想に着手。空間デザインやブランディング、物件探しなどに時間を要し、今年のオープンになった。
「路面に“どーん”とあってわかりやすい店より、え、ここに入っていくの?ここがお店なの?という経験を味わってもらいたかった」というように、ビルの裏手にある真っ暗な非常階段が入り口。入店する前からワクワク感と緊張感を同時に感じられる店舗になっている。
「時代がアーカイブを求めていたんだと思います」と齋藤社長が語るように、この数年でMartin MargielaやCOMME des GARÇONSなどが次々とアーカイブ展を開催。ブランド側がアーカイブに意識的になり始めたのに伴い、それを求める消費者も増えてきたのを肌で感じていたという。
そこで齋藤社長は2016年頃から同店の構想に着手。空間デザインやブランディング、物件探しなどに時間を要し、今年のオープンになった。
「路面に“どーん”とあってわかりやすい店より、え、ここに入っていくの?ここがお店なの?という経験を味わってもらいたかった」というように、ビルの裏手にある真っ暗な非常階段が入り口。入店する前からワクワク感と緊張感を同時に感じられる店舗になっている。
同店ではMartin MargielaやHelmut Lang、Raf simons、COMME des GARÇONSやYohji Yamamotoなどのアーカイブが展示・販売されているほか、特定のブランドのみを集めた期間限定のポップアップも随時開催。
長年RINKANでブランド古着の買い取りをしてきたなかで時折出てくる、既存店には置けないような貴重なものは倉庫にストックしていたそうで、同店の商品は、その膨大なコレクションからセレクトされたものだ。
さらに同店をオープンしたことで、これまではその存在が見えなかった、普通のブランド古着屋には服を売りたくないというようなコレクターのような人とも出会う機会が生まれ、そこから商品を仕入れるというルートもできたのだそうだ。
長年RINKANでブランド古着の買い取りをしてきたなかで時折出てくる、既存店には置けないような貴重なものは倉庫にストックしていたそうで、同店の商品は、その膨大なコレクションからセレクトされたものだ。
さらに同店をオープンしたことで、これまではその存在が見えなかった、普通のブランド古着屋には服を売りたくないというようなコレクターのような人とも出会う機会が生まれ、そこから商品を仕入れるというルートもできたのだそうだ。
客層は大きくわけて2種類。美術館を見に来るような感覚の若い世代と、実際に購買することが多い当時を知る30〜40代の世代。中心となるのはやはり後者で、その大半がファッション業界人だという。
「ヘンな話ですが、本音では1人につき1点しか売りたくないんです。もう二度と入ってこないだろうなというアイテムはやはり愛着があり、この人だったら引き継いでもいい、というような奇妙な感情もあります」(齋藤社長)
「ヘンな話ですが、本音では1人につき1点しか売りたくないんです。もう二度と入ってこないだろうなというアイテムはやはり愛着があり、この人だったら引き継いでもいい、というような奇妙な感情もあります」(齋藤社長)
現在は、デザイナーやスタイリストなどが数多く来店し、ファッション業界でも話題の同店だが、構想段階では社内から「ニッチ向けで利益にならないのでは」という声も少なくなかったという。
「ぼくらの考え方を表明するのに必要な店だったんです。“ブランド古着屋”って正規の取扱店じゃないし、ブランドのイメージを下げてしまっているのではという後ろめたいような気持ちがどこかにありました。でもぼくたちは本当にデザイナーズブランドが大好きで、クリエーションに敬意を持っているんだということを、この店を通して表明したかったんです」(齋藤社長)。
実は、同社に限らずセカンドハンドの会社に勤務する人々の中には、そういった後ろめたいような感情から、自分の仕事に誇りを持てない人が少なからずいるという現状があるそうだ。同店をオープンすることで、「世の中にたくさんセカンドハンドの店はあるけれど、あの会社はこんなかっこいいことをしている」と周りに言ってもらえるようになれば、社員たちのモチベーションもアップするのではという期待もあったと齋藤社長は話す。
「ぼくらの考え方を表明するのに必要な店だったんです。“ブランド古着屋”って正規の取扱店じゃないし、ブランドのイメージを下げてしまっているのではという後ろめたいような気持ちがどこかにありました。でもぼくたちは本当にデザイナーズブランドが大好きで、クリエーションに敬意を持っているんだということを、この店を通して表明したかったんです」(齋藤社長)。
実は、同社に限らずセカンドハンドの会社に勤務する人々の中には、そういった後ろめたいような感情から、自分の仕事に誇りを持てない人が少なからずいるという現状があるそうだ。同店をオープンすることで、「世の中にたくさんセカンドハンドの店はあるけれど、あの会社はこんなかっこいいことをしている」と周りに言ってもらえるようになれば、社員たちのモチベーションもアップするのではという期待もあったと齋藤社長は話す。
昨年より、“Google Cultural Institute”によるファッションに関するアーカイブをまとめた「We Wear Culture」が始動したり、デジタルアーカイブ学会が発足するなど、「アーカイブ」という概念が広まりつつあるようだ。
「90年代にはアーカイブという概念がなかったと思うんですよ。デザイナーズブランドの歴史もまだ長くなかったし、クリエーションが行き詰まっていなかったというか、常に新しいものを発信できる時代だった。それがだんだんネタがなくなって発信力が弱まってきたから、過去に立ち返るような流れになっているのではないでしょうか。いまは何がいつアーカイブになるのかわからないので、常にアンテナを張っていきたいですね」(齋藤社長)
「90年代にはアーカイブという概念がなかったと思うんですよ。デザイナーズブランドの歴史もまだ長くなかったし、クリエーションが行き詰まっていなかったというか、常に新しいものを発信できる時代だった。それがだんだんネタがなくなって発信力が弱まってきたから、過去に立ち返るような流れになっているのではないでしょうか。いまは何がいつアーカイブになるのかわからないので、常にアンテナを張っていきたいですね」(齋藤社長)
なお、次回のポップアップイベントではRaf Simonsをフィーチャーするとのこと。日程は未定だが、近日発表されるそうなので、要チェックだ。
【取材・文:大西智裕(『ACROSS』編集部)】
【取材・文:大西智裕(『ACROSS』編集部)】