きっかけは、文化学園(大学院)での授業のあと、たまたま初台方面に用事があったので、目の前の甲州街道をいつもの駅とは逆に向かおうとした、その瞬間のことだった。新宿西口のビル群を背景に、真っ白い四角いハコ状のビルが目に飛び込んできたのである。
文化学園/文化服装学院の真ん前に突然!
きっかけは、文化学園(大学院)での授業のあと、たまたま初台方面に用事があったので、目の前の甲州街道をいつもの駅とは逆に向かおうとした、その瞬間のことだった。新宿西口のビル群を背景に、真っ白い四角いハコ状のビルが目に飛び込んできたのである。
さっそく歩道橋を渡って確認。どうやらシェアオフィスのようだが、キッチンがあるぞ!と、スマホで撮影した外観の写真をSNSに投稿したところ、ファッション業界に特化した人材コンサルティング関連のベンチャー企業の株式会社READY TO FASHIONの高野社長が、その日のうちに繋いでくれて、取材させていただくことになった。
「“新宿ワープ(SHINJUKU WARP)”がオープンしたのは2018年11月5日です。1Fがキッチン付きレンタルスペースで、2Fと3Fはスタートアップ企業に特化したオフィススペースです」と取材に対応してくれたのは、同事業の責任者である株式会社ヒトカラメディアの事業開発チームの日比野亮二さん。
もともと人材系やメーカーなどでのキャリアをもつ日比野さんは、ある時、営業で地方の書店を巡っていたときに、同じまちの中でも、活気のあるところとないところがあって、昔は商店街が担っていた役目がいまはもっと別の“場”であることに興味を抱き、宅地建物取引士(宅建)を取得。同社に転職したのだそうだ。
「当時は、中古物件をリノベーションすることで人びとのライフスタイルが変わることに感動していたんですが、ふと、オフィスも住宅と同じようにリノベーションしたり、“場”のデザインを変えることで、そこにいる人たちの働き方も変わるのでは?!と思ったのが、弊社に入社したきっかけです。今までの不動産慣習を変えたい、”場”の運営の価値を追求したい、といった想いもあり、本物件を企画することになりました」(日比野さん)。
“ヒトカラメディア”って何?
運営元であるヒトカラメディアは、ベンチャー・スタートアップ企業を中心にオフィス移転や空間プランニングなどを行なうベンチャー企業。HPには、“「ただのオフィス移転」を「会社の成長の好機」に変える”とある。
つまり、オフィスの移転は、立ち退きなどの環境要因によるものを除き、事業拡大や組織変更、新規事業へのトライなどチャレンジングなケースが多いということに着目し、なるべく事業そのものに注力してもらうべく、敷金・礼金は無し、保証会社加入不要、連帯保証人なし、原状回復義務なし(除クリーニング費)と設定。レイアウトや内装、デザインなどの設計をストレスのない物件で、入退去をスムーズにしたというわけだ。
どんどん自ら進化する、ヒトカラメディア
「実は、本社を2018年10月に渋谷から中目黒に移転したばかりなんです」(日比野さん)。
同社の代表、高井淳一郎氏が起業したのは中央区銀座にあるコワーキングスペースだったそうだ。その後、2014年1月以降メンバーが続々増え、渋谷区神南に居抜きで借りて、自分たちでDIYし、居心地のいい空間を作り上げたのだという。
2017年には、チーム対抗でのオフィス物件提案社内コンペを行なったり、ワークショップを交えて空間プランニングを行なうなど、独特のデザインアプローチをし、順調に成長。その後、業務拡大を理由に同区桜丘町の約2.5倍の80坪のところに移転し、内装工事も自分たちで賄おうと別会社、株式会社ヒトカラ工務店を立ち上げ、初めて新卒採用をしたのだそうだ。
さらに、施設のプロデュース・運営をする事業開発チームやビルオーナー支援をする企画開発部が立ち上がり、物件を探していたところ、甲州街道沿いのこの物件に出会ったのだという。
「社内でいろいろディスカッションした結果、同社初となる1階と屋上のキッチン付きレンタルスペース、2、3階の内装付きオフィススペースによる複合施設、“新宿ワープ”の誕生となりました」(日比野さん)。
新宿駅からすぐの好立地、日当り良好、屋上アリ!
「新宿ワープ」は新宿駅から徒歩10分。地下道の出口からだと徒歩3分程度で、甲州街道沿いにあるビルとは思えないほど1日中陽射しが降り注ぐ貴重な低層物件だ。実は物件オーナーは京王電鉄だそう。
1階は天高約3メートル。壁面に設けられたベンチや木製のテーブルなど、着席で約20〜30名、スタンディングで30〜40名は入れる空間に、3〜4名は入れるキッチンスペースを併設。取材させて頂いた日も夜は同社主催の“カレーパーティー”を開催。それぞれが知り合いに声をかけることでいろんな業種の人たちが集まる、ユルいネットワーク・パーティーのような雰囲気になっていた。
「創業から6年。これまで約500以上のスタートアップ企業のオフィスをプロデュースしてきたからこそ、ベンチャー企業にとって、また起業家にとって本当に必要なオフィスとはどういうものなのか、ということを考えてこのような“場”を設けました。“働くをオモシロく加速させる=ワープする”ための場づくりに目下チャレンジ中です」と日比野さんは話す。
テレビとシームレス化するネットカルチャー
1階のスペースは、入居者らが主宰するテクニカルな勉強会やリサーチなどの他、つい先日は、「ワープde花見」」というインドア花見イベントも開催。リアルな桜の木を室内に配し、天候や場所取りを気にすることなく楽しめると、大勢の若者が集まり賑わい、NHKからも取材を受けたそうだ。実は、“室内花見”、“エア花見”は、今シーズンテレビでも話題だそうで、テレビやネットカルチャーがシームレスになりつつあるいま、誰もが気軽に参加できる場として“開いて”いきたいという。
とはいえ、スケジュールを見ると、キッチン付きのレンタルスペースは珍しいからか、けっこう予約でいっぱい! これからの季節、ビアガーデン風に“屋上でハッカソン・パーティー“などはいかがだろうか。
[取材/文:高野公三子(本誌編集長)]