定点観測
report : 2019 | 
08 / 03

#464 | 実施日 : 2019 / 08 / 03 | 最高気温 : 33.7 | 最低気温 : 25.7 | 天候 : 晴

トレンドは細部に宿る!

AI時代だからこそ、きちんと向き合って小さな変化に敏感に!
身体の部位からアイテムのパーツ解体&再構築へ。

2019年8月3日(土)、第464回「定点観測」は、「女性ロングスカート、うちフレア(シルエット)」、「フォトプリントTシャツ」、「変型トップス/肌見せ」の3つ。

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写真左から2019年8月渋谷地点のカップル、原宿地点のロングスカートとワンショルダートップス。

今月の観測テーマは、「女性ロングスカート、うちフレア(シルエット)」、「フォトプリントTシャツ」と「変型トップス/肌見せ」の3つ。

一気に盛夏。最高気温が35℃を越えるという予報のなか(実際には33℃前後だったよう)、凍った水を事前に配布しつつ、途中も水分やちょっとした食べ物も支給しつつ、ときどき冷房のきいたところで身体を冷やすなど、全方位的に注意をしながら、40年目、464回目の「定点観測」を実施した。

ちなみに、40年前の1980年8月9日(土)の第1回目は、最高気温27.2℃だったよう。当時は全員パルコの社員で実施していたが、1998年6月以降は、外部の学生さんや当時多かったフリーターの方、そしてフリーランスのフォトグラファーなどといっしょに実施するようになり、今ではすっかりそのスタイルが定着。ある種ワークショップのような、大学の特別授業のような、街やファッション、カルチャーのリアルに対しての自由な発想を受け止められるダイバーシティな環境だったからこそ、40年間継続することができたようにも思う。

そんななか、2019年8月のテーマは、カウントアイテムが、「女性ロングスカート、うちフレア(シルエット)」。ジームアップアイテムが、「フォトプリントTシャツ」と「変型トップス/肌見せ」とした。 
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写真左から、2017年7月、2018年6月、2019年4月、2019年7月。

ヒットトレンドがないといわれるなか、
実は、昨年よりもボリューム感がアップ!


2019年夏のマストレンドは? ということで、プレサーベイでは、遅れた梅雨明け以降急増した「ボリューム感のあるワンピース」が本命では、と編集部内では思っていたのだが、改めて路上で観察したところ、全体的に年齢層が高く、ティーンズはぐっと短い台形スカートにTシャツという由緒正しきアメカジ(GAP上陸時のような)ルックが目立ち、母(40代〜50代)がロング丈のワンピースで娘はミニスカートという組み合せも少なくなく、ロングもミニもどちらもボリューム化していることが確認された。

では、何をカウントアイテムにしようか、と前日まで観察を重ねたところ、年齢を問わず、今夏は(ワンピースに限らず)「ロングスカート」が主流で、しかもタイトではなく、軽めの素材で裾に向かってボリューミーに広がりを感じさせる「フレアのシルエット」のものが圧倒的に多いことから、「女性ロングスカート、うち、フレア(シルエット)」を今月のテーマとした。

過去の「定点観測」を振り返ってみると、実は昨年、2018年6月に、「女性ヒザ下丈スカート、うちフレア(シルエット)」というテーマで取り上げていたことが判明。その着用率は、3地点平均、大きい方が約19.5%で、フレア(シルエット)が14.7%と、既に約20%≒女性の5人に1人が「ヒザ丈スカート」を着用していた。

さらに遡ると、2017年の7月のズームアップアイテムで「女性ロングスカート」を取り上げており、この2年間でじわじわ増え、昨年の“ヒザ下丈”程度から“ヒザとくるぶしの中間よりも長め”で、裾に向かってボリューム感のあるシルエットの女性らしい/フェミニンなシルエットが主流になっていることが分かった。

プレサーベイ時は、去年とほぼ同じ「ヒザ下丈/ロングスカート」であることから、ヒットトレンドがない、メガトレンドがない時代=現状維持?とも思われたが、実査を終了してみると、インタビューさせていただいた方々のほとんどが2019年に購入した「ロングスカート」を着用しており、昨年との違いを尋ねると、今年はトップスをインしていたり、よりボリューム感のあるスカートを選んでいたり、ワンピースだったりなど、一見同じようで、実はユーザー心理としては大きく違いがあることも分かり、改めて、ミクロな視点を忘れてはいけない、という教訓にもなった。 

ということで、上の写真をご覧いただきながら振り返ると、
いちばん左の2017年7月のロングスカートの2人は、レースや花柄など華やかな印象を受けますが、翌2018年は大人の女性に、モードっぽいレーシーなロング丈レイヤードルックが浮上。その後、2019年春のデザイントレンチコート・ブームでは、たっぷりとしたボリューム感あるロング丈のものが主流になり、先月(2019年7月)になると、20代の若い世代にはミニ丈とのレイヤードによるロング丈スタイルも見られ、どうやら、今月のテーマ「ロング丈スカート」は、フレアパンツも含み、裾がバサバサするくらいボリューム感があることが、トレンドになっているといえそうだ。
 
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左から、2018年7月渋谷地点(C.E.のもの)、同原宿地点(海外通販)、2019年5月新宿地点(トローヴのもの)、2019年8月渋谷地点(Off Whiteのもの)。

アーティでストーリー性のあるフォトTは、
インスタ人気MAXの予兆?!

1つ目のズームアップアイテムはこちら。
 
毎月、「定点観測」が終了した後、関わったスタッフ(含アルバイトさん)は全員、基本的に事務所に戻り、当日の街のようすや街頭アイテム、インタビューなどからの気づきについてを記載する「考察シート」を記入することになっている。

そのシートに、「気になったアイテム」「これから流行りそうなアイテム〜」という項目があり、みんなの目による次のトレンドの兆しを記録している。

今回のズームアップアイテム①とした「フォトプリントTシャツ」は、2019年3月ごろから何名かのスタッフが注目アイテムとして考察シートに記載しており、以降、ずっとそろそろかな、、とプレサーベイ時にも何度となく検討を重ねて今月、満を持して(!)取り上げることとなった。

ルーツはメンズファッションのトレンドからだが、一方では、ユニクロWEGOギャル系ブランドセレクトショップのPBなど、毎年夏になると、国内外のアーティストとのコラボTシャツをリリースしており、その時のグローバルトレンドに合わせて、バンドTやグラフィックT、イラストTなどが街に溢れる、という現象がある。

「定点観測」を振り返ると、近年では、2016年6月に、「インパクトプリントTシャツ」として、ズームアップで取り上げているが、当時は派手なロゴやアルバムのグラフィックが前面にプリントされたバンドTや、アイドルのライブT、スラッシャーなどのスケーターブランドのデザインロゴT、さらには、メゾンキツネやホワイトマウンテニアリングなどが動物モチーフをあしらったものなど、着こなしの主役になるような楽しいデザインのものが多かった。

しかし、今回(2019年8月)は、風景や絵画を写真に撮ったもの、写真をベースにグラフィックがレイヤードされたものなど、アーティでストーリー性のある“フォトプリント(写真がプリントされている)T”が急増。地色は白か黒が圧倒的に多く、どことなくファッション雑誌の1ページのよう、というか、ひょっとしたら、インスタグラム/ストーリーともシンクロしている?という印象も受けた。
 
ということで、各地点のようすは、8月9日(金)未明に公開する速報をお楽しみに。

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左から、2017年6月新宿地点、2018年9月渋谷地点、2019年7月新宿地点、2019年8月原宿地点。

スポーツミックスからグラマラスへ。
トップスのパーツを分解し、再構築したようなデザインモチーフに注目。

2つ目のズームアップアイテムはこちら。

先月(2019年7月)のズームアップで取り上げた「トップスのレイヤード」の時も、ちょっと変わったデザインのトップスで肌は見せないまでも、下に着用したものとで“個性”を演出するようなスタイルが考察さたが、盛夏になり、直接肌を露出し/または、肌色とのレイヤード感を楽しむような、“変型トップスによるちょい肌見せ”スタイルが、セール後半になり急増したので、取り上げることにした。

「定点観測」を振り返ると、「ヘソ出し」や「ワンショルダー」、「ミドリフ丈トップス」、「ベアトップ」、「背中出し」、「肩出し」、「肌見せ」など、どちらかというと部位別に露出する流行があったが、今夏は身体というよりは、トップスのデザインがアシンメトリーになっていたり、チョーカー風のストラップが襟元にあしらわれていたり、鎖骨部分に割けたような切り込みがはいっているなど、“トップスというアイテムのパーツを分解してプレイフルに(遊び心がある)変形されたデザイン”のものが多数登場。着用する人も幅広く、ギャルからコンサバ層、大人の女性にも浸透している点が特徴だ。

着用した女性たちからは、「ヘソ出し」のようなヘルシー感よりも、“ちょっとイイ女”、“ちょいセクシー”な印象があり、半年前は主流だったスポーティ・ミックスから、全体的にグラマラスな方向へと、トレンドがシフトしているようすが伺えた。

そういえば、昨年、衣服標本家の長谷川彰良氏が主催する100年前のフランス革命~第二次世界大戦の衣服を分解し標本にした「半・分解展」という展覧会が話題になったが、今年は京都女子大学や香蘭ファッションデザイン専門学校、文化ファッションインキュベーションスペースなどでの展示も大好評。たくさんの人が集まっており、先日、BS朝日の番組「Fresh Faces 〜アタラシイヒト~」でも紹介されたようだ。
ということで、具体的なスタイルは8日(金)未明に公開予定なのでぜひお楽しみに! また、それぞれのアイテムについてはもちろんのこと、ライフスタイルやインサイトもわかるデプスインタビューは16日(金)未明に公開します!

[文責:高野公三子(本誌編集長)] 


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