夏の定番アイテムともいえる「サンダル」。今年は、アラサー以上の大人には、春夏からのリラックス感あるルーズなシルエットの服装に、あえてぺたんこ、フラットなサンダルで、“(セレブの)リゾート風”が主流となった。一方、20歳前後、またはティーンズの“ジェネレーションZ”には、おそらくスニーカーから履き替えたのだろう。真逆の厚底サンダルが大人気だった。
「定点観測」を振り返ると、今季の「サンダル」をめぐるトレンドの起点は、2017年ごろといえる。2017年6月のズームアップアイテムで「つっかけサンダル/ミュール」を取り上げ(写真左3点)ている。当時は、女性に限ってみると、①スポーツサンダルのカジュアル系と、②リゾート感(ヌケ感)あるエレガント系に二分していたと考察した。
その後、2018年は“デムナ旋風”が急伸。“郊外的、ファッションから遠い場所やもの”をファッションのど真ん中に提示し、“ラグジュアリー・ストリート”という名称で評価された“価値の大逆転”というトレンドは、メンズファッションから広く一般へと浸透。ゴリゴリ&ゴツゴツしたハイテク系スニーカーの大ブームをはじめ、「男子スニーカー、うちダッドスニーカー」(2018年3月)をカウントアイテムとして取り上げたのは記憶に新しい(写真いちばん左)。
その後、2018年5月に「女性厚底靴」という名称で取り上げた際には、一見ダサい(エレガントではなく無骨)けどアニメっぽいという文脈が加わり、厚底靴が大ヒット。その担い手がティーンズだったことから、「ミレニアル世代=ジェネレーションZ」のストリートでの存在がこの時期より顕在化していったと考察した(写真左から2番目)。
「足元」に絞って振り返ると、2018年春夏に大人気だったアンクル丈のブーツに加え、“スポーツ”というグローバルトレンドを背景に、“スポーツ×厚底ごつめサンダル”が大人気(右から2番目)になる一方、“ヴィンテージ”というグローバルトレンドを背景に、“脱スニーカー”の流れもあり、レザーで厚底×ブランドという観点から「ドクターマーチン」が若者たちのあいだで定番化。2018年1月のズームアップ・アイテムとして取り上げた。2019年3月には「ショートブーツ、うち黒いショートブーツ」として注目したが、その後、そのデザインがスポーツや厚底、ビンテージ感、フェミニン感など、いろんな要素がミックスされたMDが急増。春の「デザインが多様になり過ぎたトレンチコート」を思い出すが、行き過ぎるとその揺り戻しが起きるのが流行の本質でもある。
そんななか、着用率が女性の25%を上回った(=かなりの浸透率)先月(2019年8月)の「女性ロングスカート」に該当する女性の足元を改めて見てみると、ソールがフラットなサンダルが多いという共通項が目についた。同時に、実際に佇み、編集部員全員で路上でプレサーベイを行なったところ、以下の理由から、フラット/ぺたんこのサンダルを履く女性が今シーズンは量的には多いのでは、という考察となった。
①スカートの丈が超ロングになっており、見せられる足元のそもそもの面積が小さい
②ロングスカートにヒール靴を合わせるとフェミニンになり過ぎる
実際のストリートのようすは、こちらをご覧いただくとして、今夏の女性のサンダルは、以下の2つのトレンドが併走していたことがわかった。
①量的にはフラット/ぺたんこサンダルが多かったが、アラサー以上の大人のハズしとして着用されていた。
②ティーンズ/20歳前後の若者=ジェネレーションZには圧倒的に厚底サンダルが人気だっった。
同じアイテムに2つのトレンドが併走している状態、しかも支持する層の違いがジェネレーションであることが意味するのは、“大きなトレンドが終わりを迎えていて、次の新しいトレンドが若者たちから始まってる”=トレンドの転換期。2020年は新しい価値観の台頭=モードが動く、そんな時代といえそうだ。
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