こんなときだから、創意工夫で前向きに!
レポート
2020.04.03
ファッション|FASHION

こんなときだから、創意工夫で前向きに!

(Rakuten) Fashion Week Tokyo 2020AW ②
それぞれのスタンスで取り組む新作発表。

動画やfacetimeなどの新しいコミュニケーションツールを取り入れるなど、
“コロナ・ショック”をきっかけに変化する時代を模索中。

日々状況が変化するコロナショックの影響に翻弄された2020年3月。オリンピックの延期が決定した直後の週末(3月28、29日)、大規模小売店だけでなく、小規模なショップやブランドの展示会なども閉廊を余儀なくされた。そして、4月4、5日、さらにその次の11、12日も、ひょっとして“緊急事態宣言”が発令されたら平日も?と、先が見えない、心理的にも物理的にも緊急な状態が続いている。

しかし、こんなときだからこそ、創意工夫をして新しい試みを取り入れるデザイナーも少なくない。

HYKE(ハイク)THE RERACS(ザ・リラクス)FORSOMEONE(フォーサムワン)mintdesigns(ミントデザインズ)NEGLECT ADULT PATIENTS(ネグレクトアダルトペイシェンツ)APOCRYPHA(アポクリファ)などが、先の記事で紹介した「無観客ファッションショー」を実施した。

『WWD JAPAN』の2020年3月30日号でも、「東京デザイナーはくじけない」と題した特集を掲載していた。

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ショートフィルムを制作するブランドも。

都会的なミレニアル世代の女性服として定評のあるSTAIR(ステア)やモノトーンでデザインされた日常服を提案するMITSURU OKAZAKI(ミツルオカザキ)、今回初めてインスタレーションスタイルでの発表を予定していたkaiki(カイキ)などはショートフィルムを制作。それぞれ、東京ファッションフィルムでも公開されるほか、YOUTUBEでも公開されている。

ルックブックを動画に切り替え、配布するブランドも少なくなかった。あえてスローモーションにしてディテールを披露するなど、動画による表現の多様化は、
展示会を訪問できないバイヤーやプレスに向けても新しいツールとしての可能性も感じられた。
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2020AW/kaiki(TOKYO FASHION FILMよりキャプチャ)

hatraは、展示会真っ只中で週末が閉廊に。
オンライン受注会やARビューも!

いつも未来のファッションの方向性を指し示してくれてワクワクする、ブランド、hatra(ハトラ)はギリギリのタイミングで展示会を開催。今回1つのキーとして披露されたのは、現在慶應SFCの博士課程に在籍しつsynfluxという会社の代表も勤める川崎和哉さんのチームとのコラボ企画、アルゴリズミック・デザインのプロジェクト。200万枚のトリの写真を「GAN」というアルゴリズムを用いて、200万枚排出された中からデザイナーの長見さんがチョイス。3Dのアバターに配置しながら最終的にはたったの4つのニットアイテムに採用され、幻想的かつ永遠に見つめていられる自然界が作ったトリの羽の色や柄のエレメントが再配分されたhatraらしいニットに仕上がっていた。

さらに、「今季は今まで貯め込んでいたものをいくつも盛り込んでいます」と長見さんが言うように、初のダウンを用いた独特のアウターやシルエットがシャープで美しいジャケット&スカート、パンツなど、見どころ満載。さっそく百貨店でのPOPUPのお話もあったそう。

小池百合子東京都知事「感染爆発 重大局面」による外出・移動自粛要請を受け、週末は閉廊。代わりに、会場をスキャンし、トワルと共に3D画像をSNSで公開。それぞれの商品画像はデータでやり取りできるが、この時期のバイヤーさんたちの“会場に行く”というリアルな行為へのハードルを下げていた。

さらに、4月2日から12日までオンライン受注会を開催。「展示に負けじと充実した内容担っています」(長見さん)とのこと。一部、iPhoneでも動くARビューもあるのでぜひアクセスして欲しい。

https://hatroid.net/
hatra
2020AW/hatraは、4月12日までオンライン受注会を開催している。

ビッグメゾンから手作りまで。
「それぞれのできることから」で広まったフェイスマスクは、
ファッションの新アイテムに!

「ファッションを通じて自分たちが出来ることをやろう!」と、楽天ファッションウィークのショー会場として予定していたワールド青山ビル前にて、通行客に手作りマスクの無料配布を行ったのは、古着や残布をアップサイクルするブランドSREU(スリュー)」。ディレクターの米田年範さんとデザイナーの植木沙織さんは、「本当に単純で、周りからマスクがないってよく聞いていたので、だったら!という感じでしょうか。僕も植木も北海道出身というのもあります!」と話してくれた。

 

一方、実用性と普遍性をもった道具としての服を提案しているアパレルブランドall yours(オールユアーズ)」は、50回洗っても効果が持続する抗菌・消臭マスク「キテテコマスク」202034日より販売。同時に、誰もがDIYできるようにと、型紙と作り方をウェブ上(note)に公開している。手作りマスクについては、Eatable of many orders(エタブルオブメニーオーダーズ)もSNSで作り方を紹介。自粛ムードを“ファッション“の身近な楽しみへと転換していた。

 

マスクの製造に関しては、OFF WHITE(オフホワイト)サンローランバレンシアガなどのビッグメゾンや、GAPやメジャーリーグのユニフォームなどを手がけるファナティクスなどが名乗りを上げており、国内のアパレルメーカーでは、先日ファーストリテイリングが医療用マスクを中国の自社取引先工場から100万枚調達し、医療機関に寄贈するという。

2020AW/SREU(スリュー)は、ショーを披露する予定だったワールド青山ビルの前で急きょオリジナルマスクを製作し、無料配布した。モデルたちが着ているのはブランドの新作。 (写真:石本遥路)
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allyours(オールユアーズ)による滋賀県高島産キテテコ素材使用したマスク。作り方はnoteで丁寧に解説されている。

“Tirami su(ティラミス)”=私を元気にさせて!
こんなときだからこそ、既存のしくみに囚われないチャレンジを。

ショーとほぼ同じ準備、スタッフで制作したコレクションの映像をDVDで関係者に送付したのはsupport surface(サポートサーフェス)だ。

デザイナーの研壁宣男さんは、もともと中国における重要なビジネスパートナーが武漢であったり、長年生活していた地であり、同ブランドが多く採用している生地の産地であるイタリアの状況に落胆しつつも、「ショーの開催は最終目的ではありません。ショーは新作発表会(中略)。“Tirami su(ティラミス)”の意味のように“私を元気にさせて”くれるような力を持った服を作っていきたい」と話す。

と、ここまで書いていたら、「ひとつの住所にマスク2枚を送付する」(!?
)という現政府の方針が報道され、一気にSNSを賑わした。

一方、独自の戦略やいろいろな事情も重なって、
KEISUKE YOSHIDA(ケイスケヨシダ)や、今シーズンよりfeifei(フェイフェイ)からレーベルを分けてデビューしたDAUGHTER(ドーター)HOUGA(ホウガ)など、4月に展示会を開催するブランドも少なくない。
 
そんななか、本誌でも昔取材させていただいた、東京・代々木上原の人気個性派セレクトショップのDELTA(デルタ)では、ご予約いただいた方に店内を貸し切りでショッピングすることができる「PRIVATE SHOPPING 」と、ショップがお宅までいくつかのアイテムをセレクトして出張するサービス「CARAVAN SALES」をスタート。

「ご自宅にいながらにしてFaceTimeやミーティングアプリ等を使いご対応させていただく事も可能です」(デルタ)という!

日々状況が変化し、予断を許さない状況のなか、例えば、リモートワークの急速な浸透であっという間に一般化したZOOMTeamsfacetimeなどのコミュニケーションツールを取り入れるなど、発表・披露の方法だけでなく、ビジネス、コミュニケーションのスタイルも変化していきそうだ。

そして、何より、“わたしたち”のカンカク、働き方や生活、価値観、そしてファッションも大きく変化する、そんな過程にある2020年春を実感する。

次回は、「#Save Oure Spce」や、「origami prodaction」など、音楽を巡るソーシャルアクションをいくつか紹介したい。

[文責:高野公三子(本誌編集長)]

supportsurface(サポートサーフェス)はショートフィルムを発表。その背景にある“決意“は深かった。
代々木上原の人気セレクトショップDELTAは、facetimeや各種ミーティングアプリなどを積極的に取り入れてオンラインショッピングを補完しており、ユーザーに喜ばれている。


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