6月1日、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)対策のために発令された緊急事態宣言が解除され、多くの施設やサービスが営業再開しましたが、2日未明には「東京アラート」が発令となりました。その後、7月5日の東京都知事選終了後からは感染者数が急増。7月中旬以降には連続して感染者数200人超えを記録しました。最近では専門家や自治体などからも懸念の声が相次いだ「Go Toキャンペーン」の対象から東京発着の交通機関を除外することが発表されるなど、政治も混迷を極めています。
相変わらず日々状況が変化しているなか、2020年春に行ったファッション・カルチャーの研究プロジェクト「COVID-19禍における若者の消費行動とインサイト」インタビューを公開中です。
「ACROSS」編集部のアルバイトOGで現在ファッション業界にて活躍する人たちを対象にオンラインでインタビューさせていただいた“ファッション業界人編”、5人目は、某ファッションマーケティング会社勤務のEさん(28歳)。
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・28歳・某ファッションマーケティング会社勤務
・インタビュー日時:4月22日(水)18:00-20:00
・インタビュアー:高野、大西/zoom利用
生活空間と仕事空間が一緒はキツいと感じるときもあります。
やっぱり切り替えが難しい。
Q(「ACROSS」編集部、以下Q):改めて、今のお仕事の内容についてと、在宅ワークになってからの変化とかありましたら教えてください。
Eさん(以下、E):当初は7時~15時、あるいは8時~16時の時短勤務にするというのが会社の対応だったんですが、3月末に管理部門以外が基本在宅ワークになって、社内の人間が通常の20%くらいになりました。3月下旬には社食のサラダバーとかも閉鎖になって弁当に変わり始めたり、海外出張から帰ってきた社員は2週間隔離フロアみたいなところに出社したり。1月に中国に駐在していた社員はオフィスに来るなという指令も出てましたね。私も3月最終週から在宅中ですけど、決算の関係で週1回くらいでオフィスに出ることもあります。先週は1回行きました。
Q:実際に在宅ワークしてみて、どうですか?
E:生活空間と仕事空間が一緒はキツいと感じるときもありますね。やっぱり切り替えが難しいので。会社に行くっていう行為がモチベーションにつながっていたんだなと思ったりもします。カフェでもいいけど、なにか切り替わるタイミングが欲しいです。というか、そもそも在宅ワークができるような部屋じゃないんです。当初はシューボックスをローテーブルの上に積んで、その上にPCを載せていました。3段積んだところにPCで、2段積んだところにマウスみたいな。さすがにつらくて、楽天で簡易的なデスクを買いました。ベッドに座ってPCが置けるような。
Q:病院のベッドみたいなやつですよね?(笑)
E:です。でもあるなしじゃ全然違いますね。友人がインスタのストーリーで「これいいよ」ってあげていたのを見たのがきっかけです。でもそれが売り切れてて、仕方なくもうちょっと小さいやつを買いました。腰も前よりは楽になりました。ただ通っていた整体に行けないのもしんどいですね。
Q:じゃあオフィスで仕事する方がEさん的にはよかったいうことですね。
E:はい。環境のこともそうだし、お客さんともミーティングはしづらいです。既存の仕事はできますけど、新規営業を画面越しでいくわけにもいかないですしね。数字とかのミーティングなら何の問題もないんですけど、たとえば各地の産地の方とか、やっぱりみんながみんなテレワークの体制が整っているわけじゃないので。あと社内でも、同じ部署の人に“ちょっと相談”みたいなことができないのもあんまり。
外に出ないと洋服着るモチベーションは下がりますね。
在宅ワークのときは“楽”が先にきちゃいます。
Q:今日、いまのファッションについて教えてください。
ニット/マラミュート/2020SS展示会/2019/秋/約30,000円
パンツ/アンスリード/アンスリード/2016~2017年/約20,000円
ルームソックス/-/-/2018年頃/300~500円
リング/テン
リング/クロムハーツ
リング/ラミエ
ピアス/ソムニウム/ヒカリエ/ポップアップ/渋谷/10,000円
E:基本的に会社に行かないと、というか外に出ないと洋服着るモチベーションは下がりますね。もともと会社に行くときには、ちょっとがんばりたいとか、「こういうところに打ち合わせ行くからこれを着よう」とかあったので。在宅ワークのときは、もちろんミーティングがなくても着替えてはいるんですけど、“楽”が先にきちゃう。そもそも部屋が在宅ワークに対応していないので、そんなところでちゃんとした洋服着ようなんて気分にならないんです。だから上はちゃんと着るけど下は部屋着の日もあります。ユニクロで買った、外に出られるようなスウェット生地のパンツ。そのままでもコンビニくらいは出かけます。上にはファセッタズムのパーカーとかノースフェイスの古着を合わせてますね。でも足元には今日もはいてるルームソックスが見えちゃってたり(笑)部屋ではユニクロで買ったスヌーピーのスリッパもはいてます。
Q:では、今日みたいミーティングがあるときはどんな感覚で服を選んでいるのでしょう?
E:オンラインのミーティングは週に2~3回あったりするので、化粧して、髪も整えて、普通に会社に行く程度の洋服を着ています。でも家で絶対デニムははかないですね。ただでさえ腰が痛いのに、圧迫感が。デニムは外着のイメージが強くて。
近所にお出かけするときにはいているサロモンのスニーカー。
これだけ家にいるとルームウェアくらい新しいもの買わないと気分が上がらない。
多少値が張ってもパジャマとして気持ちよくて見た目も気分が上がるものが欲しいです。
Q:なるほど。メイクとかはどうしてらっしゃるんですか?
E:ミーティングがある日とない日では全然違います。ある日は服と同じで会社に行くときのようにちゃんと化粧してるけど、ない日は薄化粧。でも外に出られるくらいはしてます。そもそも会社に行くときもメイクは薄いですけど。あと在宅のときは外に出るといってもマスクをしてるので、リップはミーティングがないときにはつけません。アイラインは日によって気分ですね。自分のモチベーションが上がっているときは引きます。眉毛はいつ何時でも描いてます。化粧の時間自体は、10分かければ長いくらい。
Q:ヘアサロンはどうしていますか?
E:髪型も常にこんな感じです。結ぶこともなく、いつも会社に行くときと同じようにオイルをつけるだけ。ミーティングがあろうとなかろうと同じです。いつも美容室に行くペースはパーマとかカットのタイミングで2か月に1回くらい。でもいまは行けてないのですごく行きたいです。この前、我慢できなくて前髪を自分で切りました。普通のハサミで。通っている美容室はもう営業してはいるけど、どうしようかなと悩みつつ行ってない状況です。
Q:こんな状況ですが、オンラインで服とか買ってらっしゃいますか?
E:まだ買ってないんですけど、ルームウェアが欲しいと思ってちらほら見てます。こんだけ家にいるとルームウェアくらい新しいもの買わないと気分が上がらないなと。ジェラートピケの素材が結構好きなので見てたり。さすがに楽天で部屋着を調べたらイケてなくて、すぐやめましたけど。ほかにも、タオルと部屋着をやっているテネリータというブランドを見たりとか。布帛とかコットンではなくて、着ててすごく気持ちいみたいな素材のものを探してます。パジャマとして気持ちよくて見た目も気分が上がるもので見ているので、多少値が張っても仕方ないかなと思っています。インスタで探したりもしますね。だいたい動線としてインスタは1回経由してるかな。あとルームウェアをネットで検索してると自動的にインスタに上がってきたりするじゃないですか。そういうところから乗せられていくこともありますね。
自粛期間中は毎日「どうぶつの森」。
現実世界は外に出られないし、安心安定なもうひとつの世界を持ってるってイメージです。
Q:その他、COVID-19(新型コロナウィルス)禍になって以降、これまでの生活と変わったことはありますか?たとえば食生活とか。
E:自炊も増えたけど、休みの日とかはテイクアウトで買うことも増えましたね。週末はだいたい彼氏のところにいるんですけど、その近くにもともと行きつけの居酒屋があって、そこがテイクアウトを頑張ってるので、散歩に行くタイミングでテイクアウトしたり。自分で作るのもいいけど、今度はそれに飽きてくるじゃないですか。なので、いまはそのテイクアウトが週1の楽しみになってます。お店の人たちとも仲がいいから、また今日も来てくれたって話になるし。自分で作るよりはお金かかるけど、全然いいかなって。
Q:オフの過ごし方などに変化はありましたか?
E:もともとニンテンドースイッチ持ってたんですけど、週末が外出自粛になる前に駆け込みで「どうぶつの森」を買って、それから安定的に毎日やってます。私の周りはだいたいやってますね。楽しいんですよ、これがまた。結構洋服のバリエーションとかもすごいんですよ。自分が着たいような服を着せたり、ガンガン髪染めたり(笑) いつも挑戦しようと思ってもできない色にしてます。いまはまっ金金。ちゃんと24時間、現実世界と同じような時間が流れているので、ログインして村のみんなとコミュニケーションをとって、雑草が生えてたら抜いて、みたいな日常があるんです。自分の生活をするように、動物の世界にも顔を出してます。現実世界は外に出られないし、安心安定なもうひとつの世界を持ってるってイメージです。コロナ生活の中では大きいかもっていう存在ですね。あとはNetflixも観ています。『グータンヌーボ』とか『テラスハウス』、あと『相席食堂』のアーカイブとか。
Q:「どうぶつの森」、すごい人気みたいですね。
E:スイッチ本体もメルカリで倍額になってたりするくらい人気みたいです。メルカリといえば、在宅になってから割と断捨離みたいなことをしてますね。これまで出品しようか迷って溜めていたものを、出すものは出しめんどくさいものは捨てるという。今月頭くらいには結構捨てました。これまでは家にいる時間が今と比較したら全然なかったので、余裕もあるし、家にいるとやっぱり家をきれいにしてもうちょっと環境よくしたいって思うようになって。カルヴェンのスカートとか、とっておいてあった古着とかも捨てましたね。いまはシューズとかも含めて5~6着出品中。でも、メルカリはいまちょっと売れ行き悪いですよ。人から宅配を受けたくないとかもあるのかも。
Q:メディア接触などで変わったことはありますか?
E:インスタはもともとめちゃくちゃ見ています。あと、在宅になってからは仕事中にラジオを聴くようになりました。Tokyo FM。テレビよりラジオのほうが心地いい。ほかにはサカナクションの山口一郎さんのインスタライブもいつも見ていますね。一般人とつないで話すのがおもしろい。なんか昔のラジオみたいで心地いいんです。
なんかこの期間によく考えているんですけど、自分ひとりの時間に自分と向き合える人がうらやましいなって。わたしは何かに飛び込んだり行動したりが先に来るタイプなので、動けないからまず考えるという状況が苦手なんですよね。だから人に何かを発信できる余裕のある人がうらやましいです。たとえばニット作家の蓮沼千紘さんとか、適度な生活感を出しつつニットの動画も上げていたりして。コロナになってからは特に見てますね。「すごい部屋キレイ!」とかインフルエンサーみたいなのじゃなく、心地よく自分の生活があるのがいいなと。
いまの仕事だけがすべてじゃない。
“仕事の次”のようなことがきっとあるのかなと思います。
Q:最後に、「ポストコロナ、アフターコロナ、ウィズコロナ」について、どのように考えていますか?個人的なことでも何でも構いません。
E:いまの仕事だけがすべてじゃないというか、普段会社にいると目の前にあるタスクに追われて走り抜ける感じでやってきたけど、自宅で働いているとそういうことが気になってきます。具体的に何がということではなく、“仕事の次”のようなことがあるんだろうなあと。自分のライフプランじゃないけど、どういう風に生きていくのがいいかと思うようになりましたね。仕事ベースで行かなくてもいいのかも、とか、とにかくいろんな選択肢があるんだろうなって思います。