定点観測
report : 2020 | 
08 / 01

#475 | 実施日 : 2020 / 08 / 01 | 最高気温 : 31.8 | 最低気温 : 21.8 | 天候 : 晴一時曇

8月は、気が付いたら経年変化していた“バランス感“と、
気分だけでも、“GO TO バカンス“のサマードレス。

2020年8月1日(土)に実施した、「475回定点観測」の考察レポート。

あっという間に8月も最終日。今週土曜日、9月5日は通算476回目の「定点観測」を実施する日になるが、その前に、いろんな意味で転換期となった8月の「定点観測」の考察レポートをお届けしたい。

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左から、カウントアイテムとした「女性トップスイン・スタイル、うちパンツイン・スタイル」と「男性トップスイン・スタイル」、いちばん右は「サマードレス」。カラフルなスタイルも増える中、ミレニアル世代はモノトーンも目立った。

「ACROSS」編集部のストリートスナップ&インタビューは、よくあるおしゃれスナップや自撮りSNSなどとは違い、実査前日までに編集スタッフ全員が実際に街を観察するプレサーベイから“今月のテーマ”を策定。該当する人たちを軸に街を観察し、撮影し、インタビューさせていただくというスタイルで行っている。

8月は1日が第1土曜日。前日の7月31日は、COVID-19(新型コロナウィルス)の新規感染者数が463人とそれまでの最高になった日で、やや緊張感がある一方、ちょうどお昼直前に梅雨明けが発表になり、本当に長くて憂鬱だった梅雨空が嘘のような眩しい日差しと清々しい青空が広がった。

観察するテーマは、「女性トップスイン・スタイル、うちパンツイン・スタイル」、「サマードレス」、「男性トップスイン・スタイル」の3つとした。では、順番に見ていこう。

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左2点は、2003年7月に「男女男女の下げ履き」というテーマで取り上げた時の写真。90sとは違う、デザイナーによる奇抜なデザインが施されたパンツを腰で履くスタイルが流行。/右3点は、2020年夏のジャスト〜ハイウエスト気味にトップスをボトムスにインするスタイル。経年変化する全身のバランス感が今回の流行のポイントだ。
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今夏はノースリーブもかなり多い。ジャストウエスト〜ハイウエストの流行で、じわじわトップスのコンパクト化も進行中。

カウントアイテム:女性トップスイン・スタイル、
うちパンツイン・スタイル
きちんと感と脚長効果のネオ90sスタイルの台頭。

今どきのメインのトレンドを意味する「カウントアイテム」は、「男性/女性白Tシャツ」(6月)「ペールトーン・カラー」(7月)と2ヶ月続いてカラートレンドに注目してきたが、8月は、いろいろ検討した結果、気がついたらすっかり一般的になっていたトップスをボトムスの中にインする“スタイル”のトレンドに注目。記録することになった。

どういうことかというと、下の左2点の写真を見てほしい。これは、2003年7月の「定点観測」で「男女男女の下げ履き」というテーマで取り上げた時のもので、ウエストの位置〜ヒップがズルッと下の方に下がり、おそらく大人からすると「だらしない」と言われてしまいそう、かつそのニュアンスからは、「ラフでカジュアル」、「若者っぽい」、「ストリート感」といったキーワードが感じられるのではないだろうか。

それが、2020年夏は、右の5点の写真のように、トップスがウエストを境にコンパクトに分断されていて、さらに、パンツは股上が深めのハイライズになっていることがわかるだろう。

「タンクトップにをインするようになったのは5年前くらいからです」と話してくれたのは、25歳のアパレル企業で働いている女性(https://www.web-across.com/observe/p7l75600000425yb.html)。ネットで買った「アントマリーズ」の黒いタンクトップをお母さんからもらったという黒パンツにインした全身真っ黒コーディネートは、モード系を好むミレニアル世代に人気のスタイルだ。

また、「スタイルをよく見せるためにタックインしています」と話してくれた19歳大学生は、シャツは2017年に古着屋さんの「Kinji」で買ったもので、インしたパンツは2020年6月に買った「GU」のものだった(https://www.web-across.com/observe/p7l756000004260p.html)。

着用されている印象は、きちんと感、ボディコンシャス、そして、着る側のマインドとしては足長効果というのもありそうだ。アイテムやパーツ・ディテールのデザイン、カラー、スカートやパンツの丈やシルエットにとどまらず、総合的に見た“バランス感”も経年変化する、というわけである。

そういえば、ちょうど先日ZOZOとZOZOテクノロジーズが、同社のファッションコーディネートアプリ「WEAR」に投稿された直近6年間の写真データをAI解析し、トップスの丈が2018年に短めのピークとなり、それ以降は「長め」と「短め」の2極化が進んでおり、ボトムスは2015年から徐々に長くなっている、という考察レポートを発表していた。

なお、「定点観測」では、過去40年分の全アイテム一覧を、こちら(https://www.web-across.com/observe/cnsa9a000000wpq4.html)からご覧になれます。

また、「アイテム別」→「スカート」とすると、過去のスカートの一覧もこちら(https://www.web-across.com/observe/d6eo3n0000039kb5.html)からご覧になれます。

*渋谷、原宿、新宿各地点の「女性トップスイン・スタイル」はこちらからどうぞ。
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布の分量たっぷりで丈も長く女性らしいのが2020年のサマードレスの特徴だ。中には、+レースアップブーツで90sのグランジ・ルックの再来?!と思われるようなスタイルも登場。
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ティーンズには、古着ミックスのレトロなワンピーススタイルも登場。ハリーポッターやポワロなど欧米のドラマに登場するようなエレガント感、お嬢様感がポイント。

ズームアップアイテム①:サマードレス
憂鬱な気分を噴き飛ばせ!
気分だけでもGO TOリゾートに。


1つめの「ズームアップ・アイテム」は、7月後半から街に増えてきた、「サマードレス」を取り上げた。

実は、自粛期間、5月に実施した「オンライン定点観測」の時にも何人か女性が「今夏欲しい、着たい」と話していたサマードレス。その時のインサイトとしては、自粛と対峙するような開放感ある夏のバケーションへの憧れからのイメージだったといえそうだ。

その後、昨年よりも長かった梅雨の憂鬱さを吹き飛ばすような青空が広がったこの日、一気に街に溢れていたようだった。

「サマードレス」の定義は、裾がたっぷりとしていて分量感があり、ドレッシー=ドレス調、女性らしいデザインのワンピースといったところだろうか。毎夏、猛暑期になるとある程度増える女性のワンピースルックだが、今夏は特に丈が長めである点がポイント。シャツワンピースやカットソー、薄手のガーゼのようなカフタン調のものなどはパンツやスカートの上に重ねるスタイルも見られる一方、背中が大きくあいたリゾートで着用するような大胆なデザインのものも散見された。

また、アーバンリゾート感溢れるサマードレス以外では、Tシャツやカットソーなどとレイヤードし、足元にハイカットスニーカーやレースアップブーツなどを合わせる、90s初頭に見られたグランジルックのようなスタイルをする女性も見られた点にも注目しておきたい。
 
*各地点の「サマードレス」はこちらからどうぞ。
 
 
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ズームアップ・アイテム②:男性トップスイン・スタイル
浸透する若者のきちんと感。
重要なのはトータルバランス。


さて、2つめのズームアップアイテムは、先述した「カウントアイテム」の男性版ともいうような「男性のトップスイン・スタイル」とした。

数としては女性ほど多くはないが、ハイライズデニムフレアのパンツをジャストウエストで着こなす70sっぽいスタイルワークパンツをモノトーンでモードっぽくアレンジしたものなどいろんなトップスイン・スタイルが散見された。

「ズボンのAラインが見えるのがおしゃれなので上下だぼっとインします。ピシッとしてきれいめスタイルが好きです」
と話してくれたのは大学3年生の彼https://www.web-across.com/observe/p7l75600000426hf.html)。90s〜00sのズルッと重心を下げて履いた下げパン時代とは異なる、“きれいめスタイル“が好きという点もポイントだが、パンツではなく、ズボンと発言していた点にも注目しておきたい。

渋谷パルコに勢いよく入って行く高校生の男子3人組のうちの1人https://www.web-across.com/observe/p7l75600000426m7.html)は、
「インするかどうかはTシャツのシルエットや柄次第です。オーバーサイズや柄が大きいTシャツはインしません。ぴったりサイズやワンポイント柄のTシャツはインしやすいです」と話す。

実は、家を出た時にはトップスを途中まで出していたけど、途中でトイレに行った時に柄とのバランスを確認し、インしたと話してくれた。

原宿でインタビューさせて頂いた20歳の会社員の彼https://www.web-across.com/observe/p7l756000004272x.html)は、
「基本トップスはインしますが、インするときにTシャツが出る感じを意識しています。ズボンの素材がきれいめなものは上にあげて、ストリート系はゆるく着ます。ベルトの締め具合で印象を変えたり、トップスが生きるデザインのときはインしません」と言う。

女性とは異なり、トップスのサイズ感や柄などに合わせて、インしたり出したりなど全身のトータルバランスが重要なポイントになっているようすが伺えた。
 
*各地点の「男性トップスイン・スタイル」はこちらからどうぞ。
https://www.web-across.com/observe/p7l75600000424jz.html
 
[文責:高野公三子(本誌編集長)]



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