第2部は、モデレーターの佐藤亜都さんと主宰の篠崎さんも加わってのQ&Aセッション。
●佐藤さん: 島田さんにお伺いしたいのですが、ご自身で発案して立ち上げたとのことですが社内を説得するのにポイントになったところはどこですか?
・島田さん:実は、直属の上長ではなく、経営層・役員クラスの実際に会社を動かしている人に直接説明をしに行くというやり方を取りながら、全社を巻き込んで説明していきました。「やりたいことをさせてもらえなくなったら、もうここにいる意味は無い!」というほどの意気込みで、熱い想いをぶつけたという感じです。
●佐藤さん: 現在はお洋服が中心ですが、今後どんなループを作っていきたいと思いますか?
・橋さん: 衣食住を扱う百貨店だからこそできることがあると思っています。例えば、食料品のフードロスの対策は可能性を感じています。他には、子ども服。商品以外ですと、例えばギフト包装の資材などの“ゴミになりがち“なものはどんどんループできると思っています。今まで、大量に仕入れて大量に売って、大量廃棄に少なからず加担してきた百貨店だからこそやらなければダメですし、やる責任があると考えています。
●佐藤さん: 今まで百貨店に足を運ばなかった若年層も好きそうな素敵なビジュアル。購入の際に缶に入れてくれるのも新鮮です。ラボグロウンだからこそできるという点で、例えば斬新なカットとかできるのでしょうか?
・島田さん: MOONシリーズでのハーフムーンという半分にカットしたものなど、技術的には天然もできるのですが、価値が落ちてしまうから皆さんなかなかしづらい。ラボグロウンだからこそできるファンシーカットは特徴にしていきたいです。今まであったデザインを、ダイヤだけラボグロウンに替えました!ではダメで、新しい価値を作っていくという意味でも、ラボグロウンならではのデザインを提案していきたいと思っています。サステナブルでもデザインが良くないと買ってもらえないですからね。
●佐藤さん:最近、男性もパールのネックレスをつけていて、ジュエリー業界に新風が吹いている気がしています。エッジィなデザインだから、"メンズパール"のように、”メンズダイヤ”を切り拓いてほしいと思いました。
ところで、「サステナブル」というキーワードを掲げるにあたって、正しい情報(FACT)の提供だけでなく、お客さまからエモーショナルな部分の共感を得るための具体的な施策などあれば教えてください。
・島田さん:難しいですね。デザインを気に入ってもらうしかない気がしています。認知度をあげて付加価値をつけていったり、例えばそのブランドを持っていること自体に価値を感じてもらえるようになっていけば良いなと思いますね。将来的にはモノを売るだけではない社会貢献という輪も広げていきたいと考えています。
●佐藤さん:橋さんはどうですか?
・橋さん:僕もすごく難しい質問だなと思いました。もっとお客さまとのコミュニケーション手法を考えなければならないな、というのは社内でも課題になっています。会社として、ESG云々ではく、距離を縮められるメッセージが必要。松屋さんと違いオリジナルブランドではないから、協業してもらうデザイナーさんから想いを伝えてもらったり、もっとアイテムや素材を増やしていくことを考えると、“再生する服”に興味のない人にも関連するものの拡がりを作れたらということも考えています。お客さまの参加型のプロジェクトだからコミュニティ化して何かができたらエモーショナルな共感が得られるのでは?と考えています。
●佐藤さん:自分が預けた服が別のものになったとか可視化できたら、参加している感じがして面白そうだなと思いました。
視聴者からの質問も多数寄せられました。
●(島田さんへの質問)
サステナブルなブランドとしての、お客さまが共感するセールストークはありますか?
・島田さん:ラボグロウンについての説明は必ずしています。天然だと思って買ったのに!と万が一、お客さまが勘違いしていたら大変なことになりますので。日本製で職人の技術が詰まっていることや、お客様それぞれの関心事項(デザインなのかラボグロウンなのか)に寄り添った説明を心がけています。
●(橋さんへの質問)
ポリエステル以外の素材の服が集まってしまう場合どうしているのですか?
・橋さん:実際、相当数集まります。フローとしては、暑かった服は全て日本環境設計さんにお送りします。その後、ポリエステル製の服は日本環境設計で再生ポリエステルに、それ以外は協業しているリサイクルパートナーさんにお渡しし、適切にリサイクルしていただきます。どんな商品・素材が集まっても対応できる仕組みをつくりたいと思っています。
●(2人への質問)
お2人の考える百貨店の強み、今後のあり方はどのようにイメージされていますか?
・橋さん: 我々がこれまでやってきたことは、未来の生活・文化の提案。これが得意なことにあたると思います。世の中の動きに応じて必要なものが変わってくるので、そんなお客様の変化を見逃さず、あたらしい生活に必要な提案をし続けることが、ぼくら百貨店の強みになるのかと思います。今後は「店舗の魅力を高めることしかない」ここにつきると思います。基本の品揃えを見直す必要がもっともっとあるなと認識しています。
・島田さん: ずっと僕らも考えていることで、まずはリアル店舗の楽しさを伝えながら、オーバーストアな中で生き残ることが必要だと思っています。しかしモノばかり売る、売れる時代ではないとも思っています。売り場にモノばかりなのも違和感です。リアル店舗に行ったら楽しい経験ができる、お金を払ってでもそこに行きたい!と思ってもらえるようになるべきだと思っています。衣食住だけでない生活全般の松屋ならではのサービスを売ることができるようになれば良いなと思っています。一方でモノを売ることも必要だとも思っていて、どこででも売っているものでは無く、松屋ならではの品揃えをしなければならないといけないと思っています。
最後は、本講座の主催者篠崎友亮さん。
「今日は貴重なお話をありがとうございました。多くの日本人にとって、特にある程度上の世代にとっては憧れの場所だったり、親しみのある百貨店や商業施設から次の時代に向けた新しい試みが広がると、日本も変わっていくのではないかと思っています」。
【取材・文:鈴木友都+「ACROSS」編集室】