JR恵比寿駅西口から徒歩5分。代官山へ抜ける五差路のほど近くに、2021年11月初旬、BRINGという店がオープンした。日本環境設計株式会社が2018年にスタートさせた、服のサーキュラーエコノミーを実践するブランド『BRING』初のリアルショップだ。
回収した古着からつくられた、再生ポリエステルを採用したBRINGの商品
「サーキュラ—エコノミー」とは、「原料→製品→廃棄物」といった、従来型の直線経済とは異なり、「原料→製品→原料→製品→‥‥」と、なるべく廃棄物を出さずに再生・循環させる仕組みのことを指す。いろいろな材料をリサイクルする技術はたくさんあるが、日本環境設計では、ペットボトルのリサイクル技術を応用し、ペットボトルと同じ素材であるポリエステルを再びポリエステルにする、『ケミカルリサイクル』の独自技術「BRING Technology™」を開発。回収した服から、再生ポリエステル樹脂を作り、それを使って作られたのがオリジナルブランドの『BRING』。「服」から再び「服」にするというのがポイントだ。
アイテムは現在約20型。ただし、Tシャツが大人サイズだけで7サイズ×8色展開。キッズサイズが別で3サイズ、カットソーも8型あるので、SKUでいうと、おそらく600~700位になるそうだ。
アイテムは現在約20型。ただし、Tシャツが大人サイズだけで7サイズ×8色展開。キッズサイズが別で3サイズ、カットソーも8型あるので、SKUでいうと、おそらく600~700位になるそうだ。
アウトドアでも重宝する、ポリエステルのメリット
同社で同ブランドを統括する、プロダクトマーケティング部の中村嵩之課長は、
「BRINGは、サイズやカラー展開を幅広くすることで、色々な需要に対応できるオールジェンダーブランドです。ずっと作り続けられる、売り続けられるものをと心掛けています。トレンドに合わせるのではなく、ベーシックなものづくりを目指しています。」と語る。
「BRINGは、サイズやカラー展開を幅広くすることで、色々な需要に対応できるオールジェンダーブランドです。ずっと作り続けられる、売り続けられるものをと心掛けています。トレンドに合わせるのではなく、ベーシックなものづくりを目指しています。」と語る。
再生ポリエステルで出来ているということだが、デニムもTシャツも綿素材のようにしか見えない。
「Tシャツは、わざと綿っぽく作っていますが、ポリエステルを使うことで、洗濯をしたり汗をかいた時でも乾きが早いんです。綿とポリエステルのいいとこ取りですね。お客様は、『再生ポリエステルだから買う』ということは無いでしょうけれど、この風合いや機能に魅力を感じてもらえたなら、似た商品なのであれば、『このブランドを選びたい』という風になると思います。石油由来の商品ではなく、うちは“捨てられようとしていたもの”から作っていますから。」(中村さん)。
「Tシャツは、わざと綿っぽく作っていますが、ポリエステルを使うことで、洗濯をしたり汗をかいた時でも乾きが早いんです。綿とポリエステルのいいとこ取りですね。お客様は、『再生ポリエステルだから買う』ということは無いでしょうけれど、この風合いや機能に魅力を感じてもらえたなら、似た商品なのであれば、『このブランドを選びたい』という風になると思います。石油由来の商品ではなく、うちは“捨てられようとしていたもの”から作っていますから。」(中村さん)。
BRINGブランドは、今まで同社のオフィシャルサイトで販売されているほか、全国の専門店やセレクトショップへも卸されている。「卸先は100カ所程度」(中村さん)は、あるそうで、大手ではなく、地方のこだわりのアウトドアショップが多いそうだ。ACROSSでも以前取材させていただいたことのある『ラン ボーイズ!ラン ガールズ!』にも置いているとのこと。
「人気商品は?」と伺ったところ、アウトドア用のアンダーウエアなのだそうだ。オフィシャル通販サイトでは売上の半分を占めるそう。ウール50%:ポリエステル50%なので温かくて乾きやすい、ホールガーメントなので縫い目が身体にあたらない、リバーシブルなので頑張れば表裏前後で4回履ける(!)、という様々な付加価値が人気の理由だそうだ。
商品づくりはアウトドアライフを意識。同社の活動が、自然や環境問題に関係が深く、アウトドア愛好者に親和性が高いと考えられること、またポリエステルは、後加工で吸水、速乾、UVカット等、機能を追加できるので、素材としてもアウトドア用品に向いているからだそうだ。
「現在のアイテム数は20型くらいですが、100~130型くらいまで増えると、アウトドアアイテムが一通り揃った形になると思います。そこまでいったら、アウトドアブランドとしての立ち位置も見えてくると思うんです。 長期的にはテントまで作りたいですね。でもテントってリサイクルが難しいんですよ。アップサイクルはやろうと思えばデザインが決まればやれますけど(捨てる部分が出てしまう)。そうではなくて、もう1回、この後も再利用して、何度でも循環できることを考えたいです」(中村さん)。
「現在のアイテム数は20型くらいですが、100~130型くらいまで増えると、アウトドアアイテムが一通り揃った形になると思います。そこまでいったら、アウトドアブランドとしての立ち位置も見えてくると思うんです。 長期的にはテントまで作りたいですね。でもテントってリサイクルが難しいんですよ。アップサイクルはやろうと思えばデザインが決まればやれますけど(捨てる部分が出てしまう)。そうではなくて、もう1回、この後も再利用して、何度でも循環できることを考えたいです」(中村さん)。
多い月には全国で2,500~3,000カ所で古着を回収
恵比寿のお店の売場の中央には、「服から服をつくるⓇ」というタイトルのPOPとともに、BRINGの原料である再生ポリエステルの工程と、循環の仕組みをディスプレイで見せるコーナーがある。
そのPOPには、「わたしたちは、ポリエステルを減らすことや使うことをやめるのではなく、ポリエステルをサスティナブルな原料に変えてしまうことを選びました。それはBRINGで服を回収し、原料にまでリサイクルし、再び糸・生地・服をつくることです」と書かれている。
そのPOPには、「わたしたちは、ポリエステルを減らすことや使うことをやめるのではなく、ポリエステルをサスティナブルな原料に変えてしまうことを選びました。それはBRINGで服を回収し、原料にまでリサイクルし、再び糸・生地・服をつくることです」と書かれている。
同社の古着の回収は、BRINGに参加する百貨店やSC、アパレルショップなどの店頭で、来店客に不要になった衣類を持ってきてもらうことにより行われている。それを全て北九州にある自社工場に送り、スタッフ4~5人で目視により分別。回収量は、今まで累計で約6,000トン以上になる。
回収拠点については、無印良品(自社ブランド品のみ対象)や、GU(ブランドを限定せず回収)のように、全店で通年の回収実施をしているところがある一方、「ご不要な衣類をご持参のお客様にクーポン進呈」などの企画と絡めて、1~2週間スポット的に開催する百貨店やSCも多い。このため拠点数は、多い月だと2,500~3,000カ所にもなるそうだ。
回収量について、「ここ2~3年は年間500トンくらいです。新型コロナウィルスの影響で、集客目的の回収企画は軒並み中止になりましたが、今年は再開するところが増えているので、500トンに到達すると思います。一番回収量が多いのは、大丸松坂屋さんですね。1回に6店舗くらいまとめてやられるのですが、お客様へのクーポン進呈企画の認知度が高いこともあり、1度の回収で200トンくらいの量になります」と話してくれた。
回収拠点については、無印良品(自社ブランド品のみ対象)や、GU(ブランドを限定せず回収)のように、全店で通年の回収実施をしているところがある一方、「ご不要な衣類をご持参のお客様にクーポン進呈」などの企画と絡めて、1~2週間スポット的に開催する百貨店やSCも多い。このため拠点数は、多い月だと2,500~3,000カ所にもなるそうだ。
回収量について、「ここ2~3年は年間500トンくらいです。新型コロナウィルスの影響で、集客目的の回収企画は軒並み中止になりましたが、今年は再開するところが増えているので、500トンに到達すると思います。一番回収量が多いのは、大丸松坂屋さんですね。1回に6店舗くらいまとめてやられるのですが、お客様へのクーポン進呈企画の認知度が高いこともあり、1度の回収で200トンくらいの量になります」と話してくれた。
回収参加企業は現在約150社。BRINGのスキーム利用料を負担のうえ回収事業に参加をしている。産廃品を処理するのに処理費が発生するように、リサイクルするにも対価が発生するということか。
「それだけではありません。廃棄してしまうだけだと売上にはつながりませんが、我々の活動には、そこに消費者が存在します。お客様の来店動機になり、そこに“お買い物”が生まれます。リサイクルと言うよりもサーキュラーエコノミーなのです」と中村さんは話す。
「それだけではありません。廃棄してしまうだけだと売上にはつながりませんが、我々の活動には、そこに消費者が存在します。お客様の来店動機になり、そこに“お買い物”が生まれます。リサイクルと言うよりもサーキュラーエコノミーなのです」と中村さんは話す。
同社で再生されたポリエステル(BRINGマテリアル)は、BRING向けに自社で使う一方、おおよそ半分はアパレル企業や百貨店のオリジナル商品の原料として他社にも卸もされている。 石油由来のバージンポリエステルに比べて、再生ポリエステルの価格は高いのでは?お金に余裕のある企業しか買えないのでは?と、余計な心配を投げかけてみた。
「高いですね。今は。ただ、服の原価は販売価格の比率からするとごく僅か。サプライチェーンを見直すと、樹脂代が10~20倍しても、ロット数次第で通常と同じ単価で作れるんです。原価価格による店頭商品販売価格への影響はある程度回避できるんです」と中村さん。 「2021年はBRINGでも3~4年分の商品20万着を一気に作りました(笑)。生産量を調整することで、マージンを下げられますから。」(中村さん)。
ずっと同じ型を定番商品として売り続けようとしているブランドだからこそ、サーキュラーエコノミーに貢献するとの自負があるからこそ、何年分も作るという大勝負も、危険な博打ではないのだろう。
「高いですね。今は。ただ、服の原価は販売価格の比率からするとごく僅か。サプライチェーンを見直すと、樹脂代が10~20倍しても、ロット数次第で通常と同じ単価で作れるんです。原価価格による店頭商品販売価格への影響はある程度回避できるんです」と中村さん。 「2021年はBRINGでも3~4年分の商品20万着を一気に作りました(笑)。生産量を調整することで、マージンを下げられますから。」(中村さん)。
ずっと同じ型を定番商品として売り続けようとしているブランドだからこそ、サーキュラーエコノミーに貢献するとの自負があるからこそ、何年分も作るという大勝負も、危険な博打ではないのだろう。
大量生産・大量廃棄の世の中に対する、BRINGの将来的な目標とは
BRINGのオフィシャルサイトでは、『コンセプト』のページで、「世界のファッション産業では年間9,200万トンのゴミが発生」「約5,200万トンのポリエステルが毎年生産されている」と、問題提起をしている。
それに対するBRINGの将来的な目標について尋ねてみた。
中村さん「環境省の調査事業の数字で、日本で消費者がお持ちの服のうち、埋め立てまたは焼却されるものが年間48万トンあるのだそうです。それは最低でも集めなきゃなと思います」。 「北九州の工場で作れる再生ポリエステルのキャパシティは年間1,000トンです。ポリエステル全体の生産量からしたら、微々たるものです。技術ライセンスを事業化して、この技術を持つ生産工場を増やすことで、再生ポリエステルの生産量を増やしていきたいです。回収拠点も通年で1万拠点がアクティブになる(現状は多い月で3,000程度)と良いなと思っています」。
それに対するBRINGの将来的な目標について尋ねてみた。
中村さん「環境省の調査事業の数字で、日本で消費者がお持ちの服のうち、埋め立てまたは焼却されるものが年間48万トンあるのだそうです。それは最低でも集めなきゃなと思います」。 「北九州の工場で作れる再生ポリエステルのキャパシティは年間1,000トンです。ポリエステル全体の生産量からしたら、微々たるものです。技術ライセンスを事業化して、この技術を持つ生産工場を増やすことで、再生ポリエステルの生産量を増やしていきたいです。回収拠点も通年で1万拠点がアクティブになる(現状は多い月で3,000程度)と良いなと思っています」。
中村さん「今はまだ、『服をリサイクルするために店に持って来る』ということ自体は、文化になっていないと思います。文化を創り、消費行動を変えていきたいなと思っています」。
「人々の着なくなった物の手放し方を変えたいですね。捨てないでリサイクルさせる、ここをその体験の場にしてきたいです。サスティナブルだからという理由だけで服を買い続けるのは難しいと思います。最初は『いらなくなったから服を持ってきた』で良いんです。このショップがきっかけとなり、服が循環すれば、それが第一歩だと思っています」。
【取材・文:船津佳子(『ACROSS』編集室)】
「人々の着なくなった物の手放し方を変えたいですね。捨てないでリサイクルさせる、ここをその体験の場にしてきたいです。サスティナブルだからという理由だけで服を買い続けるのは難しいと思います。最初は『いらなくなったから服を持ってきた』で良いんです。このショップがきっかけとなり、服が循環すれば、それが第一歩だと思っています」。
【取材・文:船津佳子(『ACROSS』編集室)】