定点観測
report : 2022 | 
03 / 05

#492 | 実施日 : 2022 / 03 / 05 | 最高気温 : 17.9 | 最低気温 : 4.3 | 天候 : 快晴

Z世代、スポーツ、アウトドア、ミリタリー、ヴィンテージなどさまざまな文脈からショート丈のアウターが主流の2022冬。

2022年3月5日(土)に実施した「第492回定点観測」の考察レポートです。

ロシアのウクライナ侵攻を受け、新宿駅前では反戦デモイベント『全感覚祭 presents No War 0305』が開催。

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2月24日に突然始まったロシアのウクライナ侵攻を受けて3月5日、新宿駅前にて開催された反戦デモイベント『全感覚祭 presents No War 0305』のようす。延べ1万人が集まった。

GW直前の423日。遅くなりましたが、35日に実施した定点観測の考察レポートを公開します。

 

まん防(まん延防止等措置)が2週間延長となり、2月同様、感染防止対策の一環として、路上での「インタビューは1人15分程度にどとめ、後日メールやチャット、電話などでフォローする」というスタイルで実施した第492回定点観測。いつもの通り、前日までの編集スタッフらによるプレサーベイを経て、メインのテーマは、「男女ブルゾン」。ズームアイテムは、「ベスト」と「パーマヘア」となりました。

カウントアイテム:  男女ブルゾン
ズームアップアイテム①:ベスト
ズームアップアイテム②: パーマヘア
 
 2022年3月の定点観測・トップページはこちら:

大ヒット&4回目の重版となった書籍「ストリートファッション1980-2020 定点観測40年の記録」、本の紹介ページはこちらをどうぞ↓(PARCO出版)
https://publishing.parco.jp/books/detail/?id=405 
   
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(左から)ステッチ風にあしらわれたジップやスタッズなどのディテールが目をひいたブルゾン。K-POPアイドルっぽいセンター分けがマス化する一方、ハードに固めた七三分けのようなヘアスタイルが10〜20代前半くらいの男性の間で浮上している。(原宿)/mame kurogouchi(マメクロゴウチ)のブルゾンとショルダーバッグを身につけた女性。ベーシックなアイテムだが、ブランドの主張が強いディティールで差をつけていた。ジルサンダーのロゴ入りショッパーもファションアイテムの一部に。(新宿)
(左から)「最初はラフシモンズのMA-1を検討していたのですが、ある時ネットで大好きなブランドsacaiのこのMA-1に出会って購入しました」(渋谷)/昨秋はウール素材が多かったシャツジャケットはコットン素材に更新されていた。胸元のダブルポケットが特徴のカバーオールも少なくなかった。(渋谷)/反戦イベントに来ていた大学生(新宿)。

カウントアイテム:男性/女性ブルゾン

「男女ブルゾン」というテーマ。よく「ACROSS」をご覧いただいている方にはおや、また?と思われたかもしれません。それもそのはず、「男女ブルゾン」は、つい202111月に取り上げたテーマと同じです。当時の考察レポートを見ると、さらに1年前の202011月の「男女フーディスタイル」に見られたスポーティなスタイルの流行が拡大。長かったビッグ&ワイドシルエットの流行がひと段落し、ブルゾンやニットカーディガンなどショート丈アウターが主流になりつつあると考察しました。

 

その背景にあるのは、路上(ストリート)の主役が新しい若者世代、(いわゆる)Z世代となったことで、その下のα世代を含め、ウィメンズのファッショントレンドはトップスもボトムスもショート丈が一般的で、トップスをボトムスにインして「ショート丈に見えるようにする(ショート丈見え)」など、新しいバランス感を牽引した、というストーリーでした。


一方、メンズファッションのトレンドを2021年の秋冬から振り返ると、「男女フーディスタイル」の後、モッズコートやレザーアウター、シャツスタイル、そして2022年1月のテーマとした中綿入りアウター、ベルテッドコートと、ミリタリーやアウトドア、スポーティなアイテムにみる機能性や素材感、デザインが支持されるようになる流れと、近年のヴィンテージブームを代表するようなエイジングを感じさせるレザー(含むエコレザー等)のブルゾンやコート、大人っぽいエレガントなベルテッドコートなど、いつになく冬のアウターがバラエティ豊かに混在したシーズンだったといえそうです。


また、いわゆるデニムのブルゾン=Gジャンも人気でしたが、サイズが大きめのものをドロップショルダーで着こなすスタイルへと進化していました。


「コートを含め、アウターを4、5枚持っています」と話してくれたのは、IT系の会社員の女性。この日着ていたのは、人気コレクションブランドのsacaiのMA-1で、12万円。「異素材が個性的なデザインのsacaiは好きなブランドです。今日は青色のワンピースを着用しているので、緑色のジャケットと合うかなと思って着ることにしました」とその日のコーディネートでアウターも着替えているようすが伺えました。


インタビューはこちら。

https://www.web-across.com/observe/p7l756000006us4f.html


何年か前からか、いわゆる「何よりもファッションが大好き」というグループとは別に、ITや金融といったファッションとは関係のない分野で働く30〜40代の中に、Sacaiやメゾンマルジェラ、プラダといった個性的なラグジュアリーブランドを好んで着用している人が目立ってきていることから、「ACROSS」編集室では「ニューリッチ族」として注目し、研究を深めています。


「メンズライクなアイテムが好き」と話してくれたのは、フーズフーチコのブルゾンを2枚重ねしていたアパレルのプレスの女性。メンズファッションのトレンドでもある、薄手のアウターをレイヤードするスタイルは、色や異なる素材のバランスでおしゃれ通の間で人気です。2000年代初頭に大ヒットしたエルメスの馬の餌入れをモチーフにしたバッグ「アリーヌ(Aline)」は古着屋で購入したのだそう。ラフな服装にハイブランドのヴィンテージものを合わせるスタイルが注目されます。


インタビューはこちら。

https://www.web-across.com/observe/p7l756000006uszh.html


興味深かったのは、新宿地点で黒いシャツジャケットを着ていた男子大学生にインタビューさせてもらったところ、来街理由が、ちょうど数日前に始まったロシアのウクライナ侵攻に対する反戦デモイベント『全感覚祭 presents No War 0305』への参加だったことでした。同イベントについては、2、3日前よりSNSに流れてきていましたが、ロックバンドGEZANをはじめ、篠田ミル(yahyel)、カネコアヤノ、折坂悠太、七尾旅人、大友良英、踊ってばかりの国などのミュージシャンや、学者、ジャーナリスト、アクティビストなどがそれぞれの立場・スタイルで「NO WAR」を呼びかけ、集まった延べ約1万人の「NO WAR」を考える場と機会となっていました。


インタビューはこちら。

https://www.web-across.com/observe/p7l756000006usup.html

 
渋谷、原宿、新宿各地点の「男性/女性ブルゾン」は、こちらからどうぞ。(↓)
 
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(左から)「ホワイトベージュっぽい白で、秋でも春でも着られるアイテムなのが気に入って買いました」と言う彼女のベストは、立川ルミネで買ったローリーズファームのものでした。(渋谷)/「レイヤードして人と被らないようにしました」と言う17歳高校生、(渋谷)。

ズームアップアイテム①: ベスト

1つめのズームアップアイテムはこちら。対象は男女です。

シャツが下着という認識だった時代、下着と上着の間に着る「中衣」という意味だったベストですが、「ACROSS」編集室の定義は、「袖のないアイテム」とすることにしました。

過去に何回も取り上げてきたベストですが、今シーズン注目したいのは、アウターの上にダウンやファー(含フェイクファー)のベストなどを重ねるスタイルや、袖が取り外しができたり、オフショルダーのように見えて、実は袖部分がレイヤードになっているアウターなど、少し前に流行したインナーダウン(アウターの下にダウンベスト等を重ねる)を逆転したようなスタイルになっている点です。

「ダウンベストにハマっていて着てきました」と言うのは、ナイキのACGのベストを着ていた17歳の男子高校生。4月から大学生ということで、春休みになったばかりの今日、つい先ほどカラーヘアにしてきたところだと嬉しそうに話してくれた。
「ふつうのダウンだと他の人と被るので、ベストにしてレイヤードができるようにしました。他にも古着でフリースっぽいベストを持っています」。

インタビューはこちら。

「このアウターは袖が取り外しができるタイプで、真冬は袖をつけて着ていました」と話してくれたのは24歳会社員。ルシェルブルーのベスト(本当はコート)は伊勢丹で購入したそう。下に着ていたのは、最近大人気のメゾンスペシャルのタートル。彼女のように、気温や天候が大きく変化する秋から冬、梅春ごろまで長く着られるよう、白っぽいアウターを選ぶ人が増えている。

インタビューはこちら。
https://www.web-across.com/observe/p7l756000006ut6n.html

「冬から春の移り目はベストをよく着ます。ロンT、スウェットなどメンズライクなものと合わせています」と言う会社員の女性のダウンベストは、H&Mのものでした。
 
インタビューの詳細はこちらへ。
*各地点の「ベスト」はこちら(↓)からどうぞ。
 
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(写真左から順に)ストレートの部分とパーマの部分のコントラストがユニークだった女性(渋谷)/パンチのあるパーマヘアが目を引いた男性。昔のミュージシャンに憧れて真似をしたのだそう(原宿)/好きなミュージシャンのスタイルを真似たというアパレルのデザイナー(渋谷)。

ズームアップ・アイテム②: パーマヘア

2つ目のズームアップアイテムはこちら。

プレサーベイ時に散見された「パーマヘア」。2020年10月に取り上げて以来のテーマです。当時は、顔まわりにゆるいウェーブをアクセントにするのがポイントの「ニュアンスボブ」をはじめとする、「ニュアンス〜」というワードで表現されていたように、ちょっとしたアクセントとしてのパーマヘアが目立ちました。

新型コロナウィルスによるパンデミック期になり、一気に幅広い層に浸透したブロックカラーやインナーカラーといったカラーリングヘアも2020年にはひと段落。とはいえ、その後も、同年12月の「金髪」、2021年7月の「ハーフアップ」、同8月の「センターパーツ」、11月の「ハイトーンヘア」、2022年1月は「ニットキャップ」など、定点観測を振り返ると、やはり、ヘアスタイル・ヘアデザインについてを取り上げる機会が多かったように思います。

このヘアトレンドの経験からは、ポイントカラー、ハイトーンヘアカラーなどカラーリングでニュアンスを演出するスタイルを新しく獲得しましたが、さらにパーマで「変化」をプラスしようとしている人も目立ちました。そのロールモデルは、昔のミュージシャンや、90年代の若者のようなラフなスタイルだったりなど、ヴィンテージファッションのブームとも重なる点も注目したい。

「芸人をやっているので見た目から少しふざけたいと思って、ショートヘアの時に強めのパーマをかけたのがきっかけです」と言う女性は、半年前に下北沢の美容院で3,000円の激安パーマにチャレンジ。生え際のストレートな地毛と伸びきったパーマの部分のゴチャ感がいまの自分を表現していて気に入っていると話してくれた。

インタビューはこちら。

他にも、「もともとはストレートヘアなのですが、面白みがないので高校2年生くらいからずっとパーマヘアです」と言うのは、欧米のティーンズの天然パーマのようにもじゃもじゃしたヘアが印象的だったバンドマンの男性。やはり反戦イベントに参加するために新宿に来たそうで、今回のような反戦デモや、環境問題に関するデモなど、日本でももっとあっていいんじゃないかと思います。何かをよくしようとする行動や活動はもっとあっていいと話してくれました。

インタビューはこちら。

「slipknotのボーカルのヘアスタイルを参考にしました」と言うのは、アパレルのデザイナーの男性。以前はシャツなどのきれいめなスタイルが多かったが、パーマをかけてからは一転。男らしいストリート系のスタイルに変更したのだという。興味深かったのは、「再開発がものすごく進んでいる渋谷です。パルコが好き」と話してくれたことで、「新しく生まれ変わった渋谷パルコが本当に好きで、何回も行っています」といろんな刺激のある今の渋谷が楽しいと話してくれたことでした。

インタビューはこちら。
 
*各地点の「パーマヘア」はこちら(↓)
[文責:高野公三子(本誌編集長)]


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