定点観測
report : 2022 | 
07 / 02

#496 | 実施日 : 2022 / 07 / 02 | 最高気温 : 35,2 | 最低気温 : 25.4 | 天候 : 晴時々薄曇

2022年7月2日(土)に実施した「第496回定点観測」の考察レポート

街はすっかり夏休み。まもなく8月6日には497回めの「定点観測」を実施しますが、7月の結果を振り返っておきましょう。

猛暑のストリートに急増したシンプルな「ノースリーブトップス」、機能性×デザインや抜け感からヒット中の「トングサンダル」、デザインブームによる「ダメージデニム」を考察します。

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梅雨明けとともに訪れた連日の猛暑。2022年7月2日の最高気温は35.2℃という中、496回目の「定点観測」を実施しました。7月末に向けて急増しているCOVID19の新規感染者数ですが、6月末〜7月のあたまは「通常モード」に戻りたい、というムードが高まっていた時期でもあります。

「ACROSS」編集室の「定点観測」も、2年ぶりに、実査の前と後、本社会議室に集合し、事前のブリーフィングと終了後の振り返りの時間を設けることにしました。そんな2022年7月の「定点観測」。先月とは打って変わって、とってもスムーズ・短時間のプレサーベイで決定したテーマは、以下の通りです。
 
カウントアイテム: 女性ノースリーブ、うち、タンクトップ
ズームアップアイテム①: トングサンダル
ズームアップアイテム②: ダメージデニム/クラッシュデニム
  
2022年7月の定点観測・トップページはこちら:


 
大ヒット&4回目の重版となった書籍「ストリートファッション1980-2020 定点観測40年の記録」、本の紹介ページはこちらをどうぞ↓(PARCO出版)
 
 
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(左から)「代々木のレンタルスペースで誕生会をします。ドレスコードは「Y2K」です」という16歳の高校生(新宿)/ボディースーツとタンクトップを2枚レイヤード。ともにブランドはSHEIN(シーイン)(原宿)/どの地点でも目立ったのが鮮やかなグリーン。アメリカンスリーブのシャツはアバクロンビーアンドフィッチ、パンツはZARAだそう(原宿)。
(写真左から)人気の東京デザイナーブランドのsulvam(サルバム)に多用されるサテン素材のワンピースも散見された。前/後ろ、上/下など当たり前の概念を覆すアイテムもかなり浸透している(渋谷)/ミニ丈でタイトなタンクトップとデニムのホットパンツのLA風コーディネート。全身オールブラックで統一することでよりヘルシーな印象になる(原宿)/トップスの面積がぎゅっと小さくなり、肌を見せるスタイルが10〜20代で散見された。セクシーさよりもアクティブでヘルシーなイメージが強いの特徴だ(新宿)。

カウントアイテム:女性ノースリーブ、うち、タンクトップ


では、順番に説明します。
まずは、カウントアイテム。2020年9月のズームアップアイテムとして取り上げた「ノースリーブ」を今回女性にフォーカスし、カウントアイテムとしました。「うち、タンクトップ/ランニング」です。

過去の「定点観測」から関連しそうなアイテムやスタイルを振り返ってみると、直近では2021年8月の「女性ショート丈見えトップス、うち、+パンツ」2019年7月の「トップスのレイヤード・スタイル」2017年6月の「女性肌見せスタイル、うち、肌見せトップス」2016年6月の「キャミソール」などがあげられます。

2015年ごろに流行した「ノームコア(ノーマル×ハードコア=究極なシンプルスタイル)」の反動からか、ビスチェやキャミソールなどをレイヤードしたり、袖や襟、裾などに装飾・デザインが施されたアイテムが人気となり、さらに、そこにレースやシースルー、カットアウト(切り込み)などで、素肌の見せ方もデザインとして加わり、すっかり「脱シンプル」なスタイルへと変化していきました。

ここ数年は、その変化の部分的なところ=アイテムやスタイルに注目し、取り上げて来ましたが、7月はあまりの猛暑ということもあってか、一気にシンプルで涼しく、リラックス感のあるスタイルが急増。そこに共通する「ノースリーブ」をフォーカスすることにしました。

3地点平均約10.6%という着用率だった「ノースリーブ」。20歳前後の若者たちは、身体にフィットしたショート丈/ミドリフ丈で、ヘソ出し/背中出しのヘルシーなスタイルが比較的多かったようです。なかには、ショートパンツ/ミニ丈ボトムスという「脚出しスタイル」も散見され、すっかり夏休みモードな印象を受けました。


30代〜40代にはノースリーブのワンピースが大人気。昨年は白が多かったのですが、今年は圧倒的に黒。裾が大きく広がったマキシ丈のリゾート風のものが目立ちました。1枚でドレッシーなワンピースルックのほか、上に透け感のある素材のものを重ねたり、下にパンツを重ねたレイヤードスタイルも見られました。


一方、Tシャツ・スウェット素材の比較的ゆったりサイズでシンプルなノースリーブトップスも少なくなく、鮮やかな色や柄の太めのテーパードパンツやフレアパンツなど、ボトムスとの組み合わせでデザインバランスを意識した着こなしが目立ちました。


では最後にインタビューを3つ紹介します。

「母の友人がいらなくなったものをもらったので、自分でちょうどいい丈に切りました」とトミーフィルフィガーのタンクトップの裾を短くカットオフしていた16歳高校生。以前はお腹を出すスタイルに抵抗があったそうですが、今夏は「自分的にOKになった」のだそう。「フレアパンツと合わせるとY2K、90年代っぽい感じになります」と話してくれました。

https://www.web-across.com/observe/p7l7560000071lb3.html


ボディースーツとタンクトップを2枚レイヤードしていたフリーランスのダンサーの女性。ともにブランドは、最近ZARAと並んで「定点観測」でも頻出している中国のファストファッションブランド「SHEIN(シーイン)」でした。「シンプルに暑くて煩わしいから」ノースリーブにした、という彼女。他にもノースリーブは20着ほど持っているとか。ボトムスにボリュームのあるものを合わせることが多く、「首のところが詰まっていると肩が綺麗に見える」と話してくれました。

「暑いからノースリーブにしました」と話してくれたのは、グリーンのZARAのパンツが目を引いた22歳の専門学校生。このあと行くイベントにドレスコードがあり、それが「緑のワンポイント」だったことからパンツを中心にトップスをコンパクトなノースリーブにしたのだそう。興味深かったのは、「裏原とかに行くならダボっとしたトップスとダボっとしたパンツでもいいと思うけど、今日は渋谷方面に行くのでちょっとお姉さんっぽいイメージにした」というコメント。渋谷と原宿、それぞれの街のイメージとファッションの連関が表現されていました。

https://www.web-across.com/observe/p7l7560000071kwr.html

 

 

渋谷、原宿、新宿各地点の「女性ノースリーブ、うちタンクトップ」は、こちらからどうぞ。(↓)

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(左から)「シティボーイっぽくしたかった」という男性(原宿)/シアーソックスとトングサンダルの組み合わせが目を引いた彼女。足袋のような和風のテイストが好みでもあった、と話してくれました(渋谷)/つま先の演出が全身のコーディネートのポイントになる、と話してくれた大学生(渋谷)。
それぞれ、どこのブランドのサンダルかは、インタビューで確認してみてください!
https://www.web-across.com/observe/p7l7560000071hjz.html

ズームアップアイテム①: トングサンダル

続いて、1つめの「ズームアップアイテム」はこちらです。対象は男女。

今回フォーカスする「トングサンダル」。この「トング・先割れ」部分がポイントです。数年前より大流行しているマルジェラのTABIブーツ・シューズや、再び人気のNIKEのエアリフト、スイコックの足袋サンダルなど、親指部分と他の4本の指が分かれるようになっているデザインのサンダル=カジュアル、エスニックという文脈でしょうか。

今夏注目しておきたいのは、なんといっても「OOFOS(ウーフォス)」でしょう。アメリカ・マサチューセッツ生まれの同ブランド。キャッチフレーズに「リカバリーサンダル」とあるように、ランニングやサーフィン、サイクリングなどスポーツした後、ラフに履いてシャワールームに行ったりなど、クールダウンのシーンで愛用されているそうで、その人間工学に基づいて研究開発された低反発の機能性や素材などのハイテク感も相まって、感度の高い人たちから日常生活にも楽ちんでイケてる、とトレンドアイテムとなったのでしょう。

面白いのは、あっという間に同ブランドのデザインを模したサンダルが急増する日本のマーケット。インタビューではなんと、「ダイソー」で300円で購入し、しかもおしゃれに着こなしていた人に遭遇しました。

実は、毎年夏のサンダルにはデザインのブーム、ヒットアイテムというのがあり、例えば、ポインテッドトゥ、サボ、スポーツサンダル、ミュール、ZORI(ゾーリ)、つっかけ、00年代前半には、グラディエーターも大流行。都度「定点観測」でも取り上げてきました。近年は、ウィメンズに関しては、アッパーやサンダルそのもののデザインが多様化し過ぎたのか、厚底、フラット、チャンキーなどソール・ヒールをフォーカスするケースが目立ちました。

一方、メンズファッションの分野では、デザインやアイデアによるサンダルのトレンドは健在。2017年6月に「つっかけサンダル・ミュール」として取りあげましたが、あえてレザー素材でラフなデザインのサンダルがデザイナーズブランドから多数登場。流行したほか、3Dプリンターの浸透を背景とした一体成形(インサート成形)によるデザインのラバーやシリコン素材のサンダルも登場。カラフルでパーツがデザインされたベンサン(便所サンダルをおしゃれにした名称)や、ビーチサンダルの高級バージョンのようなトングサンダルも登場。この1、2年は「機能性がデザインに表れているものへの意識の高まり」という文脈から、「OOFOS(ウーフォス)」の大ヒットへと繋がったともいえるでしょう。

インタビューをしてみると、オーバーサイズが主流の服装の「ヌケ感」としての足の甲の部分や指(肌)を見せる、ラフなニュアンスをプラスする、というバランスへの意識も感じられましたが、女性の中には、「親指にアクセントがあるので、アクセサリーを付けたとしても一癖あるように見える」や、シースルーのソックスとのレイヤードするなど、足の爪先までコーディネートするのを楽しむようすも伺え、「トングサンダル」をきっかけに、多様な価値観、こだわりを考察することができました。

では「トングサンダル」の方のインタビューを2人ほど以下にご紹介します。

「インスタグラムで見たシアーソックスとトングサンダルの組み合わせがかわいくてやってみました。足袋のような和風のテイストが好みで気に入っています。今日のコーデのテーマも和なので、合わせてこのサンダルを履きました」という慶應大学のファッションサークルに入っている大学生(渋谷)。ファッションの私塾で有名な「ここのがっこう」や、カルチャー塾「GAKU」にも通っていると話してくれました。

BEAMS(ビームス)、Bshop(ビショップ)、URBAN RESEARCH(アーバンリサーチ)、AURALEE(オーラリー)、COMOLI(コモリ)など、王道のショップ・ブランド名を好きだと答えてくれた男性。「シンプルだけど上品さを残してくれるのが好き」で、=「シティボーイっぽい」と、「ryutaro(@ryuuutaro365)で見て、人気の「OOFOS(ウーフォス)」のトングサンダルを購入したと話してくれました。

トングサンダルは、ペディキュアや足の指にアクセサリーをつけるなど、「全身のコーディネートのアクセントになって着こなしに個性が演出できる」、と話してくれた大学生。足元がコーディネートのポイントになる、ということを細かく話してくれました。
 
*各地点の「トングサンダル」はこちら(↓)からどうぞ。

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(写真左から)

ズームアップ・アイテム②: ダメージデニム/クラッシュデニム


2つ目のズームアップアイテムはこちら。対象は男女です。


ある意味定番中の定番とも言えるデニムですが、2022年5月のズームアップアイテムでは、久しぶりに浮上した、色落ちではない、きれいめな印象の「インディゴデニム」を取り上げました。しかし、当時も考察していたように、同時に「色落ちデニム」も流行中。中でも、部分的に切り込みが入っていたり、破れて白い系が垂れ下がっているなど、ダメージ加工が施されているデニムがじわじわ、じわじわと増えてきているので、今月取り上げることにしました。

リメイクや、パッチワーク、部分的に激しく色落ちさせたものなど、デニムの加工もいろいろあることは、いまさらいうまでもありません。近年は、SDGsや「3R」という文脈からの、リメイクものも幅広く支持されるようになっています。

しかし、今回はどちらかというと、あえて「破れている/肌が見えるように加工が施されている」のがポイント。部位としてはやはり膝のあたりが多いのですが、マルジェラが両方の太ももの外側に切り込みを入れたもの(スリットジーンズという名称のよう)をリリースしていて、国内外のファストファッションからも類似したものが多数出ているようです。

インタビューをしてみると、当該デザインのマルタンマルジェラの「カットアウト」デニムを履いていた女性(薬剤師)に遭遇。1ヶ月ほど迷ったものの、伊勢丹新宿本店で購入していました。ふだんはあまりデニムを履かないそうで、「きちんとしたデニム=ブランドデニム」という心理が伺えました。ちなみに、商品を知るきっかけになったのは、Qualiam所属の涼佳さんのインスタグラム。「few,」 というブランドのディレクターをしているそう。

また、岐阜から上京していた大学生は、「タンクトップにいちばん合うデニム」を探していて、ディーゼルのローライズデニムに出会った(アウトレット)と話してくれました。そこには、「ダメージ」がある種の柄、デザインの一種として選ばれていることが伺えます。

「ブランドデニム」という意味では、Yohji Yamamotoのデニムを直営店にて約10万円で購入していた大学生にも新宿で遭遇。他に好きなブランドとして若手のデザイナーズブランドとして注目されている「SUGARHILL(シュガーヒル)」の名前をあげてくれました。

一方、10本、50本、100本と、とにかくたくさんデニムを保有する「デニム好き」というファッショントライブも健在。今回のインタビューでは、2人遭遇しましたが、ともに半分はダメージ/クラッシュしているそうで、「デザイン」として捉えているようすも伺えました。

ちなみに、ダメージデニム、クラッシュデニム/ブロークンデニムが大流行したのは直近では2007年前後のこと。いわゆる「ギャル男」の定番アイテムの1つだったことが思い出されます。女子にはブロークンデニムのショートパンツが大ヒットしました(詳細は、弊編集室による書籍『ストリートファッション1980ー2020 定点観測40年の記録』PARCO出版を参照くださいませ!)。

今回の「ダメージデニム/クラッシュデニム」にフォーカスしたことで、「デザイン(過多)」という流れと、「デザイナーズデニム」という「Y2Kブーム」ともいえるトレンドがストリートで確認されました。
 
 
*各地点の「ダメージデニム/クラッシュデニム」はこちら(↓)
 
 
[文責:高野公三子(本誌編集長)]


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