Rakuten Fashion Week Tokyo 2023AW:Day4
レポート
2023.03.16
ファッション|FASHION

Rakuten Fashion Week Tokyo 2023AW:Day4

フィジカルショーの本数は少なめのDay4。pillingsとAKIKOAOKIの偶然の(?)共鳴。(文責:大西智裕)

pillings(ピリングス)

2023年3月16日(木)12:00/渋谷ヒカリエ ヒカリエホールA

ちょうど1年前、TOKYO FASHION AWARDを受賞して楽天ファッションウィークでショー行ったのが記憶に新しいpillings。今シーズンも前回に劣らず印象的なショーを見せた。

ファーストルックはボコボコとしたフォルムのノルディック柄のニット。よく見ると歪に配されたポケットにモデルの両手が突っ込まれている。続いて登場した虫に食われたような穴の空いたニット、あるいは切り傷のように背中の一部ががぱっくりと切れたニットや、瘡蓋のような膨らみが背中にあるニットなど、多くのニットにファーストルック同様のポケットが付いている。モデルたちはみな一様に、傷ついた身体を守るように両手をクロスしてポケットに入れ、強張った姿勢で歩いてくる。デザイナーの村上亮太さんによれば、このフォルムの元となったのはゴミ箱の中で丸まっているボツにしたデザイン画だという。どうにもならない自分を肯定し、自らを抱きしめるようなフォルム。とても村上さんらしい、私小説的なクリエイションに心を打たれた。

ちなみに、ショーの始まる前、客入れの最中に会場ではずっと英語での朗読が流れていたのだが、これはカフカの『城』についての朗読だった。カフカと聞くとつい条件反射的に不条理の三文字が頭によぎるが、村上さんの創作の根底にはどこか常に不条理との対話がある気がするので、その通りの解釈をした。城に辿り着こうといくらもがいても結局辿り着けない測量技師Kの姿が、村上さんの姿にオーバーラップする。そして不条理なものにいかにして向き合うか、その答えのひとつを、明かりを求めて彷徨い電灯の元に集る蛾に見出したそうだ。「明かりに集まっても結局何にもならないのに、それを求めて飛んでいる。でもそうやって生きている姿がすごくポジティブでいいなと思えたんです」。蛾のブローチが大量に縫い付けられたニットには、そんな意味が隠されていたらしい。
 
pillings/写真:ACROSS編集室

support surface(サポートサーフェス)

2023年3月16日(木)17:00/東京国立博物館 表慶館

表慶館で連日のショーというのは今回が初めて?前日と一転、桜の花が開き始めていた上野でショーを開催したsupport surface。エレガントな同ブランドのイメージにぴったりの会場だ。

デザイナーの研壁宣男さんによれば、毎シーズン、テーマというよりはひとつのキーワードからコレクションを組み立てているが、今シーズンは「テクスチャー」をキーワードに、ツイードなどの立体的な素材づかいのコレクションにしたという。

近年はナイロン素材などを用いてプレタポルテにスポーティーさをミックスするような提案が目立った同ブランドだが、「ウールやシルクなど、天然繊維の素材がかなり高騰しているいまだからこそ、あえてクラシカルな素材が新鮮だと思った」と研壁さん。最近ではあまり見ないような、ツイードやループ糸の絡んだモヘアといった高価な素材を用い、よりクラシックな表現に回帰。黒中心のシックなルックが多く見られた。

フィナーレでは黒に混じってピンクの服が多数登場。シーズン自体は次の秋冬なのだが、まさに桜の季節の到来を思わせるコレクションだった。
 
support surface/写真:ACROSS編集室

AKIKOAOKI(アキコアオキ)

2023年3月16日(木)19:00/渋谷ヒカリエ ヒカリエホールA

TOKYO FASHION AWARDを受賞し、2018AWシーズン以来、久しぶりのランウェイショーを開催したAKIKOAOKI。ベールを被ったファーストルックが示す通り、今期のキーワードは聖母マリアだった。何百年も人の心に寄り添い心の支えとなっているマリア様という抽象的な人間像に、青木さんの代名詞でもあるユニフォームやヒストリカルコスチュームなどを掛け合わせて再構築。「新しい人間像や価値観は、現実の延長線上、見慣れたもののちょっと先にある気がしています」と話す。Iラインを意識したという縦長のシルエットは、THREE TREASURESとのコラボレーションで制作したポックリのようなシューズ「エアリアルガーデン」によってより一層誇張されていた。

突如受胎告知を受けたマリアの人生になぞらえ、手の自由が奪われたかのようなディテールも数多く採用された。特に両手をベルトで拘束したコートはその象徴的なアイテムと言える。また、ポケットが高い位置に配された服もいくつかあり、両手を入れるとやはり不自由な印象のフォルムができあがる。運命に囚われながらも力強く生きるマリアの姿を表したこれらのルックは、奇しくも同日の昼間にpillingsが見せた不条理との対話に共鳴しているかのようだった。

AKIKOAOKI/写真:ACROSS編集室


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