—2023年のCFDAのインターナショナル・デザイナー・オブ・ザ・イヤーの受賞、おめでとうございます。
ジョナサン・アンダーソンさん(以下、JWA):ありがとうございます。
—LOEWEのレディスとメンズ、JW アンダーソン、UNIQLOとのコラボラインなど、現在たくさんのコレクションを手がけていらっしゃいます。
JWA:手がけるブランドが増え、それぞれが大きくなる中で、リソースも豊かになってきました。世界各地のクラフツマンシップに出会えたり、こうして東京にお店をオープンすることができたのもその1つです。
年を重ねるにつれて自分がやっていることに少し自信がついてきたのかもしれません。集中したいことがクリアになってきたように思います。
—具体的には?
JWA:今、私がフォーカスしたいのはシルエットです。「ファッション」はこれまでもシルエットによって変化してきました。ファッションの変化=シルエットの変化といってもいいでしょう。なかでも、いかに身体から離れて、ゆったりとしつつ、新しいシルエットの創造を探究しています。
—JW アンダーソンはビッグシルエットのハンドニッティングも若い人に人気です。
JWA:たとえば、世界の多くの方々がJW ANDERSONを認知したハリー・スタイルズ(Harry Styles)のパッチワークカーディガンは、まさにクラフツマンシップあってのものです。
—昔から日本には何度も訪れていらっしゃると伺っています。東京の街やファッションについては?
JWA:日本には15年以上前から来ていますが、東京の街は大好きな街の1つです。とにかく街にいる人たちのファッションがエキサイティング。若者の服の組み合わせとか、着こなしとかにサブカルチャーの影響がたくさん入ってて、自由でとっても素晴らしいと思います。
一方、今回は滞在期間が短くて行けないのですが、日本に来た時に必ず訪問する京都の骨董店もあって伝統工芸も奥深い。日本の方はファッションやクリエイティビティへの理解がとても深いように思います。
—2017年だったでしょうか。ロンドンのショーディッチのエースホテルの隣の小さなギャラリーのようなショップが印象的でした。
JWA:あれは、ちょうどビルを建て替えるというので、それまでの期間、1Fに「ショーウィンドー」を設けたというコンセプトでした。JW ANDERSONとしての最初の店舗でもあります。
—当時よりもっとECが人びとにとってのショッピングの機会となっています。そんななか、リアルな店舗についてはどのように考えていらっしゃいますか?
JWA:店舗はとても重要です。COVID-19のパンデミック以降、人びとは実際に、触って手に取れることの重要性に改めて気付いたと思います。また、店舗は、ブランドの哲学や私の頭の中にあるアイデアを示す物理的な空間です。ブランドの世界観を理解してもらうのにも大事です。
渋谷の店舗は、ロンドンのソーホーの店舗とミラノの店舗を融合したようなデザインになっています。私の信頼する6a architectsというロンドンを拠点に活躍するデザインチームによるものです。
—そんな貴重なスペースを渋谷パルコに設けていただきとても嬉しいです。渋谷パルコは2023年に50周年を迎えました。どんな印象をお持ちですか?
JWA:何度も訪れていますが、来るたびに変化が感じられるとってもユニークなデパートメントストアだと思います。私は物心ついたときからロンドンのリバティが大好きでした。建物はもちろんのこと、内装や取り扱っているブランド、アート、企画展示など本当に素晴らしく、訪れるたびにいつも心がワクワクしました。残念ながら、最近はちょっと私の理想とは遠くなってしまいましたが・・・。ロンドンは、インターネットカルチャーが強くなり過ぎているのかもしれません。
東京・渋谷はどちらもあります。渋谷パルコは変わらず、ずっと好奇心を刺激してくれるものがあるデパートメントストアでいて欲しいと思います。
(聞き手/文:高野公三子)