新宿駅の東南口から徒歩約2分という好立地に2012年12月22日(土)、新しくオープンしたミニシアター「シネマカリテ」。フラッグスビルとマイシティの間に位置する、大型飲食店が入居する新宿NOWAビルの地下1階というロケーションに加え、渋谷で閉館が続いたミニシアター系作品を上映する新たな受け皿として、映画ファンの注目を集めている。
スクリーンは96席と78席の2つで、ともにDCP(デジタル)と35ミリフィルムの上映環境を備えている最新の上映環境。座席はパリのオペラ座やベルサイユ宮殿でも使われているフランス・キネット社の椅子を使用。余裕のある座席配置と傾斜もあって、足を十分に伸ばしてゆったり鑑賞できるのも嬉しいポイントだ。
ロビーの環境はあくまでもシンプルなものだが、チケットカウンターなどの設備面はシネコンを通過した機能性のあるデザインが。反面、飲食に関しては自動販売機のみの設置とサービスを絞り込んでいる印象だ。映画作品ごとのプロモーション用ディスプレイや、常設のヒーリング・アクアリウム(水槽)など、他の大型の映画館にはない風景もあるのがミニシアターらしい個性である。
「シネマカリテ」 という名称は元々、「新宿武蔵野館」が現在の場所に1994~2001年末までの7年間、美術館を併設したミニシアターとして使用していたもので、映画ファンおなじみの名称が約10年ぶりに復活することになる。運営会社は「新宿武蔵野館」と同じく武蔵野興業株式会社で、「新宿武蔵野館」の3スクリーンと合わせて5スクリーンをトータルで運営している。両者とも大手のシネコン系ではかかりづらい趣味性の高い作品を上映する映画館であり、映画ファンには今回のシネマカリテの“復活”は嬉しいところだ。
同社の興行部・営業主任の松岡誠治さんに、オープンまでの経緯を聞いた。
「映画全体では、小さいものも含めると作品の数はむしろ増えているんです。『武蔵野館』だけでは全ての作品を上映し切れないこともあって、新しい映画館のオープンは以前から検討されていました。そんな中、2011年に2館、2012年に1館と立て続けに渋谷のミニシアターが閉館し、これまで以上に作品を公開する映画館が少なくなるという状態になっていたところ、ちょうどこの場所が空くことになり入居を決めました。タイミングが重なった、ということが大きかったですね」(松岡さん)。
同館がターゲットとするのは、ミニシアターの好きな映画好きの層。もちろん作品によって観客層は異なる部分はあるが、主力となるのは30~40代の映画ファン。既存館と比較すると、女性客の方が若干多い印象があるという。そのあたりはやはり、新しく綺麗な建物と椅子などの設備面の充実が寄与しているのかもしれない。
「『シネマカリテ』という名称を復活させたのは、この名前がまだ映画ファンの記憶にもとどまっている分、伝わりやすいのではないかと考えたからです。武蔵野館と同様、ジャンルや国などにとらわれずにいろいろな作品を紹介していくというのが運営方針。上映作品のカラーが固まりすぎないように、いろいろな作品を観ていただけるようにしていきたいですね。小さめのスクリーンでもよさが伝わりやすい作品をセレクトするよう心がけています」(松岡さん)。