ショートフィルムとアドバーテインメント

ショートフィルムとアドバーテインメント

レポート
2002.08.06
カルチャー|CULTURE
パルコフィクション

新しい広告表現として注目される「アドバーテインメント」。
その鍵を握っているのが「ショートフィルム」だ。

鈴木卓爾監督が撮影した、矢口史靖監督
(メイキングフィルムより)
7月20日より、渋谷パルコパート3・シネクイントにて、今話題のショートフィルム作品『パルコフィクション』がレイトショーにて上映を開始した。写真は、先月の19日に矢口史靖・鈴木卓爾の両監督を招いて開催された、前夜祭の模様である。

本作品は、“パルコをテーマにさえすれば、あとは遊んでもいい”という、太っ腹な企画のもと、両監督の魅力が十分発揮された娯楽作品の、短編オムニバス映画だ。

「最近の渋谷の若者は、流行に敏感だけど、あきっぽくて知的探求心が薄い。90年代に人気があったロードムービーのようなアート系フィルムよりも、テンポが良く、気軽に見られるショートフィルムが、今の時代に受け入れられているんだと思います」と、本企画の発案者である(株)パルコ・エンタテインメント事業局映像担当の安田裕子さんは言う。

実は、(株)パルコは、既に01年10月、(株)フジテレビと共同にて、ショートフィルムの配給と、それをインターネットで有料配信(月500円)する「shortbreak」事業に着手しており、現在、同サイト(http://www.shortbreak.jp)は、月平均300万以上もヒット。会員への入会率もかなり増えているそうだ。

携帯電話などの普及により、“独自の時間感覚”を持つようになった若者の心を繋ぎとめておくのは至難の技である。そんななか、効率良く映画の醍醐味を味わえるショートフィルムは、スタ−バックスのコーヒーよろしく、若者の心をつかみやすいのかもしれない。

また、『パルコフィクション』は、同社の“アドバーテインメント”という新事業の第一弾でもある。既に、第ニ弾として、アパレル企業やダイエット商品など、数社からの打診もあるそうだ。

欧米では、ガイ・リッチ−が監督し、マドンナが主演していたBMW社のものが、Web上で配信され話題になった、この“アドバーテインメント”。コンテンツとしてのエンターテイメント性を重視した広告のことである。

「「衣装協力」や「ロケ協力」にとどまらない、「広告(アドバータイズメント)」と「娯楽(エンターテインメント)」を融合させたのが「アドバーテインメント」です。今のTVCFは、直接消費を促す表現のものから、娯楽色が強く間接的に表現したものへと変わってきています。その娯楽性が共感を得ることで、結果的にその商品も認知される、という仕組みで、時代の流れとして、消費者に受け入れられやすいんだと思います」(安田さん)。

フィルムの内容や長さ、上映方法、予算などの規定は一切ないが、「決してコマーシャルにはならず、映画として観客を楽しませることに専念すること」が絶対条件だという。数年前に、アパレル業界のブランドイメージの表現方法のひとつとして「音楽(CD)」が注目されたが、今後はそこに「映画(ショートフィルム)」という表現媒体が加わっていくといえるだろう。

ちなみに、シネクイントでは、デジタル撮影が多いショートフィルムに対応すべく、独立系単館劇場では日本初のデジタルシネマ上映用プロジェクター、DLPシネマを導入。本作品も、パナソニックのハイビジョンカメラ(720p)を使用した、デジタルシネマとなっている。


取材・文:『ACROSS』編集部

こちらは、矢口史靖監督が撮影した、鈴木卓爾監督
(メイキングフィルムより)

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