明和電機『ロマンス・エンジニアリング展』

明和電機『ロマンス・エンジニアリング展』

レポート
2002.08.27
カルチャー|CULTURE

「ロマンスとエンジニアリング。そのどちらかが欠けても、人間は空を飛べない」と熱く語るのは、明和電機代表取締役社長・土佐信道氏。といっても、ただの社長ではありません。

明和電機とは、“魚コード”の「魚器」シリーズや、オリジナル楽器「ツクバ」シリーズなど、ユーモア溢れるナンセンスな“製品”で有名なアートユニット。便宜性や性能を追求し、日に日に進化して行く現代社会へのアンチテーゼ、とも思えるコミカルな“製品”を世に送り出してきたアートユニットなのである。

そんな彼らの10周年記念展覧会『ロマンス・エンジニアリング展』が、パルコパート3、スクエア7で始まった。本展は、社長・信道氏の創作の原動力ともいえる夢や希望、つまり「ロマンス」をカタチにした“製品”が並び、グッズの購入も可能。毎週末には社長自らがパフォーマンスを行うという、盛り沢山な内容だ。

1993年、土佐正道・信道氏の兄弟で活動をスタートした明和電機だが、01年兄・正道氏の定年退職(!)により、信道氏が社長に就任。お決まりの青い作業服に身を包み、作品を“製品”、ライブを“製品デモンストレーション”、そして自らを“社長”と呼ぶなど、高度経済成長を支えた中小企業的スタイルで、典型的な日本人をシニカルに演じる姿が、笑いを誘う。

会場では、「末京銃」と名付けられたマシーンにより、マツモトキヨシで入手した150種もの化粧品が詰められたガラスケースが次々と発射されたり、「マリンカ」という、自動木琴での演奏など、社長・信道氏による淡々としたパフォーマンスも披露された。

2003年は、あの鉄腕アトムが産まれた年。ところが、現実は、手塚治虫氏が想像した夢ある未来とはほど遠いところにある。もしかしたらそれは、エンジニアリングやテクノロジーを追い求めすぎた人間が、ロマンスを置いてきぼりにしてしまったからかもしれないなぁ。と、マリンカの不器用な音色を聴きながら思うのであった。

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