ニューヨーク市内にはイスやベンチがあふれていている。セントラル・パークの中だけで9千脚以上のベンチがある。ニューヨーク市が設置したものだ。
2009年には市の政策として、タイムズ・スクエアとヘラルド・スクエアの一角が歩行者向けの「プラザ」に生まれ変わった。自動車が制限されて人が歩いて行き来することができるようになったプラザには、多くのイスやテーブルが設置されており、誰でも利用できるようになっている。
もっとも、歩道のあちこちにイスやベンチを置いているのは、なによりそこに住む住民や、ショップの店頭などだ。
とくにコーヒーショップの前には、イスやベンチが置かれていることが多い。その店の客はもちろん、通りすがりの人たちも利用する。イスやベンチの色や形は店によってさまざまで、そこに置くために特別に用意したベンチというよりは、どこかにあったものを使い回したようなものが多い。
リーマンショック後は、個人経営の店を中心に、店頭に椅子を置くことで、人が集うようになり、結果的に、“賑わっている雰囲気”を演出することから“真の賑わい”を取り戻す事に成功したとも言われている。
リーマンショック後は、個人経営の店を中心に、店頭に椅子を置くことで、人が集うようになり、結果的に、“賑わっている雰囲気”を演出することから“真の賑わい”を取り戻す事に成功したとも言われている。
ニューヨークが「Walkable City(歩く街)」であることは前回書いたが、ベンチがいたるところにあって休めることも、ニューヨークを「Walkable(ウォーカブル)」にしているともいえる。休憩するためにわざわざセントラル・パークなどの公園に行く必要はないのである。
なにしろニューヨーク市の面積のおよそ25%は道路が占めているので、歩道にイスやベンチを置けば、その場しのぎの「パブリック・スペース (公共空間)」になるというわけだ。