1980年の開始以来、2014年4月5日(土)に第400回を迎えた定点観測。それを記念して、ニューヨークや広島など各都市で定点観測を実施しているが、今回は、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスで定点観測を実施した。
★LA地点のスナップ/インタビューはこちら
LAは西海岸最大の都市で、NYに次いで人口が多い全米第2の都市である。年間を通して晴れた日が多く、気温的には日本の春と夏の繰り返しのような温和な気候で、ビーチ/サーフィン/音楽/スケート/ヒッピー/アート/ヴィンテージなど多様なカルチャーが根付いている街である。
関東平野がすっぽり入るほど広く、繁華街が点在しており、さらに公共交通機関があまり発達していないLAでは、おもな交通手段は自動車である。そんなLAでストリートファッションを観察する地点を決めるに当たって、比較的歩いている人が多いエリアであるハリウッド/サンタモニカ/ビバリーヒルズ/メルローズ/シルバーレイクをプレサーベイした。その結果、5つのエリアの来街者が異なっている事が明らかになった。
①メルローズ→LAの中でもエッジが効いたショップが多く、メインストリートのメルローズ通りにはヴィンテージショップやFred Segal(フレッドシーガル)を始めとするセレクトショップ、urban outfitters(アーバンアウトフィッターズ)、American Apparel(アメリカンアパレル)等のアメリカ発のカジュアルウェアブランドが林立。フェアファックス通りには、Supreme(シュプリーム)やODD FUTURE(オッドフューチャー)など、メンズのスケーター/ストリートブランドが多い。他のエリアに比べて比較的在住者が多いショッピングエリアである。
②サンタモニカ→ビーチ沿いのアミューズメントパークと、ショッピングエリアから構成される。中心地のサードストリート・プロムナードにはショッピングモールや、NIKE(ナイキ)やKitson(キットソン)、Victoria's Secret(ヴィクトリアズ シークレット)などのショップが立ち並び、観光客と在住者で賑わう。ビーチタウンという場所柄、水着やビーチサンダルなどビーチ仕様のファッションの人が多い。
③ハリウッド→映画産業に関する観光地と、GAP(ギャップ)、Forever21(フォーエバー21)、アバクロンビー&フィッチなどの大手SPAブランドが立ち並ぶショッピングエリアである。来街者は、住民と市外からの人々、観光客が混合している。
④ビバリーヒルズ→高級住宅街が近くセレブも出没するエリアで、観光客も多い。ロデオドライブには、CHANEL(シャネル)やGUCCI(グッチ)など高級ブランドのブティックが立ち並ぶ。
⑤シルバーレイク→オーガニックレストランやコーヒーショップ、バーなどの飲食店が立ち並び、その間にセレクトショップやヴィンテージショップが点在する。書店やレコード店、ライブハウスなども多く、音楽やアートなどのカルチャー的な要素が強い街で、ローカルピープルが多い。
このエリアを代表するイベントのひとつ、MelroseTradingPost(メルローズトレーディングポスト)というフリーマーケットが開催される日を実施日とした。
1997年にスタートした同イベントは、メルローズ通りとフェアファックス通りが交差する場所にあるフェアファックス高校の敷地内で毎週日曜日に開催されている。
洋服やバッグ、アクセサリーを中心に家具やインテリアグッズ、植物、陶器などが販売されているロサンゼルスでは中規模のマーケット。日本人バイヤーも多く買付に訪れるRoseBowl(ローズボール)に比べると規模は小さいものの、物販だけでなくバンド演奏やDJプレイも行われたり、フードエリアも充実。無料の情報誌『LA WEEKLY』にクーポンが付いていて2ドルの入場料が無料になる事もあり、地元の人々にも大人気だ。ファッション好きの若者はもちろん、カップル/ファミリーなど幅広い年齢の人々が訪れる。
◎カウントアイテム:女性ショート丈トップス うち、おなか見せ
1997年にスタートした同イベントは、メルローズ通りとフェアファックス通りが交差する場所にあるフェアファックス高校の敷地内で毎週日曜日に開催されている。
洋服やバッグ、アクセサリーを中心に家具やインテリアグッズ、植物、陶器などが販売されているロサンゼルスでは中規模のマーケット。日本人バイヤーも多く買付に訪れるRoseBowl(ローズボール)に比べると規模は小さいものの、物販だけでなくバンド演奏やDJプレイも行われたり、フードエリアも充実。無料の情報誌『LA WEEKLY』にクーポンが付いていて2ドルの入場料が無料になる事もあり、地元の人々にも大人気だ。ファッション好きの若者はもちろん、カップル/ファミリーなど幅広い年齢の人々が訪れる。
◎カウントアイテム:女性ショート丈トップス うち、おなか見せ
カウントアイテムは、プレサーベイで着用者が多かったショート丈トップスとした。なかでも着丈の短いトップスを1枚で着用し、お腹~ウエスト位置の素肌がちらりと見えるスタイルが多かったことから、カウントは「女性ショート丈トップス、うちおなか見せ」とした。
東京では8月の定点観測でズームアップアイテムとしてミドリフ丈(胃出し)トップスとして取り上げたが、LAでは当たり前とも言えるが、4月の時点でカウントできるほど多かった。
東京では8月の定点観測でズームアップアイテムとしてミドリフ丈(胃出し)トップスとして取り上げたが、LAでは当たり前とも言えるが、4月の時点でカウントできるほど多かった。
4月29日(日)13:30〜14:30の1時間、フリーマーケットの入り口に入ってゆく人の流れをカウントし、マーケット内と周辺エリアでインタビューを行った。
カウント結果は以下の通り。
男性:690 人(56.6%)
女性:529人(43.4%)
女性ショート丈トップス:79人(14.9%)うち、おなか見せ 30 人(5.7%)
最も多かったのは、ルーズフィットでへそ丈のTシャツに、カットオフのデニムショートパンツやスキニーデニムを合わせた、シンプルな「LAカジュアルスタイル」。
次に多かったのが、ぴったりと体にフィットするストレッチ素材でへそ上丈のタンクトップ。黒人の女性を中心に、シャリ感/テロ感のある素材のワイドパンツや、タックパンツ、ビッグシルエットのミリタリーパンツを合わせたスポーティな「B系のダンサースタイル」も人気だった。
その他、黒や白などの同色のセットアップコーディネートや、ドレスの上にショート丈トップスを重ねてハイウエストシルエットを作る「モードミックススタイル」、また少数ではあるものの、シャツやブラウスをフロントで結んだ「ヴィンテージミックススタイル」も見られた。
全体的に、体形に合わせて肌を露出する面積をコントロールしているようで、ワークアウトしていてウエストのくびれが綺麗な人ほど、へそがすっかり見えるくらい短いミドリフ丈(胃出し)トップスやチューブトップにローライズのパンツなど、大胆に肌を露出していた。一方ふくよかな体型の人は、サスペンダー付きパンツや、サロペット、ハイウエストパンツと組み合わせ、肌を少しだけちらりとのぞかせる控えめな露出となっていた。
共通していたのは、いずれも無地で、クルーネックやハイネック、モックネックなど胸元が詰まったデザインである点。重心を高い位置に置き、視線を上に集める事で、スタイルアップ効果を狙っているようだ。
◎ズームアップ・アイテム1:男女 丸形サングラス
◎ズームアップ・アイテム1:男女 丸形サングラス
日差しの強いLAでは、サングラスは日本以上に必要不可欠なアイテムである。男女ともに定番になっているレイバンのウェイファーラーのようなウエリントン型サングラスの他に、ティアドロップ型、女性にはヴィンテージ風のバタフライフレームや女優風のオーバル型など、実に様々なデザインのものが着用されていた。そんななか新たに登場している丸形サングラスに注目した。
男性にはゴールドやブラックの細いメタルフレームで、小ぶりでトラッド/クラシカルなタイプが人気で、女性は、丸形のビッグフレームサングラスが多かった。細いゴールド/シルバーのメタル素材や、黒、べっ甲模様の太いセルフレームのものも。レンズは黒が主流だが、ピンクやイエロー等カラーレンズもちらほら見られた。
アイウェアはここ数年のトラッドブームを背景に、丸形のものがコレクションなどで発表され人気になっていった。とはいえLAのストリートではトラッドなファッションはほとんど見られず、男性はTシャツ+パンツ、女性はミニワンピース1枚だったり、Tシャツ+デニムショーツなどの超シンプルな着こなしに無造作に丸サングラスを合わせるスタイルが主流だった。アクセサリーなし、凝ったヘアアレンジや複雑なレイヤードなしの「LAカジュアル」スタイルに、レトロ感、クラシカルなどのエッセンスを加える要素として、丸形のサングラスが取り入れられていたようだ。
また、一部の女性には、つば広のハットや頭にスカーフを巻き、ビッグフレームの丸形サングラスを合わせたりするボヘミアンテイストの着こなしも人気だった。
◆ズームアップ・アイテム2:女性 黒ショートブーツ
◆ズームアップ・アイテム2:女性 黒ショートブーツ
ロサンゼルスの春〜夏のカジュアルスタイルにおける定番シューズといえば、サンダルやキャンバススニーカーである。しかし今シーズン20〜30代の女性には黒ショートブーツが人気だった。
ドクターマーチンの8ホールのようなアンクル上位の丈の編み上げブーツ、ショートウエスタンブーツ、サイドゴアブーツ。また、TOP SHOP(トップショップ)などの大手SPAブランドや、スティーブマデン、ジェフリーキャンベルなどから発売されている、サイドがカットアウトされたグラディエーター風のアンクルブーツも人気だ。
いずれも3〜5センチくらいのローヒール。モノトーンやボーダーと合わせたモードミックスなスタイル、ロックTシャツと合わせたグランジ風スタイル、花柄やトライバル柄と合わせたボヘミアンなスタイル、あらゆるテイストに合わせやすく、カジュアルになりすぎないアイテムである。
また今シーズンは、前述したショート丈トップスなど肌見せスタイルが人気だが、そういった着こなしの引き締め役という捉え方もできるだろう。スニーカーやサンダルに比べてボリュームがあり、肌の露出のバランスを調整するアイテムとなっているようだ。さらに昼間は暖かく夜は涼しい、昼夜の温度差が大きいロサンゼルスの気候に適したアイテムともいえそうだ。
◎考察
今回のインタビューでは、サーフィンやスケートボード、ヨガ、カンフー、バイクなどのアクティビティを楽しんでいる人が多かったが、そういった影響からか男女ともに着心地の良さ、快適さを重視してファッションアイテムが選ばれていたケースが多かった。スポーツやアウトドアレジャーがライフスタイルの一部となっており、鍛えた身体をアピールするようなスポーティでヘルシー、快活なショート丈トップスのスタイリングが結果的にボリューム化していたともいえそうだ。
また、フリーマーケットやスリフトショップ、ヴィンテージショップ、ebay(イーベイ)や古着売買サイト/アプリを利用している人も多く、自分に似合っているものや必要なものをリーズナブルに手に入れていた。大手SPAブランドやオンラインショッピングサイトで購入したアイテムに古着を組み合わせ、さらに好きなカルチャー(ビーチ/セレブ/ロック/サーフ/スケート/ヒッピー/ボヘミアンなど)のテイストをミックス。まさに「ライフスタイル」がファッションにも反映されており、結果的に●●系とカテゴライズできない「自分流」ともいえるスタイルが形成されていた点が興味深い。個人個人が好きなものを、自由に身につけている楽しさと自信が感じられた第1回目の「定点観測in LA」だった。
[取材/文:鈴木香澄+アクロス編集部]
[取材/文:鈴木香澄+アクロス編集部]
鈴木香澄/ロサンゼルス在住・学生
ヴィジュアルマーチャンダイザーとしてDIESEL JAPAN (ディーゼルジャパン)に10年間勤務した後、2012年からロサンゼルス在住。
インタビュー協力 菅絵利子/ロサンゼルス在住