このところ、ウェブを中心に新しい女性向けカルチャーメディアの動きが活発だ。都市型カルチャー情報サイト「NoeL(ネオエル)」や「honeycome(ハニカム)」の女性版「.fatale(ファタール)」といった総合型や、女性向けのライトなアートメディア「girls Artalk(ガールズ・アートーク)」のようなジャンル特化型など形はさまざまだが、いずれもスタートはここ1〜3年。アーティストへのロングインタビューやイベントルポなど深く掘り下げた記事が多く、また作り手の女性たちが自らサイトの顔として登場し、イベントの開催や展覧会、他メディアへの展開なども自ら手がけるセルフメイド感が魅力である。
音楽から映画、ファッションから食まで、都市に暮らす女性を対象とするカルチャーメディアとして注目を集めているのが「NeoL(ネオエル)」だ。読者イメージは「キャリアを積みながら積極的に働く20~30代の女性たち」で、コアターゲットは25~35歳で、情報感度が高く、人と同じものではなくオンリーワンを求めるOL、クリエイター、ワーキングマザーと幅広い。運営会社の株式会社STOPはWEBコンテンツや広告、映像制作などを手がける企業で、NeoLも食の情報チャンネル「FOODIES」に番組を持っている。
「好奇心が強い人というのはジャンル問わずいろいろなものが好きで、それがクロスオーバーしていくことに面白みを感じてもらえるはず。“自由に、好きなことをやる”という基本方針は今後も変えずにやっていきたいですね」(NeoL編集長 桑原亮子さん)
NeoLの連載コラムやブログに参加している執筆者たちはリンダ dadaさん(N’夙川BOYS)、OKAMOTOʼ S、酒井景都さん(デザイナー)、田口まきさん(写真家)、米原千賀子さん(イラストレイター)などクリエイター色が強い顔ぶれが並ぶ。同様にクリエイターのブログをコンテンツとして揃える「.fatale(ファタール)」が、エッジな都市型カルチャーを中心にしているのと比べると、NeoLのコンテンツはより幅広く、若い読者層に訴えそうな内容だ。2014年3月には開設1周年を記念したイベント「NeoL Scat Vol.1」をLIQUIDROOM(渋谷区恵比寿)で開催。ライブに加えてフォトシューティングやメイクアップのブース、クリエイターたちが出店するフリーマーケット、猿田彦珈琲やL PACKの飲食販売など、NeoLのコンテンツを活かした複合型カルチャーイベントとなった。さらに9月には音楽イベント「NeoL Night」を開催、Charaと女王蜂の「オルタナの女王決死戦」と銘打ったライブ対決が話題を集めた。
「girls Artalk(ガールズ・アートーク)」はアートに特化したコンテンツで存在感を示しつつあるウェブメディア。編集長の新井まるさんはイラストレーターの両親の影響で幼い頃からアートに触れて育ち、世界31カ国を旅して美術館やアートスポットに足を運んでいた。アートと関係のない業界で4年間働いたのちに独立、「girls Artalk」を2013年に立ち上げた。
「art」と「talk」を組み合わせたサイト名が示すとおり、「ガールズトークをするように、読者がアートの話をするようになってほしい」というコンセプトを掲げるメディアだ。アートのある生活を提案し、広い層に浸透させることを目標に活動している。
「art」と「talk」を組み合わせたサイト名が示すとおり、「ガールズトークをするように、読者がアートの話をするようになってほしい」というコンセプトを掲げるメディアだ。アートのある生活を提案し、広い層に浸透させることを目標に活動している。
1周年を記念してアート作品の展示・販売やトークイベントなど、リアルな読者との初の接点となるアートイベント「Live Girls Artalk」をギャラリー「AL Tokyo」(渋谷区代官山)で開催。さらに初心者向けクラシック講座を東京フィルハーモニー交響楽団と共同で実施するなど、クラシック音楽にも活動を広げている。
「アートに敷居の高さを感じている女の子にこそ、もっと身近に感じて、楽しんでもらえたらいいなと思っています。今後は音楽イベントやECなどにも取り組んでいきたいですね」(新井さん)
「Wooly(ウーリィ)は、世の中に隠れた才能あるアーティストに発表の場を設け、そのステップアップのきっかけを作ることをコンセプトとするカルチャーマガジン&ウェブサイト。フリーペーパー創刊から10周年という歴史を持つが、その節目となる2014年にサイトデザインを刷新し、実質的には新しいメディアとしてリニューアルを果たした。
フリーマガジンは基本的に季刊で、サイズなどのフォーマットも不定形。アート、写真、ファッション、音楽などのジャンルを横断し、日本語・英語・中国語・韓国語で構成される。配置場所は国内のカフェ、レストランやアパレルショップ、さらにパリ、ロンドン、ニューヨーク、上海、ソウルなど海外にも広がっている。
現在の編集長はSallyこと関根さゆりさんで、彼女にインターンを加えた数名で運営している。
フリーマガジンは基本的に季刊で、サイズなどのフォーマットも不定形。アート、写真、ファッション、音楽などのジャンルを横断し、日本語・英語・中国語・韓国語で構成される。配置場所は国内のカフェ、レストランやアパレルショップ、さらにパリ、ロンドン、ニューヨーク、上海、ソウルなど海外にも広がっている。
現在の編集長はSallyこと関根さゆりさんで、彼女にインターンを加えた数名で運営している。
「10周年を期に「WOOLY ARTS」というクリエイティブ・レーベルをスタートしました。今後は所属アーティストのエキジビションなども積極的に行っていきたいです」(Sallyさん)
「Wooly ARTS」のローンチを記念して、2014年9月には2.5D(東京都渋谷区)でのイベント+番組配信、所属イラストレーター・SAYORI WADAさんの展覧会開催など、その活動領域はなお拡大している。
今回ご紹介した新世代のガールズメディアに共通しているのは、コンテンツで完結するのではなくイベントやワークショップなど、リアルな世界での「女子会」に接続しているような現場感・コミュニティ感だ。作り手の彼女たちがメディアの顔として表に立つことで、そのリアリティはより強いものになる。ACROSSで紹介してきた「女子コレクティブ」や女子クリエイターの文化祭「シブカル祭」のような「カルチャー女子会イベント」にも通じるが、こちらはさらにフラットでセルフメイド感が強いのが魅力のポイントだ。
アイドルのプロデュースを手がける「もふくちゃん」こと福島麻衣子さんやフリーペーパー「mig」を発行するフォトグラファー・田口まきさんなど、プロデュース感覚に長けた女性クリエイターが自らメディアやコミュニティを創り出す動きはゼロ年代後半から既にあった。それがメディアを立ち上げることのハードルが低くなった現在、さらに拡大、多様化の段階を迎えたと考えられる。もちろん今回ご紹介したメディア以外にも、多様なガールズメディアが立ち上がっているのは言うまでもない。
アイドルのプロデュースを手がける「もふくちゃん」こと福島麻衣子さんやフリーペーパー「mig」を発行するフォトグラファー・田口まきさんなど、プロデュース感覚に長けた女性クリエイターが自らメディアやコミュニティを創り出す動きはゼロ年代後半から既にあった。それがメディアを立ち上げることのハードルが低くなった現在、さらに拡大、多様化の段階を迎えたと考えられる。もちろん今回ご紹介したメディア以外にも、多様なガールズメディアが立ち上がっているのは言うまでもない。
既存の女性向けメディアが描き出す女性像の多くは、メディアや広告主がターゲットとして作り出した属性に基づく仮想女子に過ぎす、リアルな女性たちの求める情報とのズレはやはり否めない。ウェブメディアでストレートニュースばかりが流通するいま、カルチャー指向の強い女性ならば尚のこと、求める情報に出会えるメディアは少ないのが現状だ。等身大な女子目線で作られるガールズメディアは、そうしたメディア状況に対応した動きの一つだといえるだろう。
【取材・文: 本橋康治(コントリビューティングエディター/フリーライター) 】
NeoL
NeoL
http://www.neol.jp/
girls Artalk
http://www.girlsartalk.com/
Wooly
http://wooly-web.com/index.html
(参考)
.fatale
http://fatale.honeyee.com/
http://www.neol.jp/
girls Artalk
http://www.girlsartalk.com/
Wooly
http://wooly-web.com/index.html
(参考)
.fatale
http://fatale.honeyee.com/