クラブクアトロがプロデュースするミュージック・バー「QUATTRO LABO(クアトロ ラボ)」が2014年11月、吉祥寺駅南口にオープンした。ここ数年、アナログレコード人気が世代を超えて広がり、じっくり音楽を聴かせるスタイルのバーやカフェがここ数年増えている。このクアトロ ラボは、クラブクアトロとともに音楽体験を積んできた耳の肥えた大人たちに向けてパルコが提案する、新しいスタイルの「大人のサード・プレイス」である。
クアトロ ラボのロケーションは吉祥寺駅南口から徒歩約2分にある路面の好立地。井の頭公園へのアプローチとして特に週末は来街者の多いエリアであり、この数年は新しい飲食店やアパレル、アウトドアショップなど路面店が増加している。2014年には吉祥寺駅ビルのリニューアルも行われ、街全体も活気づいている。
店舗面積は28.95坪、カウンター14席+テーブル30席の計44席。エントランスや柱に使われたブリックタイルはクラブクアトロのイメージを踏襲しているので、利用経験のある音楽ファンには馴染み深いだろう。年末年始を除いて年中無休で、営業時間は11:30〜24:00。17:30までがカフェタイム、それ以降はバータイムとなっている。
同店の核となるのが60〜70年代のアメリカン・ロックを中心としたアナログレコードのコレクション。ソウルやブルース、ジャズ、ルーツ・ミュージックなどもカバー、CDを含めて約5000枚を擁し、入手困難な稀少盤も多く所蔵している。大きなロングカウンターの内部にはハンドメイドのスピーカーと高品質なサウンドシステムが設置され、耳の肥えた大人の音楽リスナーの欲求に応えている。
アナログレコードを聴いて育った大人の音楽ファンで、クラブクアトロにも足を運んだことがある客層となると、40〜60代男性が中心になりそうだ。大きなオフィスが少ない吉祥寺では、実際にどのような層が利用しているのだろうか。オープン以降の現状について聞いてみた。
「40〜50代のロックやジャズ、ソウル好きの男性というコアな来店客層はイメージしていた通りです。夜は地元の方が多く、お年寄りがフラリと入ってこられたりするのは吉祥寺らしいですね。週末になると客層の幅が広く、特に20〜30代のカップルや女性客が増えます。当店のスタッフを募集した際にも20代女性からの応募が予想以上に多く、驚きました」
と語るのはパルコ・エンタテインメント事業部の柿原晋さん。
吉祥寺には洋楽を聴いて育ってきたミドル〜シニア層が多そうな印象があるが、吉祥寺周辺在住のコアな音楽ファンが世代を超えて来店しているようだ。ランチタイムには会社員と思しき男性が店内に流れる音楽に聴き入っている姿も見受けられる。
「食事やお酒のメニューにも力を入れているので、シニア層や女性客、外国人といったお客様からも評価をいただいています。当店はジャズ喫茶やロックバーではないので基本的にリクエストは受け付けていませんが、選曲に関してはお客様からも要望が多いのも確かです。ウエストコーストのロックやAORなどの反応がいいですね」
と語るのは同店店長の松野光紀さん。
席に座って料理やお酒とともにじっくり音楽と楽しむというスタイルは、クラブを通過して大人になった30代以下の若い層にも新しい音楽体験の場として広がりを見せている。渋谷や青山エリアにポスト・クラブ/非ダンスのスペースが新しく増えているのも、そうした動きの表れだ。
2014年、渋谷にオープンしたHMVレコードショップ(レポート記事はこちら)が象徴するように、アナログレコードユーザーの増加は、単純なノスタルジーやマニアックなサウンド指向のユーザー層に留まらず、世代を超えて広がっている。20代以下の若い世代にとってはアナログレコードは新鮮な音楽体験であり、新しい形のエンタテインメントとして受け止められているのである。
2014年、渋谷にオープンしたHMVレコードショップ(レポート記事はこちら)が象徴するように、アナログレコードユーザーの増加は、単純なノスタルジーやマニアックなサウンド指向のユーザー層に留まらず、世代を超えて広がっている。20代以下の若い世代にとってはアナログレコードは新鮮な音楽体験であり、新しい形のエンタテインメントとして受け止められているのである。
吉祥寺は、東京の「住みたい街ランキング」でも常に上位を占める(2014年も複数の調査で1位を獲得している)好感度の高い街であり、学生や若い社会人の居住者が多いのはご存知のとおり。またミュージシャンやマンガ家、イラストレーター、演劇人といったジャンルのクリエイターが多く住んでいるためか、街の文化度も高い。中央線文化と井の頭公園を近隣に持つ武蔵野カルチャーが重なるエリアであり、シニア層も新しいカルチャーへの理解が深いのが特徴だ。クアトロラボのリピーターたちもこの50代以上の男性客が中心となっている。
クアトロラボは都心と郊外の中間、また職場と家庭の中間に位置づけられた場所でじっくり音楽を楽しめる場を提供する「大人のサードプレイス」がコンセプトであり、吉祥寺ならではのゆとりのある大人たちが反応しているようだ。
来店客からはアコースティックでのライブイベントや音楽に関するトークイベントなど、吉祥寺での音楽イベント拠点としての要望が多く寄せられているという。今後はこうしたイベントを通したプロモーションも行っていく計画だという。
「まずはクアトロラボ単独で、新しい魅力をアピールしていきたいですね。クラブクアトロの出演アーティストが参加する選曲イベントやトークライブなども、今後は検討していきます。2015年には吉祥寺パルコがオープン35周年を迎えるので、企画面での連動も図っていきたいですね」(柿原さん)
音楽がメインのカフェやバーは防音の問題もあってクローズドなスペースが多いが、クアトロラボはランチや帰り道に気軽に立ち寄れそうなオープンな空気感があり、魅力になっている。今後は吉祥寺の街に向けた展開やパルコ本体との連携による多店舗化などの可能性も広がる。新しい音楽体験を提案するラボ=研究所としての役割に今後も期待したい。
【取材・文:本橋康治(ACROSSコントリビューティング・エディター)】
クアトロ ラボ
住 所 東京都武蔵野市吉祥寺南町 1-8-10 エクセレンス吉祥寺1F
営業時間 11:30-24:00
11:30-18:00 CAFE TIME/18:00-24:00 BAR TIME
TEL 0422-26-8721
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