READY TO FASHIONはファッション業界を志す学生たちによって運営されている団体で、2014年の7月頃に始動したプロジェクトだ。運営メンバーの佐藤亜都さん(当時早稲田大学4年生)に、団体を立ち上げた理由を聞いた。
「就職活動をしていたとき、ファッション業界は取っ付きにくい業界だと感じていました。学生と企業の接点が少なく、業界について深く知る機会が少なかったりして、足を踏み入れるのを躊躇する学生も少なくありませんでした。ファッションが好きで興味はあるのに、そういった理由で諦めてしまう子もいました。だったら、学生たちがファッション業界について知るきっかけになるイベント、つまり、「きっかけのきっかけ」を作ったらいいのでは、ということでこのプロジェクトを計画しました」(佐藤さん)。
「実は当初に計画していたのはトークセッションではなく、複数の企業と提携した大型インターンシップだったんです」と言うのは、運営メンバーの1人である廣瀬友理さん(当時立教大学4年生、元立教大学服飾研究会副代表)。
学生がいくつかのチームを組んで、衣服のデザイン・作成からショーの発表、そしてプレス・販売までを一貫して行うというもので、各チームはそれぞれ企業の協力を受けながら、小さな仮想アパレル企業として実際にアパレル業界の動きを体験できるという企画だったそうだ。
「でも、この計画はあまりにスケールが大きすぎて時間的にも金銭的にも実現が難しいということになり、今回はまずREADY TO FASHIONというプロジェクトを広く認識してもらうためのイベントとしてトークセッションを実施することになったんです」(廣瀬さん)。
このような事情から、今回のイベントは「第1回」ではなく「第0回」という位置づけなのだと運営メンバーは強調する。
アパレル事業のコンサルティングで知られる株式会社R・B・K代表取締役の飯島薫さんがモデレーターを担当。企業側からのパネリストにはジュングループ代表取締役社長の佐々木進さん、株式会社TSIホールディングス取締役の濱田博人さん、株式会社ユナイテッドアローズ常務取締役の東浩之さんの計3名が登壇。また学生側からはESMOD JAPONの学生である石田万理菜さん、ファッションに関するさまざまな企画を行う学生団体FUCTORYの竹村洸介さん、フリーペーパー『ADDmagazine』を発行する学生団体ADDmagazineの野地圭太さん、元早稲田大学繊維研究会の山田日貴さんの計4名が登壇し、企業側と学生側が向き合うような座席の配置となっていた。
ディスカッションのテーマは大きく分けて4つ。(1)クリエーションとビジネスのバランスについて、(2)ファッションのグローバル化について、(3)ファッション業界で働くということについて、そして(4)ファッションビジネスのイノベーションの可能性について。基本的に学生がパネリストに対して質問するという形式で議論が進行したのだが、座席の配置や1問1答のスタイルなどはどことなく“公開就活”のような雰囲気。
ちなみにこれら(1)〜(4)の問題提起は、4人の登壇学生の意見に加えて、3月17日に青山学院大学アスタジオで行われたプレイベントに参加した学生たちの声を整理したものだ。
さらに東さんは「最初から大きなイノベーションを目指すのではなく、できる限りの小さなイノベーションを繰り返していくことで、結果として大きなイノベーションにつながると思います」と話す。自身の経験を織り交ぜたこの回答には説得力があった。
また、トークセッション終了後には来場者同士が交流する時間も設けられ、学生のみならず社会人たちも混ざって新しい交流の場となっていた。
今後、READY TO FASHIONの活動はより具体的なものになって継続されていくという。学生と産業を繋げるというコンセプトのもと、ファッションを体系的に学ぶ場や実践的なインターンシップなどを各社と企画中だそうだ。次回(第1回?)は、株式会社ナルミヤインターナショナル代表取締役執行役員社長の石井稔晃さんのトークセミナーが同社本社にて開催される予定だ。
[取材/文:大西智裕(ACROSS編集部)]