古着や路上ミュージシャンの聖地として知られ、また、独自の世界観をもつ個人オーナー系のショップやアジア系飲食店、雑貨店などが多く、その独特な雰囲気から“日本のインド”とも称される高円寺に、“独自通貨で取引を行う”古道具屋「新しい人」を発見。取材をした。
「7年間ほど靴や鞄など革製品の修理のアルバイトをしていたのですが、この先ずっとバイトでいるのかなっていう気持ちもあったし、以前から自分の居場所を作りたいとも思っていたので、お金が貯まったタイミングで物件を探していたら、高円寺の古着屋の友人から現在の物件が空いていると教えてもらい、決めました。当初は何の店をやるか決めていなかったのですが、元々休日は古いものを見に行ったりすることが好きだったので、古道具屋にすることにしました」(店主の小池雄大さん/28歳)と、2014年11月1日にオープンした。
「少し前に、世の中の経済のこととか色々考えた時期があって、これから先、経済発展なんてありえなくて循環するのでやっとだと思ったんです。既に使えるものがあるんだから、そういうものを回していけば経済は循環するんじゃないかと思うし、よほどの必要性がある時には本当に良いものを作った方がいいけど、そうじゃないものを大量生産大量消費させていく経済の形は今後ナンセンスなんじゃないか、と。古道具って、その土地ならではの風土が影響していたり、手作業で作られている人間味を感じる部分など、一時的で終わらない信頼できるものだと思っています。その土地ならではの生活が見えるような古道具たちを、お店から見つけて柔らかい頭で使ってもらいたいですね」(小池さん)。
「少し前に、世の中の経済のこととか色々考えた時期があって、これから先、経済発展なんてありえなくて循環するのでやっとだと思ったんです。既に使えるものがあるんだから、そういうものを回していけば経済は循環するんじゃないかと思うし、よほどの必要性がある時には本当に良いものを作った方がいいけど、そうじゃないものを大量生産大量消費させていく経済の形は今後ナンセンスなんじゃないか、と。古道具って、その土地ならではの風土が影響していたり、手作業で作られている人間味を感じる部分など、一時的で終わらない信頼できるものだと思っています。その土地ならではの生活が見えるような古道具たちを、お店から見つけて柔らかい頭で使ってもらいたいですね」(小池さん)。
お客さんとの取引は、基本的に全て独自通貨の「こい券」で行なうという同店。お客さんが商品を持ち込むと、等価分の「こい券」と「交換」され、それで店内の商品と再び「交換」できるというシステムだ。通貨のレートは1こい券=100円(時期によって変動あり)。商品を購入する際は、現金の使用も可能だそうだ。
「商品の売買というよりは、基本的には“物々交換”という感覚です。いまの世の中って、お金が力を持ちすぎているなと感じていて、そんなにお金の為にピリピリすることないし、それよりも、お互いがちょっとずつハッピーになることが利益じゃないかな、と思うんです。
“新しい人”という店名は、好きなバンドfishmans(フィッシュマンズ)の「新しい人」という曲名と、大江健三郎の『新しい人よ眼ざめよ』から名付けました。あともうひとつ理由があって、革命家チェ・ゲバラが掲げていた「新しい人間」という思想があるのですが、そういう思想を自分でも発展させて実践していきたいと思ったので、こういうシステムにしました。
うちにいらないものを持ってきてもらって、代わりに持って帰りたいものが無かった時に、その穴埋めじゃないですが、お渡ししているのが「こい券」です。最初は、奇抜なアイディアだし自分でもどうかなって思ったけど、結構受け入れてもらえていて。今では周りのお客さんにも浸透していて、皆がこい券を持ち始めたので、こい券ばかり入ってきちゃって、家賃の支払いをどうしようとピリピリしています(笑)。新規のお客さんを獲得するしかないですね」(小池さん)。
店の軒先には、クロスバイクのフレームやアンティークの額縁、古着などが並ぶフリーマーケットのような雰囲気。約8坪の店内にあるものは基本的に全てが売り物(交換可能なもの)だそうで、小池さんが海外から買い付けてきたものや、店で買い取ったものなどで、古着やアクセサリー、小池さんの友人がやっている秘密結社「ROTA」のオリジナルTシャツ、民族帽子やマンドリン等の楽器など異国情緒溢れるものから、食器や書籍までと様々な商品が並ぶ。取材時には、沖縄から買い付けてきたという琉球陶器の期間限定の展示販売(交換会)が行われていた。
商品の交換価値帯(価格帯ではない)は、サンドイッチを完成させるゲームのパン型のカード1枚(1こい券=100円)からぬいぐるみ作家・片岡メリヤスさんの絵画(1万こい券=100万円)と幅広い。
「自分で仕入れる商品は“長く使えるいいもの”という視点で選んでいますが、持ち込まれた商品の交換(一般的には買い取りの意味)では基本的に何でも受け入れたいと思っています。以前、国分寺の古道具屋でアルバイトをしていたことがあるのですが、その時に友人が遊びに来た際に、こんなのあったんだ!?というような商品を選んで買っていってくれたんです。自分は店に長時間いて、いろいろ見ていたはずなのに全く目に入っていないものがある、ということが分かったんです。こういうお店って、お客さん自身が自分に合うものを発掘する、つまり、自分自身に出逢う場所なのかって考えるようになりました。あまり自分の価値観で固めると自分でもつまんなくなりそうだなと思うので、商品のセレクトもブレブレで変わり続けるようなそんな店にしたいですね」(小池さん)。
「自分で仕入れる商品は“長く使えるいいもの”という視点で選んでいますが、持ち込まれた商品の交換(一般的には買い取りの意味)では基本的に何でも受け入れたいと思っています。以前、国分寺の古道具屋でアルバイトをしていたことがあるのですが、その時に友人が遊びに来た際に、こんなのあったんだ!?というような商品を選んで買っていってくれたんです。自分は店に長時間いて、いろいろ見ていたはずなのに全く目に入っていないものがある、ということが分かったんです。こういうお店って、お客さん自身が自分に合うものを発掘する、つまり、自分自身に出逢う場所なのかって考えるようになりました。あまり自分の価値観で固めると自分でもつまんなくなりそうだなと思うので、商品のセレクトもブレブレで変わり続けるようなそんな店にしたいですね」(小池さん)。
高円寺にお店をオープンさせた理由は物件と環境だそうで、当初は、駒場東大前の日本民藝館近くで探していたが、縁がなかったのだという。高円寺は、昔からよく通っていたことから近所の古着屋との交流もあったり、まちや店舗付近の力の抜けた雰囲気が気に入ったそうだ。場所は、近年、お店が点在している西友高円寺店の奥にある長仙寺の脇道を入ったところ。
「僕自身ネットはほとんど利用していなくて、付き合いも完全な“生(ナマ)派”。お店のSNSも一切やっていません」と言う小池さん。希望するお客さんには直接連絡先を聞き、イベントのお知らせなど、彼のガラケー(プリペイド携帯!)から直接メールするそうだ。今回の原稿チェックも郵送で送り、担当編集者が直接取りにいくという昨今のウェブマガジンの慣習からすると、懐かしくもあり、丁寧なコミュニケーションが新鮮だった。
取材時も、小池さんは、来店者に気さくに話かけたりコーヒーを淹れたり、西荻窪の「イト」という雑貨店を営む友人が訪れ談笑した後、「こい券」で商品を“交換”していくなど、ほのぼのした雰囲気だった。
「僕自身ネットはほとんど利用していなくて、付き合いも完全な“生(ナマ)派”。お店のSNSも一切やっていません」と言う小池さん。希望するお客さんには直接連絡先を聞き、イベントのお知らせなど、彼のガラケー(プリペイド携帯!)から直接メールするそうだ。今回の原稿チェックも郵送で送り、担当編集者が直接取りにいくという昨今のウェブマガジンの慣習からすると、懐かしくもあり、丁寧なコミュニケーションが新鮮だった。
取材時も、小池さんは、来店者に気さくに話かけたりコーヒーを淹れたり、西荻窪の「イト」という雑貨店を営む友人が訪れ談笑した後、「こい券」で商品を“交換”していくなど、ほのぼのした雰囲気だった。
「ここは、基本的に“自分の遊び場”だと思っていて、来てくれる人はお客さんであり友だちという感覚です。ここで共に遊びながら楽しみつつ、友だちを増やしていけたらと思っています。お店が消えていくことには理由があると思うし、時代との相性もあったりするので、そこで無理しようとは思いません」と小池さん。
不定期で、珈琲職人修行中の友人のコーヒースタンド「EAST END WHITE~coffee~」や、写真家植本一子さんが「YAKIGASHI うえもと」として焼き菓子店を出店している他、今後はイベントも開催していく予定だそうだ。
独自通貨の「こい券」に関しては、金属のものを友人の作家に製作してもらう計画がある他、同店に訪れた鳥取のゲストハウス関係者から、他店でも使用可能にしてはどうかといった提案をもらっており前向きに検討中など、今後も進化しながら飛び火していきそうだ。
取材・文 『ACROSS』編集部 仲村あゆみ
不定期で、珈琲職人修行中の友人のコーヒースタンド「EAST END WHITE~coffee~」や、写真家植本一子さんが「YAKIGASHI うえもと」として焼き菓子店を出店している他、今後はイベントも開催していく予定だそうだ。
独自通貨の「こい券」に関しては、金属のものを友人の作家に製作してもらう計画がある他、同店に訪れた鳥取のゲストハウス関係者から、他店でも使用可能にしてはどうかといった提案をもらっており前向きに検討中など、今後も進化しながら飛び火していきそうだ。
取材・文 『ACROSS』編集部 仲村あゆみ
新しい人
住所:東京都杉並区南高円寺3-56-5 105
営業時間:だいたい13:00〜だいたい20:00
営業時間:だいたい13:00〜だいたい20:00