彼らは「アーティスト」を名乗りながら、東京の寒空の下を移動している。たしかに、手製のイスやテーブルをかついでまちを歩くようすは「アートパフォーマンス」に見える。だが、彼らはパフォーマンスというよりも、まちの調査をおこなっている。昨晩、話をしていて、そう思った。
たとえば、歩道や広場にあの家具が設置されたとき、まち並みはどのように見えるのか。さらには、まちの人びとのふるまい、見えないルール、諸々の手続きなど、直接まちにはたらきかけながら、東京のまちを理解しようと試みているのだ。それは、あらかじめ見えている問題を解くためのフィールドワークではなく、まちの潜在的な可能性を知り、関係を変革してゆくフィールドワークのやり方なのだろう。
「…常に進んでいます。」というのは、彼らのアプローチが「モバイル・メソッド」であることの象徴だ。差し入れを持って行ったら、みんなでパクパクと食べていた。常に進んでいると、お腹がすくのだ。
彼らと出会って約1時間ほどいっしょに過ごした翌日、慶應義塾大学の加藤文俊教授は自身のフェイスブックにそう記した。