SHIBUYA109やユニクロ、多数の飲食店などが集まり、様々な人で賑わう道玄坂の大通りから脇道に入り、ストリップ劇場「渋谷道頓堀劇場」を過ぎてさらに路地裏へ数分ほど歩いたところにある雑居ビルに、週末になると「NEWS STAND(ニューススタンド)」の看板が現れる。
これは、2015年11月にオープンした5人の若手デザイナーが合同で運営する週末限定のショップで、ファッションが好きな若者が集まる新たなスポットとして話題となっている。
メンバーは、小田原愛美さん(27歳)、兼子鷹洋さん(28歳)、松岡眞一郎さん(32歳)、マシリトさん(37歳)山本拓さん(28歳)の5人。順番 に、「I&ME(アイ&ミー)」、「A.T.M(エーティーエム)」というアパレルブランドをはじめ、アート作品の「Sick Town(シックタウン)」、小物ブランドの「Beside the bag(ビサイドザバッグ)」、「hEaLtHibOyZ(ヘルシーボーイズ)」、「club sexy(クラブセクシー)」、「Awesome(オウサム)」と、5人それぞれが東京を拠点に自身のブランドを展開している。
「この立地や雑居ビルの一室の雰囲気が、大好きなニューヨークのアンダーグラウンドシーンで有名なエーロン・ボンダロフの『aNYthing(エニシング)』というブランドのショップに似ている、と思ったんです」と言う山本さん。
「エーロン・ボンダロフは、ニューヨークの若手クリエーターの間で人気のインターネットラジオ番組『Know Wave(ノーウェーブ)』の創設者で、『aNYthing』は、自分のブランド以外にも、知合いのクリエーターが手がけるアイテムやレコード、ZINE(ジン)やアート作品などの展示もしているとってもクリエイティブなショップなんです。ここだったら、そういうクリエイティブなショップができるかもしれないと思いました」と話す。
さらに、「どうせやるなら複数の方が面白い!?」と、遊び仲間であった他の3人に声をかけて今の5人のメンバーになったのだそうだ。
約18平方メートルほどの店内には、服や小物以外にも、「BOOK SELECTION(ブックセレクション)」として雑誌や書籍、レコード、CD、VHSフィギュアなどが並んでおり、入り口の横にはソファーが置かれ、モニターからは映画が上映されるなど、誰かの部屋のような空間になっている。
また、『EYESCREAM』や『honey.mag』、『STUDIO VOICE』、『relax』などの雑誌のアーカイブや、アートブックや写真集、小説や漫画なども豊富で、「昔のファッション・カルチャー系の雑誌って、ブランドのバックボーンについて詳しく説明していて、教科書的な役割が大きかったように思うんです。僕らより若い10代~20代前半の若い世代の人たちがファッションに関心を持つきっかけになればと思っています」(山本さん)。
商品の構成は、メンズ7:レディース3。メンバーのブランド以外にもクリエーター仲間のアイテムを取り扱っているほか、ときどきショップインショップとしてのスペースレンタルにも対応している。
「名前はあかせないんですが、著名人の先輩からの商品も多く、ふつうの古着屋では出会えないようなレアものも多いんですよ」(メンバー談)。ちょうど取材当日も開催中で、90年代初期のMILK BOY(ミルクボーイ)のアイテムが並んでいた。
コミュニケーション(宣伝)は画像共有アプリ「Instagram(インスタグラム)」のみ。そこに掲載された商品を求めて訪れる人や、来店者の投稿を見た人が翌週には訪れたり、地方や海外などからの来店も少なくない。
「今って、良くも悪くも不特定多数にアピールできる場ってインスタしかないじゃないですか。フライヤーや口コミのような感じで派生して、色々な人が来てくれるような、なんともいえないマッチングが面白いですね」(メンバー談)。
アイテムの写真以外にも、友人をモデルに店内のアイテムでスタイリングしたスナップを投稿。さらに、Tumblr(タンブラー)も用いて、来場者のスナップを投稿するなど、「スクロールの中でリアルタイムにみることができる雑誌」のような感覚で、周りを巻き込みながら実験的に更新中だという。
今後の目標は地方での“行商”にいくことだそうだ。
「リアルな拠点を持ちつつ、ソーシャルを通じて出会った地方や海外のお客さんのところに実際に出向き、交流できたら面白いなと思っています」(メンバー談)。
取材・文 仲村あゆみ(ACROSS編集部)
NEWS STAND(ニューススタンド)
営業時間:13時〜21時(毎週土・日曜日)