渋谷ハチ公にみんな集合や! 1月29日! ハチ公前サイファー!
2016年1月22日、Twitterにこんな投稿があった。ツイートの主は、ラッパーのACE(エース)さん。“サイファー”とは“ゼロ”という意味のヒンディー語で、それが転じて人々が輪になっている様を指し、「みんなで輪になって即興でラップをする」という文化のことで、渋谷に集まってラップをしよう、と呼びかけていたのだ。
29日当日の渋谷の天候は雨。夜に向かってさらに激しくなり、体感温度は実際の最低気温の5.4℃よりうんと寒いなか、ハチ公像前には若い男女が続々集まり、みんな息をのむようにしてACEさんの登場を待っていた。
予定時刻の19時過ぎにACEさんが姿を現した頃には、ハチ公前は超満員!あまりの人の多さでハチ公前での開催は不可能となり、急遽宮下公園に場所を移すことに。雨のなか傘もささず、ACEさんを先頭に公園への大移動となった。公園に到着すると、人々はぬかるむ足元などおかまいなしで、我先にとラッパーたちを取り囲んだ。
この日宮下公園に集まった若者たちは、合計すると300〜500名だったという。ラップを聴こうにも、人の壁に阻まれ、後ろの方ではほとんど何も聴こえないような状態だったが、それでもみんな夢中になって輪の中心に耳を傾けていた。
この日宮下公園に集まった若者たちは、合計すると300〜500名だったという。ラップを聴こうにも、人の壁に阻まれ、後ろの方ではほとんど何も聴こえないような状態だったが、それでもみんな夢中になって輪の中心に耳を傾けていた。
「「ハチ公前サイファー」っていうのはずいぶん前からあったんです」と言うACEさん。
ACEさんが、「サイファー」を始めたのは2009年頃。それから2011年までは高田馬場で開催していたという。その後しばらくブランクがあったが、2014年に入った頃からは高円寺や新宿、渋谷などで不定期に開催するようになり、ハチ公前でも何度かやったことがあったそうだ。
「2014年10月のある日、「ハチ公前サイファー」に人が大勢集まったときがあったんです。未成年も多かったので、夜には家に帰さなければならない。それで、場所をTSUTAYA前に変えて“大人の部”を開催したんです」(ACEさん)。
そこ(TSUTAYA前)では、ときどきストリートミュージシャンが演奏しているが、その日はたまたまドラマーのレルレ(ユージ・レルレ・カワグチ)さんが叩いていたという。
「あ、これ、スピーカーもマイクもあるし、セッションしたらヤバいんじゃないの?って思ったので、アイコンタクトで『じゃ!』っていう感じでさり気なくスピーカーを置いたんです。そうしたらめっちゃ人が集まって、『なんだこれ!』ってなった(笑)」(ACEさん)。
ACEさんが、「サイファー」を始めたのは2009年頃。それから2011年までは高田馬場で開催していたという。その後しばらくブランクがあったが、2014年に入った頃からは高円寺や新宿、渋谷などで不定期に開催するようになり、ハチ公前でも何度かやったことがあったそうだ。
「2014年10月のある日、「ハチ公前サイファー」に人が大勢集まったときがあったんです。未成年も多かったので、夜には家に帰さなければならない。それで、場所をTSUTAYA前に変えて“大人の部”を開催したんです」(ACEさん)。
そこ(TSUTAYA前)では、ときどきストリートミュージシャンが演奏しているが、その日はたまたまドラマーのレルレ(ユージ・レルレ・カワグチ)さんが叩いていたという。
「あ、これ、スピーカーもマイクもあるし、セッションしたらヤバいんじゃないの?って思ったので、アイコンタクトで『じゃ!』っていう感じでさり気なくスピーカーを置いたんです。そうしたらめっちゃ人が集まって、『なんだこれ!』ってなった(笑)」(ACEさん)。
その後ACEさんとレルレさんはTwitterで連絡を取りあう仲になり、「またやりましょう」ということになったという。知り合いのラッパーたちにも「面白いから絶対来た方がいいよ!」と呼びかけ、回数を重ねていくうちに、ラッパーの掌幻(しょうげん)さん・CHARLES(シャルル)さん・OneMi(ワンミー)さん、ギターのローレンス(ユースケ・ローレンス)さんといったミュージシャンたちが徐々に加わり、現在の編成になったのだそうだ。
当初は毎週土曜の夜に開催されていたが、現在は金曜夜に開催されており、このサイファーが、 「渋谷サイファー」と呼ばれるようになっていったのだという。ふつう“○○サイファー”というと、○○という場所で開催されるサイファーを指すが、この「渋谷サイファー」は少し特殊で、ACEさんたちがやっているバンド形式のサイファーの呼び名というイメージが定着しているそうだ。
「渋谷サイファー」は、固定したメンバーで形成されているのではなく、いつでも飛び入り参加OKで、黄猿さんやKZさんといったラッパーたちが参加することもあれば、通りすがりのミュージシャンがセッションに加わることもあるそうだ。 ACEさんはこれまでに印象深かった人として、トロンボーンの2人組やディジュリドゥ奏者のchapa(チャパ)さんなどを挙げてくれた。ブレイクダンサーが音楽に合わせて踊り、道端にあったガラス片でけがをしてしまうというハプニングもあったという。酔っぱらったサラリーマンが乱入し、初めてのラップを披露したこともあったそうだ。
当初は毎週土曜の夜に開催されていたが、現在は金曜夜に開催されており、このサイファーが、 「渋谷サイファー」と呼ばれるようになっていったのだという。ふつう“○○サイファー”というと、○○という場所で開催されるサイファーを指すが、この「渋谷サイファー」は少し特殊で、ACEさんたちがやっているバンド形式のサイファーの呼び名というイメージが定着しているそうだ。
「渋谷サイファー」は、固定したメンバーで形成されているのではなく、いつでも飛び入り参加OKで、黄猿さんやKZさんといったラッパーたちが参加することもあれば、通りすがりのミュージシャンがセッションに加わることもあるそうだ。 ACEさんはこれまでに印象深かった人として、トロンボーンの2人組やディジュリドゥ奏者のchapa(チャパ)さんなどを挙げてくれた。ブレイクダンサーが音楽に合わせて踊り、道端にあったガラス片でけがをしてしまうというハプニングもあったという。酔っぱらったサラリーマンが乱入し、初めてのラップを披露したこともあったそうだ。
そんな「渋谷サイファー」の魅力についてACEさんに聞いた。
「まずは生演奏。で、ラップも即興。しかも、いる人が多ジャンル。女の子ラッパーのシャルルちゃん、正統派ラッパーの掌幻、沖縄のワンミー、で、おれ(ACEさんは日本育ちのブラジル人)。そこにどう見てもパンクロッカーなレルレさんと、いつもチェックのシャツを着ているジャジーなローレンス。この面子が立ってるだけで、ぱっと見、『なんなのこの異種格闘技は!』ってなるわけですよ(笑)(ACEさん)。
通常のサイファーとの違いは、音楽ジャンルの自由さだけにとどまらない。本来のサイファーは純粋に内輪でラップを楽しみ仲間との交流を深めるためのものだそうだが、「渋谷サイファー」は完全にその日のその場の即興性にゆだねられており、サイファーそれ自体が「見せ物」になっているというのが大きな特徴だ。
「いまやってる渋谷サイファーは、俺たちが発信してお客さんが輪になるっていう意味のサイファーなんです。そういうサイファーって他にないんじゃないですか?日本初だと思いますよ」(ACEさん)。
サイファーはともすると「怖い人のたまり場」のように見られがちだ。Bボーイたちが集まってぶつぶつと何か呟きながら身体を揺らしている光景を見れば、避けようとする一般の人も少なくないだろう。しかし、この「渋谷サイファー」はバンド形式で、音楽のジャンルも自由な上、ライブのような感覚で聴衆を巻き込むスタイルになっているので、怖さや得体の知れない感じとは違った印象を人々に与えているのは確かだ。
「ヒップホップを好きじゃない人やラップを聴いたことない人が、楽しそうな顔してラップを見てくれる。それがきっかけでラップを始めた人も何人かいて、それって発信できてるってことだと思いますね。そうやってラップが広がって、サイファーが「怖い人のたまり場」じゃなくてアートとして成立すればいいなって思ってます」(ACEさん)。
この開かれた「渋谷サイファー」は、もともとラップに興味のある人だけが集まってやっていたサイファーとは違い、音楽や人種の壁だけでなく、ラップに対する偏見や「路上でやってるやつらなんて売れてないでしょ」というような偏見を持つ人々の心の壁をも取っ払ってしまう力があるとACEさんは話す。
「まずは生演奏。で、ラップも即興。しかも、いる人が多ジャンル。女の子ラッパーのシャルルちゃん、正統派ラッパーの掌幻、沖縄のワンミー、で、おれ(ACEさんは日本育ちのブラジル人)。そこにどう見てもパンクロッカーなレルレさんと、いつもチェックのシャツを着ているジャジーなローレンス。この面子が立ってるだけで、ぱっと見、『なんなのこの異種格闘技は!』ってなるわけですよ(笑)(ACEさん)。
通常のサイファーとの違いは、音楽ジャンルの自由さだけにとどまらない。本来のサイファーは純粋に内輪でラップを楽しみ仲間との交流を深めるためのものだそうだが、「渋谷サイファー」は完全にその日のその場の即興性にゆだねられており、サイファーそれ自体が「見せ物」になっているというのが大きな特徴だ。
「いまやってる渋谷サイファーは、俺たちが発信してお客さんが輪になるっていう意味のサイファーなんです。そういうサイファーって他にないんじゃないですか?日本初だと思いますよ」(ACEさん)。
サイファーはともすると「怖い人のたまり場」のように見られがちだ。Bボーイたちが集まってぶつぶつと何か呟きながら身体を揺らしている光景を見れば、避けようとする一般の人も少なくないだろう。しかし、この「渋谷サイファー」はバンド形式で、音楽のジャンルも自由な上、ライブのような感覚で聴衆を巻き込むスタイルになっているので、怖さや得体の知れない感じとは違った印象を人々に与えているのは確かだ。
「ヒップホップを好きじゃない人やラップを聴いたことない人が、楽しそうな顔してラップを見てくれる。それがきっかけでラップを始めた人も何人かいて、それって発信できてるってことだと思いますね。そうやってラップが広がって、サイファーが「怖い人のたまり場」じゃなくてアートとして成立すればいいなって思ってます」(ACEさん)。
この開かれた「渋谷サイファー」は、もともとラップに興味のある人だけが集まってやっていたサイファーとは違い、音楽や人種の壁だけでなく、ラップに対する偏見や「路上でやってるやつらなんて売れてないでしょ」というような偏見を持つ人々の心の壁をも取っ払ってしまう力があるとACEさんは話す。
ACEさんの活動は、路上でのサイファーだけにとどまらない。2015年の春からは、毎週木曜日にラップスクールも開校しており、サイファーに入ってみたいけれど恥ずかしくてできないという人や、ラップを始めたてで右も左もわからない、ストリートのカルチャーにいない人たちに対してラップを教えている。
「一般的なラッパーたちからすると、『ラップは人に教わるもんじゃねえ、ストリートで教わるもんだ』ってなる(笑)。それはその通りですよ。ただ、別にいいじゃない、とも思うんです。できない人もいるし、知らない人もいるから、窓口を拡げてあげればいい。それでそいつらがいつかヤバいラッパーになったらそれでよくない?って思うんです」(ACEさん)。
「一般的なラッパーたちからすると、『ラップは人に教わるもんじゃねえ、ストリートで教わるもんだ』ってなる(笑)。それはその通りですよ。ただ、別にいいじゃない、とも思うんです。できない人もいるし、知らない人もいるから、窓口を拡げてあげればいい。それでそいつらがいつかヤバいラッパーになったらそれでよくない?って思うんです」(ACEさん)。
ラップスクールの他にもCSチャンネルのテレビ番組に出演するなど多忙を極めるACEさんだが、これからもストリートでのサイファーを続けていくつもりだという。また渋谷だけにこだわらず、いろいろな場所に「渋谷サイファー」の輪を広げていきたいというが、原点はやはり渋谷のストリートにあると話す。
「渋谷は街の音量が大きい。雑音が大きい。ぶっちゃけ俺たちは雑音にまぎれたいんで、それがちょうどいいんです。(警察などに)止められたくないんですよね。あんまり遠くまで音が響いてると、目立っちゃうじゃないですか。目立ちたいけど、交番の方までは音が届かない。だから渋谷は俺らに優しいですね、いろんな音が鳴ってるから」(ACEさん)。
あらゆる音楽ジャンルや奏者、演者と観客がごちゃ混ぜになった自由な「渋谷サイファー」は、あらゆる人やものが発する音がごちゃ混ぜになっている「渋谷のスクランブル交差点」のイメージと重なっているのだと、ACEさんへのインタビューを通して再認識した。
次回以降の開催についてはいまのところ未定。開催が決定すればACEさんの公式Twitterアカウントで告知されるが、だいたいが当日の告知のため、特に金曜日にはACEさんのツイートをチェックするのがよさそうだ。
【取材/文:大西智裕(ACROSS編集部)】
「渋谷は街の音量が大きい。雑音が大きい。ぶっちゃけ俺たちは雑音にまぎれたいんで、それがちょうどいいんです。(警察などに)止められたくないんですよね。あんまり遠くまで音が響いてると、目立っちゃうじゃないですか。目立ちたいけど、交番の方までは音が届かない。だから渋谷は俺らに優しいですね、いろんな音が鳴ってるから」(ACEさん)。
あらゆる音楽ジャンルや奏者、演者と観客がごちゃ混ぜになった自由な「渋谷サイファー」は、あらゆる人やものが発する音がごちゃ混ぜになっている「渋谷のスクランブル交差点」のイメージと重なっているのだと、ACEさんへのインタビューを通して再認識した。
次回以降の開催についてはいまのところ未定。開催が決定すればACEさんの公式Twitterアカウントで告知されるが、だいたいが当日の告知のため、特に金曜日にはACEさんのツイートをチェックするのがよさそうだ。
【取材/文:大西智裕(ACROSS編集部)】