田園都市線・池尻大橋駅から徒歩約5分の国道246号沿いに、ありそうでなかった納豆の専門店が07年12月21日にオープンした。「納豆工房・せんだい屋 池尻店」は、山梨に本社を構える納豆の製造メーカー、株式会社せんだいが運営する直営店。昭和39年から続く山梨県笛吹市の本店と同店の2店舗を展開している。店名の「せんだい屋」は創業者の出身地である宮城県の仙台が由来。
本社があるのは観光地として知られる山梨県石和温泉街。高級旅館の食事用に卸していた納豆が、主に東京方面からの観光客の間で旅の土産にと購入するなど評判を呼び人気に。その後、インターネットなど通販売り上げも増加。「もっと手軽に買えるようにしてほしい」という要望も多く寄せられるようになり、東京に直営店をオープンすることになったのだそうだ。
当初は、山梨から東京への交通手段として親しみのある、JR中央線沿線の物件を探していたが、たまたま縁あって、まったく候補にも挙がっていなかった世田谷区池尻に決定。売り場面積は物販コーナーと25席のイートインスペースを含めて26.5坪。30種類の納豆はすべてオリジナルで、毎日山梨の工場から運ばれ、加工品を合わせ全部で40種類の納豆が並んでいる。単価は1商品あたり平均200〜300円。売れ筋は、富士山麓の青大豆を使った「富士山」(300円)、八ヶ岳山麓の大豆で作る「八ヶ岳」(250円)、カリカリ梅が入った「梅たっぷり納豆」(200円)、「えだまめ納豆」(180円)など。
「うちは変わった商品が多く、説明が必要なものもあるので、購入の際には声をかけるようにしています。でも、お客さんの方から話しかけてくることが多いですね。それに加えて、車で通りかかった時に気になって来たとか、誰に勧められて来たなど、なぜ来店したかという理由を話してくれる方も多く、常連の方の自己申告もあります(笑)」(同社常務取締役兼店長の伊藤英文さん)。
納豆という商品柄、ターゲットに当初は中高年層を予想していたが、実際には近所の住民が中心に、高校生からお年寄りまでと幅広い年齢層が訪れるそうだ。営業時間は10時30分〜21時。夕方は仕事帰りの20〜30代のOLやサラリーマン、夜になるとひとり暮らし風の若者が多くなるという。客単価は平均すると700円ほど。中には5,000〜6,000円という贈り物のニーズもあるそうだ。
同社でイートインスペースは、同店が初。「八ヶ岳の米」や、黄身が濃い「さくらたまご」など、都内ではなかなか食べられない山梨のローカル食を積極的に提供している。ちなみに人気メニューは、好きな納豆を選んで、ご飯、味噌汁、漬物が付いた「納豆定食」680円。利用者から、スパゲティやロコモコなど、より女性向けの洋風メニューを望む声もあるとか。
また、もう一つの目玉ともいえるのは、店先にある特注の自動販売機。24時間稼働しているため、閉店後の23〜24時頃には順番待ちをする人もいるそうだ。卵の自販機をヒントにしたという小さなコインロッカー式で、導入したのは15年ほど前。戦前の創業時からなじみ深かった甲府を離れ、笛吹に工場を移転した際に、“製造工場で直接できたての納豆を買うことができる”という認知度を高めるために設置したのがきっかけだそうだ。また、工場付近に住んでいない人にも食べて貰いたいという思いから、山梨県内の各地に設置し、現在13台が稼働している。
「大豆食品はブームとはいえ、昨年某テレビ番組が納豆の健康効果を誇大に偽って以来、イメージは回復しきっていない気がします。お客さんでも『しばらく食べていなかったけれど、このお店ができたからまた食べるわ』という方もいましたので。今は納豆に興味を持ってもらいたいですね。メニューを見て、『どんな料理だろう?』と思ったり、『池尻に納豆屋ができた』『行った!』と日常生活での話題になることで、納豆業界全体が活気づいたらいいと思っています」(伊藤さん)
今後の目標は都内での知名度を上げることで、そのためには、「イートインのメニューのバリエーションを増やし、さらにさまざまな納豆の食べ方を提案していきたい」と伊藤さんは言う。そして、“この店舗だけ”という限定感も重要なポイントだとし、前面に出していきたいとのこと。とはいえ、納豆という商品の性質上、その旨みが損なわれないための温度管理を行き届かせるためであり、賞味期限、消費期限の徹底にも配慮して、今後は、さらなる店舗展開や、他店への卸し、自販機の設置などの予定は一切ないという。
{取材・文/笠原桐子+『ACROSS』編集部}
「大豆食品はブームとはいえ、昨年某テレビ番組が納豆の健康効果を誇大に偽って以来、イメージは回復しきっていない気がします。お客さんでも『しばらく食べていなかったけれど、このお店ができたからまた食べるわ』という方もいましたので。今は納豆に興味を持ってもらいたいですね。メニューを見て、『どんな料理だろう?』と思ったり、『池尻に納豆屋ができた』『行った!』と日常生活での話題になることで、納豆業界全体が活気づいたらいいと思っています」(伊藤さん)
今後の目標は都内での知名度を上げることで、そのためには、「イートインのメニューのバリエーションを増やし、さらにさまざまな納豆の食べ方を提案していきたい」と伊藤さんは言う。そして、“この店舗だけ”という限定感も重要なポイントだとし、前面に出していきたいとのこと。とはいえ、納豆という商品の性質上、その旨みが損なわれないための温度管理を行き届かせるためであり、賞味期限、消費期限の徹底にも配慮して、今後は、さらなる店舗展開や、他店への卸し、自販機の設置などの予定は一切ないという。
{取材・文/笠原桐子+『ACROSS』編集部}