NEWPORT(ニューポート)
レポート
2008.11.07
フード|FOOD

NEWPORT(ニューポート)

ビオワインと良質の音楽でもてなすミュージック・カフェ&バー

店内奥にはDJブースを設置。週末には
イベント「NEWSOUND」を開催している。
気軽にビオワインを楽しめるのが魅力。
フードはワインに合う地中海料理が中心。
木を基調にグリーンのインテリアで統一。
暖かみが感じられる店内。
入り口のコンテナガーデンとネオン管が目印。
ファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)800円。
渋谷区富ヶ谷の商店街に、音楽を聞きながら落ち着いて食事ができるミュージック・カフェ&バー「NEWPORT(ニューポート)」が佇む。同店は、以前に弊サイトでも紹介した、デザイン事務所ブルーマークが運営するカフェ「インコ」が08年4月にリニューアルしたもので、共同経営者兼プロデューサーにスパイラルレコーズのディレクター鶴谷聡平さんを迎えた。

鶴谷さんは音楽イベントの主催やレベール・プロデューサーとしての活動など、幅広い音楽活動を行っている人物だが、飲食店の経営は初めての試み。

「長年の音楽関係の仕事から、商品としての音楽紹介だけでなく、より広い意味でのカルチャーを伝えていきたいと思うようになっていたんです。場所を持ちたいと考えた時に、一番シンプルで誰にでもわかりやすいのは、飲食と組み合わせることだなと」(鶴谷さん)。

仕事上のつながりもあったブルーマークのアートディレクター、菊地敦己さんに自ら志願し、飲食店の運営を勉強するつもりでインコのスタッフとして働いていた。

折しも、カフェとしての人気が定着しつつあったインコは、営業時間を夜間にシフトしていくことを視野に入れて、新たな方向性を模索していた。様々なタイミングが重なり、08年4月には鶴谷さんのコンセプトに基づき、共同経営という形でリニューアルオープンとなったというわけだ。

リニューアルにあたり、内装は音響効果を考えた設備を整えようと、ドイツの音響メーカー、ムジークエレクトロニック・ガイザン社製のスピーカーを導入。音楽スタジオなどで使われる以外はめったにお目にかかれない仕様だ。壁には木目の有孔ボードとグラスウールを併用し、臨場感あふれる音が楽しめるよう整備した。吸音効果をねらって床材も木目なので、店に程よいぬくもり感も生まれて効果倍増。最奥にはDJブースを設け、毎週土曜日の夜はゲストDJがセレクトした音楽を聞かせるイベント「NEWSOUND」も開催する。扱う音楽のジャンルは多様だが、雰囲気を盛り上げそれでいて食事や会話の邪魔にならない、ジャズやワールドミュージックが最もフィットするそうだ。

フードメニューは、かねてより鶴谷さんが気に入っているビオワイン(無農薬有機農法のブドウで造ったワイン)やオーガニックリキュールと、それに合う料理をシェフとともに考案。地中海料理、フランス家庭料理、チュニジア料理をミックスした内容となり、一品当たり500円から1,300円、客単価は1500円から3500円程だという。

店舗のリニューアルによって、客層も大きく変化した。インコでは女性客が9割を占めていたが、現在は男性客が増え、女性6割に男性4割。年齢層も30歳代を中心とした大人世代が多くなった。平日は近隣の住民が帰宅前に立ち寄って一杯、というケースが多く、週末には、デザインやカルチャー全般に感心の高い人たちが多く来店するそうだ。

「僕は、最近の大規模な都市開発や、マーケットありきの店舗計画や商品開発などには多少の違和感があるんです。小さい店ならではの独特な空気感を目指したい。本当の雰囲気は人が作り出すものなので数値化できないと思います。予定通りに行かない面白さがあっていい。いろいろな人がコミュニケーションできる場所にしていきたいと思っています」(鶴谷さん)。

そのためには最初のコンセプトだけではなく、日々の丁寧なサービスが重要だという。この押し付けがましくない柔軟な姿勢によって来店客はくつろぎを得られ、地域とも調和するのだろう。

「わざわざ遠くから目指して行く街ではない、地元ならではの静かな連帯感が感じられるところが魅力だと思います」(鶴谷さん)。

富ヶ谷や上原の界隈は、渋谷、原宿、新宿を結ぶ繁華街トライアングルに近いためアパレル企業が多く、また、NHK(日本放送協会)に徒歩圏ということもあり、テレビ関係やデザイン事務所などが集中している。一方で、代々木公園を臨む静かな住宅街という顔も併せ持っている。

そんな独特のエリア特性を背景に、ここ数年で在勤者や住民をターゲットにした個人経営の小規模店舗が続々とオープンしている。以前幣紙で紹介した目黒銀座と同様、古い商店街がビルに立て直してテナント貸しするケースも多く、今後もまだまだ出店ラッシュは続くと思われる。代々木上原、八幡エリアは今後どのように変化して行くのか注目していきたい。

[取材・文/フリーエディター・ライター藤原祥子+アクロス編集部]


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