本ミュージアムのディレクター兼主任学芸員
ヴァレリー・スティールさん。
会場に入ると、まずは
1980年のコム・デ・ギャルソンやイッセイ・ミヤケをまとったボディが出迎えてくれる。
1980年代の
「ファッション革命」が、日本ファッションの「現在」につながる軌跡になったという前提を理解してもらうためのイントロだ。
メインのギャラリーでは、片側には暴走族の”特攻服”から”森ガール”まで、広義の「ストリート・ファッション/サブカルチャー」が、また反対側にはアンダーカバー、sacai、matohu、GVGVなど「ハイ・ファッション」が展示されている。背景に使われているのは、東京の街を写したモノクロの写真だ。
「片側は、渋谷、原宿、秋葉原、反対側は表参道というイメージでまとめた。全体的には、ブレードランナーのようなサイバー・パンクを思わせるランドスケープを作りたかった(スティール氏)」。
もうひとつの目玉は、会場奥のセンターに配置されたメンズの一角。最近、ニューヨーク・ファッションウィークで初のプレゼンテーションを行ったN.Hoolywood(Nハリウッド)、John Lawrence Sullivan(ジョン・ローレンス・サリバン)、ミハラヤスヒロなどで構成されている。
「メンズは日本のファッションの構成要素のなかで、一番興味深い部分のひとつでありながら、あまり海外から注目されてこなかった。だからこそ、独立したコーナーを作ることが重要だと考えました(スティール氏)」
スティール氏自身も、日 本ファッションの熱烈な支持者。スティール氏の自宅を取材させてもらったことがあるが、コム・デ・ギャルソン、ジュンヤ・ワタナベ、アンダーカバーなどな ど、彼女のクローゼットを占める日本ブランドの割合に驚いたことを覚えている。東京コレクションにもたびたび足を運び、新世代のデザイナーの研究にも余念 がない。
「一番難しかったのは、どのデザイナーをフィーチャーするかを決める作業でした。特に近年登場してきた新世代には、注目すべきデザイナーが、ここに紹介できたデザイナーの3倍くらいは存在する。最終的には、今の日本のファッションの”スナップショット”を構成することを心がけた。もっと深く探求したい人には、東京コレクションを訪れてほしい(スティール氏)」。
このエキシビジョン、開催期間は来年1月8日まで。なお、同展覧会を記念して出版されるブックには、「アクロス」編集室の定点観測の過去の写真も掲載される予定です。
[取材・文/佐久間裕美子(NY 在住ライター)]