東急田園都市線の池尻大橋駅または三軒茶屋駅から徒歩約15分。世田谷公園の反対側、国道420号線から路地を少し入った場所に「NOZY COFFEE(ノージーコーヒー)三宿店」がある。同店は、「シングルオリジン」の提供にこだわった、自家焙煎のコーヒー専門店。「シングルオリジン」とは、生産された国・地域と生産処理方法が明確で、一切ブレンドされていないコーヒー豆のことをいう。2010年8月のオープン以降、弊サイトで紹介した「TOLO COFFEE & BAKERY(トロコーヒーアンドベーカリー)」など飲食店への卸しや、「伊勢丹メンズ館」、「東急ハンズ」「ARTS&SCIENCE(アーツ&サイエンス)」へのイベント出店と着実に存在感を表していることから、早速取材した。
コーヒーが最大限楽しめるよう配慮された店舗は、コーヒーとそこで働く人が主役になれるよう、無駄な装飾を排除したシンプルな内装。地下のカウンターから大きな釜での焙煎作業が間近に見られる様子はまさにコーヒーファクトリーといった雰囲気だが、そんな中にも温かみが感じられる空間となっている。広さは10坪、席数は4席。内装デザインは「パシフィックファニチャーサービス」が手掛けた。
運営元は株式会社NOZY珈琲で、オーナーは能城(のうじょう)政隆さん(24歳)。能城さんとコーヒーの出会いは慶応大学環境情報学部(SFC)在籍中に、大手コーヒーチェーン店でバイトをしたことから。バイトを通じてコーヒーの奥深さやお客様に伝える楽しさを知った能城さんは、豆やフェアトレードなどについて研究し知識を深めていった。また、エチオピアのコーヒー生産者の生活を取り上げたドキュメンタリー映画『おいしいコーヒーの真実』を観たことをきっかけに、大学3年時にはエチオピアを訪問。
「エチオピアは、貧しさはある反面、同時に雄大な自然、家族全員でコーヒーを飲む習慣といった内面の豊かさがありました。カフェで現地の人に『エチオピアのコーヒーはおいしいだろう?』と言われたので『おいしい!』と伝えたら、とても喜んでくれたんです。ですが、日本で飲めるコーヒーはブレンドが主流。飲んでおいしいと思っても、そこに生産者への思いはなかなか起きません。消費者が『エチオピアのコーヒーはおいしい』と言えるようになれば生産者もすごく喜ぶんじゃないか、そのような思いがあった学生時代に国内の珈琲店やカフェをさまざま回ったことで辿り着いたのが、シングルオリジンです」(代表取締役/能城政隆さん)。
“自分にしかできない仕事”を模索していた能城さんは、大学4年生のときに、大学の側の湘南台で前身となるコーヒースタンド「のーじー珈琲」を開店。学業やバイトと並行して卒業までの半年間営業するなかで、クオリティや販売方法を試行錯誤して学んだそうだ。その後、2010年3月に大学を卒業すると、自分の好きなコーヒーでたくさんの人を笑顔にしたいという思いから、バイト仲間だった菊池伴武さん(27歳)、富宿(ふうしゅく)のぞみさん(26歳)の他、佐藤公倫さん(30歳)を誘い、同年5月に会社を設立。8月に現店舗をオープンした。
「ブレンドが主流のなか、シングルオリジンというイノベーションでコーヒーカルチャーを変えられる!と思いました。自分にしかできない、やりたい夢を描くことができたのにやらないのはもったいない、10年後では遅いと、起業を決意しました」(能城さん)。