場所は、新大橋通りを入ったオフィス街で、寿司屋に隣接するマンションの一角。一見、駐車場スペースの管理室のようにも見えるが、店頭には不思議なテトラポット型のぬいぐるみや雑貨などがディスプレイされており、扉上には「ミヤゲヤ」と書かれた手彫りの看板が、工事現場の小さな照明でライトアップされている。ガラス扉の奥には、カラフルな雑貨、輸入食品が棚一面に並ぶのが見える。
「出店のきっかけは6年前の結婚・妊娠。仕事を引退し、出産後も育児をしながらできる仕事をしたいと考え、昔からの夢だった、”自分の好きなものを集めた店”を作ることにしました」と話すのは、 「築地ミヤゲヤ」
オーナーの増倉茜さん(31)。
5歳までを北海道で過ごし、高校からは沖縄で暮らすなど、飲食業を営む両親とともに各地を転々としてきた増倉さんが、幼少から特に夢中だったのが”魚”。「昔から海が好きで、趣味はダイビング。特に魚は見るのも、食べるのも好きだった」そうで、20代はスーパーで水産加工職を経験した。さらに、03年には魚市場の中心地・築地で働くために上京。職場で出合ったご主人と結婚・退社するまで、約3年間せり場の手伝いをしていたという。
出店の際にこだわったのは、築地という立地。育児を優先するため、自宅と子供の幼稚園、さらにご主人の勤務先・築地市場が近い同エリアでの出店が必須条件だったという。資金は育児をしながらアルバイトをして貯金。予算内で物件を探したところ、もともと弁当屋だったという1坪の物件が見つかった。
「当初は、キーホルダーやボールペン、食品などオリジナルの”築地みやげ”を企画・販売したかったんですが、初期資金が足りず、自分の好きなものをセレクトした店に。すでに屋号登録をしていたので、店名もそのまま片仮名の『ミヤゲヤ』にしました」(増倉さん)
商品のラインナップは、7割が輸入食品で、残りの3割が雑貨。セレクトの基準は、「自分と子どもが好きなもの」で、増倉さん自らが問屋への発注・買付けを行っている。食品は、牛乳に差してかき混ぜるとチョコレートドリンクになるハンガリーの「クイックミルク」(250円)をはじめ、菓子類や缶詰・瓶詰、調味料、パスタ、乾麺など。輸入元は、アメリカ、ドイツ、イタリア、スペイン、タイなどが中心。仕入れの際に全て試食して、自分が「おいしい」と思ったものだけを揃えるという。
雑貨のセレクトも個性的だ。スコップ形のスプーン、スパナ型のスプーンなどの「ガテン系カトラリー」250円、テトラポット形のぬいぐるみ「テトぐるみ」(2,940円)をはじめ、マンホールや重機など土木関係の素材を使ったグッズが豊富。実は、増倉さんは沖縄で大工をしていた経験もあり、工場や橋、鉄塔、廃墟などの土木建築物(一部マニアが存在する”ドボク系”と呼ばれるジャンル)の鑑賞が趣味。知り合いのドボク系ブランド「マニアパレル」とのコラボTシャツ「まぐろっT」(2,400円)なども販売する。そのほか、アメリカ発のキーホルダー、昔のパックマンやインベーダーなどのゲームもののほか、ポップなキャラがあしらわれた企業の販促物や、子ども向けのおもちゃやアクセサリーなど、どこか懐かしくキッチュなアイテムが揃う様子は、昔懐かしい駄菓子屋さんを彷彿させる。