個性的な飲食店が集積する東京・代々木上原の駅から徒歩2分ほどの場所に「按田餃子(あんだぎょうざ)」がオープンした。店名から分かる通りメニューは餃子、しかも水餃子だけに絞った珍しい業態である。運営は(株)包田包。オーナーは料理研究家の按田優子さん、カメラマンの鈴木陽介さんで、立ち上げにはフードスタイリストの城素穂さんも関わっており、有志メンバーの竹野和泉さんがマネージャーとして運営を行う。
2011年9月に書籍『冷蔵庫いらずのレシピ』出版を記念して、代々木上原の「hakoギャラリー」でイベントを行った際に、撮影を務めた鈴木さんの提案で、掲載メニューである水餃子を振る舞ったところ、大好評。
「また食べたいという声が多くて、調子に乗ったと言いますか(笑)。それなら書籍の製作に関わったメンバーでお店をやってみようかと、半ば勢いでスタートしました」(鈴木さん)
2012年2月に物件を契約し、約3ヵ月の準備期間を経て2012年4月にオープンした。鈴木さんはもともと代々木上原に事務所を構えており、按田さんも代々木上原の乾物を使ったデリでマネージャーとして勤務していた経歴の持ち主。出店先に馴染みのある代々木上原を選んだのは、ごく自然な流れだったという。しかし、代々木上原を選んだ背景には、もう1つ大きな理由がある。
「上原にはファストフードチェーン店はたくさんあるものの、夜遅くまで開いていて、女性が一人で気軽にきちんと食事できる飲食店が少ないんです。私自身、そういうお店があったらいいなと常々思っていましたし、駅にあるスーパーでお惣菜を買う女性の姿をよく見かけていたので、ニーズはあると感じていました」(鈴木さん)
そこで、「女性にやさしい餃子を」というコンセプトのもと、夜遅い時間に食べても胃にもたれず、カロリーが控えめのヘルシーな水餃子にメニューを絞った。具材にニラやニンニクは不使用、焼き餃子のように衣服や髪ににおいが付かないように、水餃子にしたそうだ。
席数はカウンター6席、4名がけ掛けのテーブル1席、計10席のこぢんまりとしたスペース。「広すぎず、少人数で回すにはちょうどいいキャパ」(竹野さん)という約20平米の物件は、もともと日本茶店だったそう。内装は“乙女風雀荘”をイメージし、古道具屋で購入した建具に解体家屋から放出された古いガラスをはめ込み、同じくUSEDの椅子やテーブルを配置。店内の壁には、鈴木さんが撮影した餃子とスイカの写真が飾られている。