「ゴントラン シェリエ 東京」(以下、ゴントラン)は、フランスの人気ベーカリーショップの日本初上陸である。今回出店した「BC SALON SHIBUYA」は、2007年から同社のセレクトショップの複合店舗として営業していたが、それらのショップが渋谷ヒカリエへ移転したことから、飲食に業態転換。近辺に女性の来街者が増えることを見越して、大人の女性をターゲットにしたベーカリーレストランをつくることに決めたという。
本格的な味を提供するために、パリの若手パン職人のゴントラン シェリエ氏(34歳)と契約。ルカ・カールトンなど三ツ星レストランを経て独立し、現在はパリとシンガポールに店を構え、テレビ出演やレシピ本の出版も行う新進気鋭のパン職人である。
1階がベーカリーショップ&カフェで、2階がパンとそれに合う料理を楽しめるカフェテリアという構成。2階は60席。
パンのメニューはすべてゴントラン氏が制作。シソや味噌を使ったバケットサンドなど素材の組合せが特徴だ。パリと同じ味が楽しめる「パリのパン」と日本に合わせてつくられた「東京のパン」に分かれ、種類は常時約70種類。主なメニューは、パリから持ち込まれた自家製酵母でつくる「バゲットトラディション」(280円)、「イカスミバゲット」(200円)、クロワッサン生地をサブレで包んだ「パンメロン」(200円)など。サンドイッチ用のバンズは、黒コショウ、パプリカ、クレソン、イカスミ、カレースパイスの5種類のバリエーションがあるのも珍しい。
カフェテリアでは、フレンチベースの料理を提供しており、こちらのメニューもゴントラン氏が監修した。ランチは「季節野菜のサラダプレート(パンバスケット付き)」(1,200円)、ディナーは「黒毛和牛のビーフシチュー」(1,800円)などを提供。客単価は、ランチ1,200円、ディナー3,000円、1階が700〜800円。
メインターゲットは20代半ば〜の男女。時間帯によって大きく客層が異なり、朝は通勤途中のビジネスマンやOLが朝食やランチ用のパンを購入し、昼はOLや40代、夜は再びビジネスマンやOLが翌朝に食べるパンを購入していくそうだ。休日になると年齢層が若くなり、カップルの姿も見られるという。男女比は7割が女性と圧倒的に多く、世代は20代〜60代まで幅広い。
「今の時代はエッジが立った、特徴のある商品をストーリー性を持って発信することが、ブランドをつくる上でもお客様の支持を得る上でも大切だと思っています。今後も新しいことにチャレンジしていく姿勢は変わりません。FILBERT STEPSもその1つの表れで、今後はチェーン化を考えています。ゴントランについても、若手の彼といっしょにフランスのパンの東京での在り方を探り、出店先を限定しながら、本物のフランスのパン、フランス人と日本人が考えた新しいパンの在り方を提案していきたいです」(ベイクルーズ フードディビジョンディレクター高橋秀典さん)
冒頭でも述べたように、ここ数年、素材にこだわり、手間暇かけて丁寧に作ったこだわりのコーヒーやパンを提供するショップが相次いでオープンし人気となっている。その背景には、ファストな大量生産に対するスロー感覚の見直しや、ハレの日だけでなく、日常(=ライフスタイル)にこそこだわりたい、という事業者・消費者の心理変化があると言えるだろう。
今回取材したベイクルーズの2業態は、そんなバージョンアップした日常生活の感覚をビジネスとして取り入れスキーム化しようというテン年代らしい動きと言えるだろう。
取材・文 緒方麻希子+ACROSS編集部