cafe bar P.M.9/Mapure

cafe bar P.M.9/Mapure

レポート
2006.02.03

新「裏渋」エリアの確立となるか?
バー+古着屋の個性派ショップが神泉駅前に登場

60〜70年代のアメリカをイメージした
P.M.9店内。壁には夫人によるペイン
ティングが施されている。
隣のスペースはアムステルダム風の内装で
統一。ウッディな家具と暗めの照明が
サイケデリックな雰囲気。
Mapureでは破格の値段でレディース古着
を販売。国内ブランドの古着に加え、靴や
バッグ、アクセサリーも充実。
以前は住宅だった物件を大胆に改造。
左がP.M.9、右の赤いドアがMapureの
入口になっている。
渋谷から井の頭線でひとつめ、「神泉」駅そばの雑居ビルに、古着店「used clothing shop Mapure(マピュア)」とバー「cafe bar P.M.9(ピーエムナイン)」がある。ふたつの店はワンフロアに同居するかたちで、05年6月22日、同時にオープンした。

「お金、お金!じゃない、のんびりした人間らしい生活がしたかったんです。気の合う仲間が集まる場所を作りたいと思って…」と話すのは同店のオーナーBOSSさん(40)。BOSSさんは20代からミュージシャンとして活動する傍ら、音楽プロダクションを経営。しかし、好きな音楽をビジネスと割り切って商業的に考えなければならない状況に辟易し、04年に会社を解散。会社経営と並行してバーを経営していた経験を生かし、夫人(29)とともに新しく店をオープンするに至ったというわけだ。

出店場所は20年以上住んでいる神泉を選択。「お店が忙しくなるのは本末転倒。マイペースに営業したい」(BOSSさん)という思いから、あえて通りに面していない奥まった場所を選び、やや入りづらい店構えにしたのだそうだ。長い間廃墟だった物件で痛みが激しかったが、オーナーと夫人2人で改装。4部屋の壁をぶち抜くことで、約16坪の広いスペースを確保した。

バーは赤を基調に、前の会社で使っていた会議用テーブルやソファーを配置。自作のペイントやパーテーションがあったりと、手作り感溢れるアットホームな内装になっている。バーは2部屋に分かれており、奥はアムステルダムのコーヒーショップをイメージした内装、手前は60〜70年代のアメリカンな内装で統一。料金はドリンクがすべて500円、キャッシュオン式でノーチャージだ。

古着部門「マピュア」は、アパレルの販売をしていた夫人が担当。「若い女性達が好きそうなアイテムを安く提供したい」というコンセプトのもと、アクセサリーなどの小物は100円〜、ジーンズやトップスも500円〜と安い値段で販売している。なんと一般的な買取・委託店の半分以下の値段というから驚きだ。品揃えは国内ブランドの古着が中心で、バッグや靴、マフラーなどの小物も充実。友人や知り合いのスタイリストから持ち込まれた古着からセレクトし買い取っているのだそうだ。全体の1割程度新品も扱っている。

2店は同時にオープンする形態で営業しており、開店・閉店時間や定休日は決まっていない。ターゲットは10代後半〜20代の男女。カップルで来店して、女性が古着屋を見ている間に男性はバーで一杯飲んで待つ、というのが理想だという。現在の客層は、オーナーの知り合いや人づてに聞いて訪れる人が多く、モデルやカメラマンなどの業界人が中心。また、近所に住む4〜50代の男女や小学生が来店することもあるそうだ。

「とにかくお客さんを干渉しないのがモットー。飲みながら音楽を聴いたり、話をしたり、移動して洋服を見たり、自由に楽しんでほしいですね。神泉は、渋谷の中心から近いのに、中間にある円山町のラブホテル街やクラブで分断されてしまっているんです。その壁を乗り越え、若者にも神泉を認知してもらって、店も人も増えていけばいいですね。原宿の裏に『裏原』があったように、神泉が『裏渋』になればと思います」(BOSSさん)。

道玄坂上〜円山町〜神泉駅前周辺は、01年以降、中規模の事業所用ビルや集合住宅が相次いで登場。周辺に勤務する人をターゲットにした飲食店が続々とオープンした。これまでオフィス街とラブホテル街が混在するエリアというイメージが多かったこのエリアだが、05年後半ごろから、山手通りと文化村通りを結ぶ栄通りにアパレルのショップや女性専用の天然温泉スパ「shiespa(シエスパ)」がオープン。また円山町のランブリングストリートにも飲食店とシネマコンプレックスが入った「Q-AX(キューアックス)など、在住・在勤者以外の人をターゲットにした施設が登場するなど、急速に改変が進んでいる。今後、渋谷の中心からの人の流れがどう変わるか、このエリアの動きに注目したい。

ちなみに同店は現在HPの開設も計画中で、古着のネット販売も始める予定だとか。また、売り上げ次第では海のそばにもう1店舗出してみたい、とサーフィン好きのオーナーならではの野望もあるようだ。

[取材・文/重保咲+『WEBアクロス』編集室]

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