ソルレヴァンテ

ソルレヴァンテ

レポート
2006.05.17
フード|FOOD

和菓子の「たねや」の新規事業、
本格イタリア菓子と料理の専門店が青山に登場

円形の大型のショーケースには所狭しと
イタリア菓子が並ぶ
70円から用意されるミニョン(小さな生菓
子)は、小さくても丁寧な細工が施された
ものばかり
バールはウッディで重厚な雰囲気。近隣で
働く大人の男性が息抜きに来店することも
多いそう
レストランは奥の仕切りにより空間を分ける
ことができる。写真は仕切りを閉めた状態
自慢のモンテビアンコはモンブランの原型と
もいえるお菓子。栗のそのままの甘みと渋み
が活かされた自然な味わい
形もパッケージもサラミに似せて作った
「サラメ・ディ・チョコラート」。
日本ではなかなかお目にかかれない一品だ
05年11月21日、表参道、紀伊国屋跡地の裏手に本格イタリア菓子・料理の店「ソルレヴァンテ」がオープンした。運営元は、デパートを中心に全国展開する和菓子の老舗「たねや」グループ(滋賀県)。最近では同社の洋菓子部門であるバームクーヘン専門店「クラブハリエ」がネット通販でも予約待ちが続くほどの人気で、マスコミに度々登場するなど話題になっている。

メインは日本ではまだ馴染みの少ないイタリア菓子。見た目がシンプルで、素材の味を活かした素朴な味わいが特徴のイタリア菓子は、実はフランス菓子のルーツともいえるのだそうだ。

「イタリア菓子の代表的なものとしては、以前日本でもブームになったティラミスがありますが、日本で一般化しているのはフランス風にアレンジされたもの。本当のティラミスは淹れたてのエスプレッソの香りと共に食べるものなんですよ」と教えてくれたのは同店取締役シェフ藤田統三さん。

入り口のテラス席を抜けて店内に入るとバール(カウンター)併設のパスティッチェリーア(お菓子屋)、さらに通路を奥に進むと隠れ家のように広がる48席のリストランテという構成だ。イタリア菓子がメインだけあり、生菓子が約30種、焼き菓子やチョコレート、タルト類を合わせると70〜80種と種類の豊富さが特徴である。また、日本にも本場のバール文化を伝えたいという藤田さんの強いこだわりから、バリスタが淹れる本格的なエスプレッソをイタリアとほぼ同価格の150円(=約1ユーロ)で提供している。

藤田さんは地元大阪の製菓学校を卒業後、菓子職人への道を歩んでいたが、突如イタリア料理に目覚め数々の店や本場イタリアでの修行を積んできた。最終的に出店を任された大阪のイタリアンレストランを、半年で情報誌『HanakoWEST』誌上の年間レストラン・ランキングでグランプリを受賞するまでにした実力派である。

一方、「ソルレヴァンテ」代表取締役の山本隆夫さんは、たねやグループCEO山本徳次さんの次男として運営に関わり、バームクーヘンの実演販売という発案で「クラブハリエ」人気に火を付けた仕掛け人。隆夫さんの新たな挑戦としてスタートした「ソルレヴァンテ」は、たねやグループ滋賀県外初となる路面店での立ち上げとなった。

今回2人がタッグを組むきっかけは、隆夫さんが藤田さんの店を気に入り度々来店していたこと。次のステップとして東京出店という野望を持っていた両氏の思いが丁度よいタイミングで重なり、今回の出店に至ったのだという。

イタリア料理で最も重要だという食材は、滋賀県の(株)たねやの自家農場で生産する近江野菜や、近江牛などを使用している。近江は京野菜の生産地として有名であるということからも、その味はお墨付きだ。パスタはもちろん自家製の手打ち麺を使用。

「本格的なレストランを併設していても、メインはあくまでイタリア菓子。レストランへの入り口をあえて細い通路にすることで、しっかりスペースを分けました。他店と決定的に違うのは、レストランでありながら食後にしっかりとしたデザートとコーヒーが楽しめることでしょうね。東京、特に青山に出店して感じたのは、価格が高くても安心して食べられるものには対価を惜しまない風潮があること。当店でも4,000円台のランチコースを用意するなどして、客単価をあげていく予定です」(藤田さん)。

今後はイタリア菓子の販売を軌道に乗せ、単体での百貨店出店を目指す。

「ソルレヴァンテ」とはイタリア語で「東方の太陽」と言う意味。日本で多くの人に本当のイタリア菓子を楽しんでもらいたい、ゆくゆくは世界に進出したい、と藤田シェフの思いは熱い。

スイーツ人気はデパ地下ブームに始まり、現在はネット上でのお取り寄せスイーツも大人気。1年以上(!)予約待ちが続く店もあるというから驚く。しかし、“パティシエ(仏語で菓子職人)”という表現が一般化したように、スイーツ人気の中心はフランス菓子だ。
一方、馴染みが薄いイタリア菓子だが、ティラミスの他、パンナコッタやビスコッティ、パネトーネ、モンテビアンコ(モンブラン)もイタリア菓子だったりと、実は案外見たり食べたりしたことがあるもの。同店のような話題性のある専門店の出現により、“イタリア菓子”という新しいカテゴリーのスイーツ=ドルチェが注目される日もそう遠くないのではないだろうか。


[取材・文/苫米地香織+『WEBアクロス』編集室]

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