RED dot ORIGINAL

RED dot ORIGINAL

レポート
2007.01.12

食のインキュベーションスペースが
裏原宿にオープン

店内は和風のインテリアで統一。
木を基調に格子や御簾などを多用し
落ち着いた雰囲気。
出店第1号は大阪のたこ焼き専門店「匠屋」。
7種の隠しだしを練り込んだ生地が特徴。
3月からは、甘味処が出店する予定。
本わらび餅など、老舗料亭で修行を積んだ
職人が手がける和のスウィーツが楽しめる。
ユナイテッドアローズ原宿本店のほど近く、キラー通り沿いに、06年12月1日、レンタルスペース「RED dot ORIGINAL」がオープンした。

同店は、飲食店専用のレンタルスペースで、敷金礼金なしで複数のテナントに貸し出すというもの。保証金や敷金礼金、内装費用といった開業にともなう出店者側の金銭的な負担を軽減し、さらに1つの店舗を複数のテナントでシェアすることで家賃負担を抑えられるという仕組みである。出店者はまず期間限定で借り、裏原宿で営業していけるかテストマーケティング的に試すことができるというわけだ。

企画を行うのは「URAHARA.ORG(ウラハラオーアールジー)」。これは、02年に地元有志が設立した団体で、裏原宿のオフィシャルサイト「URAHARA.ORG」を運営をはじめ、裏原宿エリアの約700店を網羅したショップマップ「URAHARA DEEP MAP」を作成、配布するなど、裏原宿の活性化と治安維持を目的とした活動を行っている。今回の出店は、代表の高橋嘉一さん(39)の企画によるものだ。

「ここ数年、裏原宿では大手の出店ばかりが目立ち、若い人達による個人出店が減っています。90年代の裏原ブームに代表されるように、もともと裏原宿は若い世代が新しい動きを起こしてきた歴史のある街です。このままでは裏原宿らしさが薄れ、街のオリジナリティがなくなってしまうという危機感を感じていました」(高橋さん)。

高橋さんによると、裏原宿への個人による出店が減っている理由は、不動産相場の上昇が大きな原因だという。海外の高級ブランドの相次ぐ進出と、表参道ヒルズなど大手企業の介入、さらに不動産投資信託の資金流入によってここ数年で表参道周辺の地価が高騰。まるでバブルのような状況が続いており、その影響が裏原宿エリアにも波及しているのだという。

「裏原宿エリアでも貸し店舗の賃料が上がっているため、個人、とくに若手にとっては出店のハードルが高くなっているのが現状です。そのリスクを軽減し、チャンスを作る手助けをしたいと思い、レンタルスペースを企画しました」(高橋さん)。

白を基調とした店内は約10坪。格子や御簾などを多用した純和風の雰囲気だ。1号店は、東大阪市のたこ焼き専門店「匠屋」。生地に7種の隠しだしを使ったこだわりのたこ焼きである。メニューは「特製ソース」「特製しょう油」(6個入 530円、8個入 650円)を中心に、たこ焼きをえびせんべいではさんだ「たこせん」(350円)や「柚子はちみつ」「梅はちみつ」(350円)など。東京では馴染みが薄い珍しいメニューを展開している。

さらに07年3月には、京都の老舗料亭で修行を積んだ和菓子職人が手がける甘味処が出店し、店舗をシェアする。本わらび餅や特製かき氷や和さんぼんのアイスクリームなど正統派の甘味と和洋折衷のスイーツを中心にしたメニュー構成で、夜はバー営業も行う予定だ。

コンセプトは「地元住民や原宿で働く人を、本格派の和でもてなす憩いの場」。年齢や性別、地域住民か在勤者かに関わらず幅広い層を集客するため、今後も一貫して和の飲食店のみを出店していくという。というのも同店は、若手を育成・支援するインキュベーションスペースであると同時に、地域のコミニティを再生するスペースとしての機能も目指しているのである。

「最近は自治会など地域のコミニティが希薄になり、さらに地方や海外からの来街者が増えて観光地化が進んでいるため、治安面での不安も大きくなっています。同店のメインターゲットは、地域住民と周辺の会社に勤務する人たち。裏原エリアの住居は約1万世帯、会社は約2,000社といわれていますが、この場所を通して地域住民と在勤者が交流し、コミュニティが形成されれば、地域の活性化や治安維持に繋がると思うんです」(高橋さん)。

客層は、土日には来街客がメイン。一方、平日の昼は周辺に勤務する20代のショップスタッフや美容師、夕方には老人や子ども連れなど、地域住民が来店するケースが多い。夜になると仕事帰りの人がメインで、40代以上の大人の男性も多いそうだ。

「周辺は飲食店も増えて、07年頃から徐々に地価も落ち着いてくると思うので、それに先駆けて若い職人達が出店できるような環境を整えていきたいですね。表参道〜裏原宿よりさらに奥の“奥原宿”まで導線を作ることで、新しいお客さんが流れてくれればいいですね」(高橋さん)。

キラー通りと千駄ヶ谷を結ぶ神宮前2丁目周辺には、05年あたりからショップが急増。自然派の韓国料理レストラン「コリアンオーガニックnabi」(05年6月オープン)や、建築とファッションの専門書店「J Style Book」(06年3月オープン)、また音楽プロデューサーの小林武史氏がプロデュースするカフェ「kurkku」(06年4月オープン)やシドニースタイルのレストランバー「yao」(06年5月オープン)など個性的なショップが相次いで出店している。なかにはフランス料理店「ル・ゴロワ」(06年9月)のように、表参道などから移転してくるケースも少なくない。さらに07年2月には、千駄ヶ谷と隣接した神宮前2丁目の信号近くに22階建てのタワーマンション「ジェントルエア神宮前」が竣工予定で、近隣住民をターゲットにした店のさらなる増加も予想される。表参道や外苑前、裏原宿と隣接しながらも異なるテイストの「奥原宿エリア」は、今後さらなる発展が予想される。

ちなみに、店名の「RED dot」とは「日の丸」の意味。裏原から世界へ日本人こだわりの文化を広めたいという思いから名付けたのだそうだ。

[取材・文/伊藤洋志(フリーライター)+『WEBアクロス』編集室]

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